桜花
桜花シリーズ
全体の開発背景
1. 橘花からの技術継承
橘花の試験で得られた知見を基に、速度性能の限界に挑む桜花シリーズ
が1944年にスタート。超音速飛行を視野に入れた先進的な設計が採用さ
れました。
2. ロケットエンジンの採用と課題
音速突破を目指してロケットエンジンを導入。英国の技術支援を受けた
ものの、初期の開発では燃料爆発事故が相次ぎ、多くの試行錯誤が行わ
れました。
3. 母機「連山」の活用
離陸時の燃料消費を抑えるため、試製連山を改造して桜花シリーズの母
機として使用。連山からの空中投下方式が桜花の実験運用を支えまし
た。桜花53型以外はこの方式を採用。
*1
桜花シリーズの詳細
1. 桜花11型 (ロケット高速度実験機) *2
• 目的: 音速突破を達成するための高速度実験機として設計。
• 開発と試験: 初期の試験では尾部の熱損傷や振動が課題となるも、耐熱
材の改良と設計変更により安定性が向上。
• 成果: 1947年、黒江泰彦の操縦により、マッハ1.02を達成し、音速突
破を世界で初めて実現した機体のひとつとなりました。
• 性能諸元:
• 全長: 9.4m
• 全幅: 8.2m
• エンジン: T-1 ロケットエンジン(推力22kN)
• 最大速度: 1,240km/h(マッハ1.02)
• 航続時間: 約5分
2. 桜花22型 (後退翼実験機) *3
• 目的: 高速飛行時の安定性向上を目指し、後退翼を採用。 1951年初⾶⾏
• 成果: 後退翼の空力特性が確認され、超音速機の設計基盤を提供。
• 性能諸元:
• 全長: 10.5m
• 全幅: 9.2m(後退翼)
• エンジン: ネ25改(推力8.1kN)
• 最大速度: 1,150km/h
3. 桜花32型 (超音速実験機)*4
• 目的: マッハ1.5の超音速飛行を実現。デルタ翼設計を採用。 1952年初⾶⾏
• 成果: デルタ翼による安定性と超音速時の摩擦熱対策を確立。
• 性能諸元:
• 全長: 11.8m
• 全幅: 6.5m(デルタ翼)
• エンジン: ネ30ターボジェットエンジン(推力10.5kN)
• 最大速度: 1,850km/h(マッハ1.5)
4. 桜花43型 (無尾翼実験機)*5
• 目的: 無尾翼設計による空力効率向上の研究。 1948年初⾶⾏
• 成果: 自動制御技術を導入し、無尾翼設計の安定性を実証。
• 性能諸元:
• 全長: 9.5m
• 全幅: 8.0m
• エンジン: ネ25改(推力8.5kN)
• 最大速度: 1,300km/h
5. 桜花53型 (可変翼実験機) *6
• 目的: 可変翼による低速域と高速域の性能両立を実現。 1952年初⾶⾏
• 成果: 翼の可変機構が安定して作動し、マルチロール性能が評価され
た。
• 性能諸元:
• 全長: 12.0m
• 全幅: 7.0m~12.0m(可変翼)
• エンジン: ネ35ターボジェットエンジン(推力11.0kN)
• 最大速度: 1,600km/h
6. 桜花64型 (無人ラムジェット実験機)*7
• 目的: ラムジェット推進と無人制御技術の実証。
• 成果: 無人飛行と高速度巡航のデータ収集に成功。
• 性能諸元:
• 全長: 7.5m
• 全幅: 6.0m
• エンジン: ラムジェット(推力12.0kN)
• 最大速度: 2,200km/h(マッハ2.0)
桜花シリーズの意義
1. 音速突破の歴史的意義
桜花11型が音速突破を達成したことで、日本の航空技術が世界に認めら
れました。
2. 国際的な技術競争
同時期にアメリカやドイツも音速突破を目指しており、日本がこの競争
に加わることで国際的な影響力を拡大しました。
3. 試行錯誤の成果
試験機ごとの課題を克服するプロセスが、技術力向上の基盤となりまし
た。
*1:史実のXプレーンシリーズのオマージュ。XプレーンはB29から発進していました。
*2:ベルX-1のオマージュ
*3:ベルX-2スターバスターのオマージュ
*4:ダグラスX-3スティレットのオマージュ
*5:ノースロップX-4バンタムのオマージュ
*6:ベルX-5のオマージュ
*7:ロッキードX-7フライングストーブパイプのオマージュ