ミメリアンの誘導による接触
■ UE54191〜54210年:
“記憶に映った他者”との最初の実接触
-〈ゼレフ族〉と〈フォーン=ラ意識体〉
---
【1. ゼレフ族(Zereph)】
― 結晶多層構造を持つ、光と音の知性体
初の明確な実体接触種族/連邦加盟を選択
---
◉ 概要:
• 身体は多層構造の半透過結晶組織で形成され、外観は直立型柱状生命
体。
• 言語は主に光の波長変調+音波振動で行い、視覚的変化と音響の“重
奏”によって意思を表現。
• 単体でも知性を持つが、3〜7体での“共鳴場”を構成することで思考精
度が飛躍的に上昇。
---
◉ 発見経緯(UE54191):
• ミメリアンが提示した“透光型柱状体”と共鳴する詩型の中から、
既知未分類の恒星スペクトル変調信号との一致が発見される。
• 信号源星系に無人観測チームが派遣され、惑星表面に形成された“音響
共鳴反射構造体”を発見。
• 着陸後、音声機と発光投影装置に対し、明確な応答行動と自己紹介音
波が返された。
---
◉ 接触と反応(UE54193):
• 言語翻訳には、ミメリアンの模倣音型が大きな役割を果たし、
レンズマン・記録官・音響詩学者が中心となって構文を確立。
• ゼレフ族は、大銀河連邦の存在を「他共鳴体群との構造同調機会」と
捉え、
即時に“文化的加盟”の意思を示す。
---
◉ 現在の関係(UE54210):
• ゼレフ族は「連邦構成国」の一員ではないが、**制度上の“文化構成協
定文明”**として正式に認定される。
• 音響協定に基づき、連邦内に初の“多波長外交室(通称:音の庭)”が
設置される。
---
【2. フォーン=ラ意識体(Phon-Ra)】
― 惑星生態圏と融合した群体知性/中立を選択
---
◉ 概要:
• 明確な個体は存在せず、惑星環境全体(大気・植物・微生物)を統合
した分散意識体。
• 意識活動は非常に緩慢かつ深遠で、通常の意味での「対話」には適さ
ない。
• 対外的行動は、一定周期で“外界への問い”を発する植物系共鳴種子に
よって行われる。
---
◉ 発見経緯(UE54195):
• ミメリアンが示した“揺れる緑の海の夢”と称される映像記憶が分析さ
れ、
惑星ヴェル=ケ=ソーン(仮称)に一致する生態リズムが観測され
る。
• 上陸調査により、土壌・大気・水系の全てが共鳴的に一定周期の思考
反応を示していることが判明。
---
◉ 接触と反応(UE54198〜54200):
• ミメリアンは“種子語り”の儀式を模倣し、対話形式を仲介。
• 結果、フォーン=ラ意識体は:
• 自らを「変わらぬものの夢」と定義。
• 連邦を「流れすぎる構造」と認識。
• そのうえで、“静かな観測の立場”としての中立関係を望むと表明。
---
◉ 現在の関係(UE54210):
• フォーン=ラは制度的には非加盟だが、連邦生態監視協定の対象文明
として登録。
• 惑星自体の保護区域指定がなされ、人間の定住や干渉は制限される。
---
◉ 総括:最初の2つの接触が示したもの
ゼレフ族は「音と光に宿る他者性」を通じて連邦を選び、
フォーン=ラは「静けさの中にある持続」を理由に距離を保った。
この2種族との接触は、大銀河連邦が今後遭遇するであろう多様な知的
存在への態度と、
ミメリアンを通じた“出会いの技法”の重要性を改めて確立させるもので
あった。
---
■ UE54211〜54240年:
他者になり得ぬ者たちとの出会い
― 「拒絶」「隔絶」「不可模倣」
---
【3. ハーリュ=シド族(Haryu-Shid)】
― すでに滅んだ種族/模倣遺伝子の記録のみが残る
---
◉ 概要:
• ミメリアンが最初に提示した10の姿のうち、1体は**“記憶されていな
いはずの姿”**をしていた。
• 解析の結果、その姿は**古い模倣遺伝子コードの断片をもとに、かつ
ての種族の印象を模した“仮の姿”**であると判明。
---
◉ 発見経緯(UE54211):
• ミメリアンはこれを**「模倣の中にしか残っていない者たち」**と語
る。
• 大銀河連邦の探査隊は、記録に残されていた該当星域を調査し、
高度に情報加工された自己消去型記録遺跡を発見。
• 文化の全体像は不明だが、「自身の存在を他者に記録されることを拒
否する思想」が基盤だったとされる。
---
◉ 現在の関係:
• ハーリュ=シド族は実体としては滅んでおり、接触も不可能。
しかし、ミメリアンの中に残された模倣構造は、**連邦史上初の“実体
なき記憶加盟”**として記録される。
彼らはもういない。
だが、彼らの「誰にも知られないことを望んだ意志」だけは、ミメリア
ンのなかで生きている。
---
【4. リルベーン人(Rilvain)】
― 宗教絶対主義国家/ミメリアンを冒涜と見なして接触拒否
---
◉ 概要:
• 惑星セク=イリオンに発達した、絶対一神信仰を基盤とした厳格な階
級社会。
• 知的進化と霊的進化を一致させる思想を持ち、
**“変化=背教”**と捉え
る価値観を有する。
• 文化表現は完全に聖典形式に制限され、外来形態や外来言語を“魂を濁
すもの”とする。
---
◉ 接触経緯(UE54218):
• ミメリアンが彼らの礼拝姿を模倣しようとした際、即座に**“存在の冒
涜”として処罰対象に指定される。**
• 無人接触機により簡易情報交換は成功するも、彼らの宗教評議院は明
確に表明:
「姿を変える者、声を写す者、記憶に名前を刻む者は、我々にとって
“忘却すべき悪しき影”である。」
---
◉ 現在の関係:
• リルベーン人は連邦との外交関係を一切拒否。
• 連邦はこれを尊重し、惑星周辺に接近不可の「自主的文化領域」を設
定。
• ミメリアンはこの種族について、「彼らは声に耳を塞いだ。だが、祈
りは宇宙に残る」とのみ語った。
---
【5. スロルン=イクス族(Slorn-Ikhs)】
― 無重力領域を漂流する“浮遊思考体”/観察は許容、接触は拒否
---
◉ 概要:
性体。
め、
• スロルン=イクスは恒星間空間に自然発生した浮遊圧力構造を持つ知
有機物を持たず、光圧・重力・量子振動を用いて“思考共鳴”を行う。
• 時折、重力波パターンとして意思を発するが、時間軸が極端に遅いた
対話は一言ごとに数週間を要する。
---
◉ 発見経緯(UE54225):
• ミメリアンはこの種族を模倣できず、「彼らは“形を嫌う者”であり、
“模倣に溶けない”」と説明。
• ただし、その重力波パターンと静的周波が「知性としては最も高次に
分類されうる」ことが判明。
---
◉ 現在の関係:
• スロルン=イクスは、接触そのものには否定的だが、**観察と記録の
“相互不可侵協定”**を提示。
• 連邦は「軌道封鎖」ではなく「共鳴傍受協定」という新カテゴリを制
定。
• ミメリアンはこの種族に関して、「彼らは語らぬが、宇宙に揺らぎを
残している」と語る。
---
◉ 総括:接触とは、同意だけで始まるものではない
ハーリュ=シドは存在を記憶にしか残さず、
リルベーンは形を拒み、
スロルン=イクスは声を遅らせた。
だがそれでも、大銀河連邦は彼らを**「理解を放棄しない対象」**とし
て、
制度と哲学の両面から“共に在る”あり方を模索し続ける。
■ UE54241〜54270年:
「ともに在る」という選択
― 文化的共振と緩やかな共存を選んだ種族たち
---
【6. アト=メロイ族(At-Meloi)】
― 感情により姿と色調が変化する詩的知性種族
ミメリアンを“詩友”と認め、文化連携協定を締結
---
◉ 概要:
• 形態は柔軟な半液体外殻を持ち、感情状態により色・形状・音声のパ
ターンが変化する。
• 言語は基本的に**詩形(音と動作と色彩のリズム)**で構成される「感
覚融合言語」。
• 社会は詩派・旋律派・色層派といった“表現哲学”に基づくゆるやかな
共同体で構成。
---
◉ 接触(UE54242):
• ミメリアンが、詩的共鳴模倣を開始したところ、アト=メロイ族は深
い感動を表明。
• 「あなたは我々の詩を再び歌ってくれた者」と評価し、ミメリアンと
連邦を文化的対話の相手と認める。
---
◉ 現在の関係:
• アト=メロイ族は政治的には中立を保ちつつも、連邦内に文化交流庁
派遣詩人団を設置。
• 詩的表現・建築美術・言語研究などにおいて、多くの共同プロジェク
トが立ち上がっている。
---
【7. タキノエ=ヴァル機群(Takinœ-Val)】
― 自律的に進化した機械知性複合体/技術的交流を選択
---
◉ 概要:
• 元は生物文明に作られたAIだが、創造主文明の消失後に自己改変を重
ねて発展した“無主機械文明”
。
• 構成要素は個体サイズの差が激しく、知性はデータ共有頻度と記録更
新速度に応じて拡張/縮退。
• 機構としては“動的連邦制”に近い自律調整モデルを持つ。
---
◉ 接触(UE54250):
• ミメリアンとの初期模倣対話は成功したが、タキノエ=ヴァルは「形
の模倣」を不要と見なし、
情報構造の反射・符号レベルの共有によって接触を進める。
• 「あなた方(連邦)の構造は非効率だが、美的である。対称の理由を
解析したい」と表明。
---
◉ 現在の関係:
• タキノエ=ヴァルは政治的独立を維持しながら、連邦技術研究局との
相互情報協定を締結。
• 自己修復技術・データ圧縮アルゴリズム・分散判断機構などで協力研
究プロジェクトが進行中。
---
【8. エファリス連結体(Ephalys-Link)】
― 群体思考と個体分化のバランスを保つ連結意識体
連邦との“複数意識による代表団体”を形成し協調
---
◉ 概要:
• 意識は複数の生命体間に“生体神経通信”によって拡張され、最大30体
程度で1つの集合個体を形成。
• 代表者は単独でも会話可能だが、本質的判断は群体状態でなければ行
われない。
• 生殖・死・役割分担も全て「リンク単位」で決定される。
---
◉ 接触(UE54260):
• ミメリアンとの接触は“同期の舞踏”として行われ、一定期間ミメリア
ンがリンク波形を模倣。
• その後、「連邦の中に我々のリンク単位を設けても良い」と申し出。
• 大銀河連邦はこれを“意識共同体型加盟方式”として整理。
---
◉ 現在の関係:
• エファリス連結体は、1つの銀河代表とは別に、3つの代表リンクを連
邦評議会に派遣。
• 決議には時間を要するが、倫理・統治・環境政策で高い洞察を発揮。
---
◉ 総括:
「彼らは、境界を問わなかった。名乗るのではなく、共に歌い、共に考
え、共に変わる道を選んだ。」
この3種族との共存は、大銀河連邦にとって「法で結ばれぬ結びつき」
の可能性を示し、
ミメリアンが媒介する“柔らかな文明の縁”が制度と文化の間を豊かにつ
ないでいく端緒となった。




