戦争中国家への接触
■ UE53634年:
レンズマンによる初接触と、キッテナン/チャグマ両文明
の応答
【背景】
前年度末、ユリアン星系(後にユリアン宙域と呼ばれる)において、
大銀河連邦の偵察艇「コハル7号」の存在が両当事者に発見され、
それが「第三勢力の介入」と誤認されたことにより、戦線が一時的に緊
張。
連邦側では、「完全に立ち去ること」が外交的にも倫理的にも不可能と
判断され、
レンズマン評議会は臨時接触調査団を結成し、派遣を決定。
派遣チーム構成:
主任レンズマン:ミンヤ・セラ=オガサ(文化言語特化型、対接触心理
に精通)
外交顧問:イリ・サフレク(辺境経験豊富な交渉戦略家)
技術解析士:ロゼ・ハーン=デル(通信波解析および情報倫理専攻)
観察官:クラヴ・ティホン(制度安全保障委員会直属、記録任務)
→ 通称「セラ・チーム」
【UE53634年 2月】
◇ 初の通信試行 ― キッテナン(ユリアンA)側
キッテナン側は、すでに“謎の存在”の正体に強い関心を持ち、
数度にわたって「意味のない」通信を送っていた(連邦側から見れば
信号雑音レベル)。
レンズマンチームはそれを解析し、星間共通論理構文の断片に類似する
体系を発見。
翻訳構文を最小限に絞り、「非敵対・調査目的・和解意思」を示す構文
を送信。
→ 3日後、キッテナン側から返信が届く。そこには、こうあった:
「貴殿らが誰であれ、我々は汝らを敵と見なしていない。
だが、我々の対話を聞いていたという事実は…避けがたい問いを生
む。」
【UE53634年 3月】
◇ 接触拒否と接近監視 ― チャグマ(ユリアンB)側
チャグマ帝国は、キッテナン側との通信を横から傍受していたとされ、
レンズマン側の動向に深い警戒を抱く。
「Aが彼らと接触したなら、それ自体が我々に対する外交破棄である」
との声明を発表。
だが、チャグマはレンズマンチームの接近そのものを撃退することな
く、宙域外縁に警戒艦を配備して監視を続ける。
→ チャグマ側でも「これが真に“新たな宇宙秩序”を体現する存在である
ならば、力ではなく言葉で試すべきだ」という穏健派が生まれつつあ
る。
【UE53634年 5月】
◇ 初会談(遠隔対話形式)成立 ― キッテナン側との正式
交渉開始
ミンヤ・セラ=オガサは、キッテナン評議会の情報理事アルシェ・ノル
=トゥと記録公開型の第一通信対話を実施。
内容:
連邦は敵でも味方でもない。戦争への介入意思は持たない。
ただし、「存在を知ってしまった以上、無関心ではいられない」という
立場。
キッテナン文明における戦争の背景・倫理観・外交努力について聴取。
→ ノル=トゥの応答は理性的で、**「汝らの制度は、我々より遥かに長
い時間の上に築かれているように見える」**と述べ
、今後の対話継続を
了承。
【文明の反応】
文明|状況|応答
キッテナン(A)|理性重視・科学志向|接触を冷静に分析、対話に前
向き
チャグマ(B)|権威主義的・文化主導|接触を外交的挑発と見なしつ
つも、行動は抑制的に
この時点の評価
レンズマンたちは、「戦争を止めさせる」のではなく、
“制度文明としての接触の形”を残すことが目的であると明言。
キッテナンとの対話路は開かれ、チャグマにも対話の余地が生まれつつ
あった。
大銀河連邦は、ここで初めて**「介入なき関与」**という倫理的アプ
ローチを制度として実践することとなる。




