自由圏制度
UE52980年:自由圏制度の正式定義と制度化
アノレクト文明崩壊の省察と、自由の再定義をめぐる長年の議論の末、
大銀河連邦は議会および文化倫理審議庁を通じて、以下のような自由圏
の制度化を可決・布告する。
「自由圏とは、辺境総督府の制度設計と倫理観測の下、
制度参加を強制されない形で開拓・統治の自由が保障される銀河群また
は星間社会圏を指す。
これは制度的秩序と個人・集団の自律性の調和を目指す文明的構造であ
り、
エリダヌスの崩壊を再び繰り返さぬための秩序と自由の“中庸”の試みで
ある。」
• 同布告において、「辺境総督府」は従来の総督府とは異なり、極小規
模かつ調整的な行政機構とされることが明示される。
• レンズマン派遣制度、開拓支援インフラ、緊急調停制度などが最低限
導入され、制度参加・制度外の両方を選べる構造が制度化された。
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UE53010年:銀河群調査結果と自由圏適用候補の決定
連邦調査院および探査大学連携機関による銀河群調査の結果、以下の二
銀河群が自由圏制度のモデルケースに最適と認定される:
1. NGC5084銀河群(後の“ガスカヌーン銀河群”)
• 中程度の構造密度を持つが、構成銀河のほとんどが中小サイズ
• 居住可能星域は点在しており、中央集権的制度化には非効率
• 周囲に銀河連邦規模の文化集積は確認されず、空白地帯に近い
• 星間資源の局在性と個別開発適性が高く、自由圏に最適
2. NGC672/784銀河群(後の“トリアングル=メナー銀河群”)
• 銀河数が少なく、星系間距離も比較的短いため、都市国家的ネット
ワーク構築が可能
• 歴史的文明の痕跡はなく、知的生命痕跡も未確認
• 教育・文化的モデル都市の設置に適した条件が揃っている
• 民間主導での自治的共同体形成を志向する新興集団から支持が強い
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UE53020年:両銀河群に辺境総督府設置を決定
• 大銀河連邦議会、行政連絡庁、文化倫理審議庁の合議により、
両銀河群に辺境総督府の設置が可決される。
• 総督府は常設ではなく、移動型運営拠点+現地自治体連絡網+レンズ
マン常駐団による“分散型”とされた。
• それぞれの銀河群に対し、以下の理念が共有される:
銀河群 自由圏理念(要約)
ガスカヌーン 技術と交易を基盤とした分散的星間都市連携圏
トリアングル=メナー 哲学的自治都市群による文化的共存と緩やかな政
治合意の実験場
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UE53030年:自由圏開発開始
• 各銀河群に初期開拓船団と民間先遣団が到着。
• 初期住民は以下のような構成:
• 移住型開拓者
• 脱制度志向者
• 実験的社会制度を試したい理念集団
• 民間企業の先発調査員と商人
• 星間信仰団体や教育派遣団など
• 同年、最初の都市憲章がトリアングル=メナー銀河群のエン=サ
ファール星系にて制定され、
“連邦制度外における星系自治の倫理文書第一号”として記録庁に登録さ
れる。
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文明史的意義
• 自由圏制度は、制度の限界と自由の危うさを乗り越えた“第三の道”と
して制度史に刻まれる。
• 初期自由圏は、未来の制度構築・文化接触・倫理実験における観測と
教訓の源泉として、
連邦大学・制度研究庁などで常時記録・観察されることとなった。




