大銀河連邦憲章
大銀河連邦憲章・第八版(アノレクト後時代基本法)
Universal Galactic Concord, 8th Edition
UE51138年 銀河暦制定
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【前文】
われらは特別ではない。
記録を携え、秩序を重んじ、沈黙に学び、制度と共に呼吸する者であ
る。
崩壊の記録を読んだ。
アノレクトの静寂は、われらの未来にもなり得た。
だが、われらは今なおここに在る。
制度は絶対ではないが、制度を捨てずに進む道もまた存在する。
われらはその道を選び続けた。そして今、再びそれを選び直す。
よってここに、銀河の民が共に編む秩序の原理を定め、
大銀河連邦の理念を、制度として言葉に記す。
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【第一章:制度の倫理的限界と人間性の優先】
第一条:AI依存の禁止
大銀河連邦は完全自律型AIへの依存を禁じ、意思決定の最終権限を有機
知性体に属するものとする 。
第二条:過度の自動化・無人化の禁止
社会の自己崩壊を避けるため、必要以上の無人化・自動化を制限する。
第三条:遺伝子改変の倫理規制
有機生命体の設計を治療目的に限定し、戦闘強化・優性化を禁じる。
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【第二章:制度と秩序の構造的柔軟性】
第四条:制度循環原則
すべての制度は寿命・休止・更新・譲位の対象となり、変わることを前
提に設計される。
制度は守るべき対象ではなく、共に問い直す対象である。
第五条:制度外秩序の尊重
文化・詩・象徴・沈黙など制度に依らぬ秩序は、制度と並び連邦を支え
るものと認める。
第六条:象徴存在の明文化
天皇およびレンズマン制度は、連邦制度に依存しない“倫理の座標軸”と
してその存在を保持し、制度を超えて連邦全体を見守る。
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【第三章:連邦の拡張と外部秩序への対応】
第七条:外向非同化原則
大銀河連邦は、いかなる未接触文明・沈黙圏に対しても、その制度・価
値観を強制しない。
接触は観察と敬意をもって行い、制度の導入は原則として禁ずる。
第八条:文明対話局の設置
制度外文明との接触・対話・非介入政策を担う専門部署を全連邦共通機
構として設置する。
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【第四章:市民の責務と連邦意識の再確認】
第九条:文明意識の自覚義務
大銀河連邦の市民は、自らが秩序を支える一員であることを自覚し、制
度と倫理の更新に参加する権利と責任を有する。
第十条:文化・教育の恒常性
各星域において共通倫理・制度理解・沈黙文化に関する教育を保持し、
世代を越えて“連邦精神”を継承する。
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【第五章:連邦統合の理念と未来】
第十一条:連邦の形態は統一ではなく共鳴とする
各銀河連邦はその個性を保ちながら、大銀河連邦の理念に基づく“響き
合う秩序”の中に在る。
第十二条:制度は語るものでなく、聞くものである
制度はその正しさを主張せず、問い直されることによって生き続ける。
第十三条:この憲章もまた、変わり得る
本憲章の条文もまた固定されたものではなく、千年ごとの制度再審議に
よって更新・修正されうる。
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【附記】
この憲章は、UE51138年にアライェド銀河統合議礼星環にて、
全銀河連邦代表および天皇の見守るもと、連邦憲章として満場一致で採
択された。
同時に発された天皇勅語は以下の通りである:
われらは、壊れなかった。
けれどそれは、壊れ得ないという証ではない。
続いていくとは、問い続けること。
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この憲章を、次なる千年の呼吸としよう。