ダーイセン建設開始
UE48680〜48714年代:ダーイセン建設開始と遺跡の大量発見、方針の
見直しと調査優先開拓への転換
UE48680年、第一開拓団「OVC-Prime」の派遣により、オミクロン・
ヴァージナ銀河群(OVC)における正式な制度導入が開始された。
中心開発拠点として位置づけられたのは、XJ-4472-Δ系第4公転軌道帯に
建設される予定のエキノスフィア型中枢構造体――
**ダーイセン
(Daisen)**である。
ダーイセンはダイソンスウォーム形式で設計され、恒星圏の光圧帯・通
信帯・資源変換帯を段階的に構築することで、制度拡張の中核機能およ
び観測・記録・分散思考管理を担う予定であった。
UE48681〜48685年にかけて、建設班・制度技術班が恒星圏に進出し、
初期リング帯建設および資源捕集衛星群の配置を開始。
並行して進められていた恒星系外縁の詳細地形スキャンおよび軌道帯重
力分布解析の過程において、
XJ-4472-Δ系第7・第8軌道域を中心に、複数の“非自然的構造物群”が高
密度で検出される。
当初は天体物理現象によるものと見なされたが、UE48686年に構造知性
班によって実施された分光分析により、
これらの構造群には高密度炭素系複合材、および熱放射パターンを用い
た符号的構成の痕跡が確認され、
単独の文明痕跡ではなく、大規模・継続的な制度文明の活動記録である
可能性が浮上する。
UE48688年、大銀河連邦制度記録庁・第六外縁開拓監査局は緊急監査を
実施し、XJ-4472-Δ系を含む周辺10星系において、
構造痕跡・配置規則・放射履歴・記録媒体と思われる物質帯など、合計
413件の遺構と遺構候補を記録。
これを受け、UE48689年には大銀河評議会特別倫理会議が開催され、
「当該銀河群において、かつて大規模な知的制度文明が存在した可能性
が高く、制度導入はその解明と倫理評価を伴わぬ限り実施すべきではな
い」
との結論に至る。
この結果、UE48690年、大銀河評議会は**「OVC調査優先方針決議」を
採択**し、
以下の2点を主軸とする開拓方針の大幅見直しを命じた。
1. 制度導入および居住開拓は制限区域外に限定し、恒星系単位で倫理承
認が得られるまで拡張を停止すること。
2. 建設中のダーイセンを制度機能中枢から調査中枢へ転換し、銀河群全
体の遺跡調査・記録・保護の拠点とすること。
この決定を受け、UE48691年、建設中のダーイセン内に「オミクロン・
ヴァージナ総督府(OVGA:Omicron Vagna Governorate
Authority)」が設置される。
総督府は、制度庁、記録庁、文化倫理庁、資源庁、教育連絡局の五庁合
同体制で構成され、
調査と制度導入の調整、発掘区域の区分管理、構造知性班の恒常展開、
文化記録再編成に関する中継判断機能を担うこととなった。
UE48700年代にはダーイセンの完成予定計画は一旦凍結され、「観測・
記録対応型エキノスフィア」への設計変更が承認された。
リング帯の大部分は通信中継、AI記録処理、思考実験構造体、遠隔分析
用反射群に転用され、
文明解明の主拠点として再編成が進められていく。
制度的には、UE48714年に至ってようやく最初の調査暫定報告が編纂さ
れ、
この段階で初めて、“古代オミクロン・ヴァージナ銀河群文明”という仮
称が制度記録庁内で用いられ始める。
「制度は、過去を押しのけるためにあるのではない。
かつて制度があったという記録の前に、我々の制度はひとまず沈黙すべ
きだ。」
こうして、オミクロン・ヴァージナ銀河群における開拓は、
制度の勝利としてではなく、“記録を学ぶ文明の開始”としてその第一歩
を踏み出すこととなった。