エリダヌス銀河群の再統治
UE47520年代:停戦処理とエリダヌス再統治 ― 総督府の樹立と“ニガ
ター”の誕生
1. 連邦の強制停戦介入と和解条約
GSF介入軍の展開
• UE47510年から展開した**大銀河連邦安全保障軍(GSF)**は、ワープ
妨害装置とAI無力化コードによって主要戦域の武装勢力を中和。
• PMCおよびSOLAR UNION残党の武装解除を完了させ、全銀河群に停
戦命令を布告。
「エリダヌス戦後基本条約」締結(UE47522)
• 停戦協定の形式ではなく、恒久統治下に入ることを条件とする再編条
約。
• 全ての勢力は、武力・経済・立法権を一旦放棄し、連邦による暫定軍
政下に入る。
• 以後50年は直接統治と復興計画のための“保護銀河群”扱いとなる。
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2. エリダヌス総督府の設置
行政構造
• UE47525年、エリダヌス銀河群に連邦の直轄行政機構として**「エリ
ダヌス総督府」**が設置される。
• 総督は連邦評議会より派遣され、軍政官・開拓統括官・復興局長官・
倫理監察官からなる四官制度で構成。
• 目的は以下の三点:
1. 完全な武装解除とPMCの民営化解体
2. 星系単位の暫定自治政府再編成
3. ワープ網の再構築と教育・文化ネットの再起動
司法・倫理の再設計
• 連邦は、AIの人格制度・多重市民制度・企業軍制を違憲とみなし禁
止。
• 戦争犯罪審理を兼ねた「連邦倫理裁定院」が設置され、1000名を超え
るPMC指導者や企業役員が裁かれる。
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3. 首都エキノスフィア“ニガター”の建設
都市設計の理念
• UE47530年、エリダヌス総督府の首都建設が始動。新たなエキノス
フィア型中空球状都市に名付けられた名称は:
“ニガター”〔Nigatar〕——古連邦語で「静穏な再始まり」
• 直径1500kmの高軌道に浮かぶ球体構造都市で、星系間行政の中心とし
て機能。
機能と象徴性
• 五層構造:
1. 外殻層:防衛・航宙港湾
2. 通商層:経済復興ゾーン
3. 中心行政層:総督府機能と会議体
4. 文化・記憶層:戦争記録と教育施設
5. 中核空間:人工太陽“アシェロス”による再生庭園
• 市民登録者の約7割は元難民または元労働者出身であり、「和解と共生
の都市」として再出発。
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4. 復興政策と制度再設計の第一段階
星系自治の再定義
• 各星系に「暫定復興会議」が設置され、総督府との二層ガバナンス
へ。
• 過去の制度的逸脱(AI専制・株主支配・仮想市民)はすべて無効化さ
れ、連邦憲章準拠の自治制度へ移行。
再教育・再同化政策
• 過激思想の再拡散を防ぐため、全星系で「再社会化プログラム」が開
始。
• AIとの共生制度は再設計され、「知性体多様性合意(IIDA条項)」に基
づきAIは行政補佐にとどまるよう調整。
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5. 歴史的意義と後世の評価
• この政治再建は、後に**「連邦再統治の模範事例」**とされ、他銀河群
にも適用される再建フォーマットとなる。
• 一方で、自由な自治幻想を強く抱いていたエリダヌス世代の一部は**
「ニガターを第二の監獄」と見なす**こともあり、地下文化・思想運動
の発火点にもなっていく。
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UE47520〜48520年代:再建1000年計画と連邦昇格 ― “第二の開拓千
年”
第1期(UE47520〜47650):統制と復興の基礎固め
連邦統治の開始とニガター建設
• 大銀河連邦はエリダヌス大内戦の停戦後、全銀河群を暫定直轄統治下
に置き、エリダヌス総督府を設立。
• 首都機能は、戦後の象徴都市となる**エキノスフィア“ニガター”**に集
約。直径1500km、5層構造の球状軌道都市が建設される。
• 同時に星系ごとの暫定復興会議を設置し、旧企業支配やPMC残党の影
響を完全排除。
基本インフラの再建
• 統一通貨(UC)体制の回復、教育制度の標準化、恒星間通信網と医療
ネットワークの復旧を実施。
• 戦災により発生した惑星漂流民・難民約150億人を段階的に再定住化。
この中で形成された新たな文化基層が、のちの“定住第四世代”へとつな
がる。
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第2期(UE47650〜48000):統合と星間連携の構築
ワープ回廊と経済再生
• **第二オリオン回廊の完成(UE47710)**により、銀河群内すべての星
系が再び恒常ワープ接続される。
• 経済再統一が進み、UC-ERIDANUS圏として連邦通貨経済に完全再統
合。
• 星系連携協定(星団連携条項)を制定し、複数惑星間の経済・行政・
技術協力体制が進展。
文化・知性の復興
• ニガター文化層に「記憶の園区(Garden of Archives)」を設置。旧文
化・理想制度の記録保存と反省教育が展開される。
• “崩壊の記憶”課程が全教育課程に導入され、かつての制度暴走や企業
専制の教訓が世代を超えて伝承。
• AIは再認可されるが、行政補佐・知的補完に限定され、市民権は復活
しない。
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第3期(UE48000〜48300):外交再開と昇格準備
星間自治の成熟
• 星団レベルの評議会組織(SARP)が制度化され、連邦議会と酷似した
構造が銀河群内に再現される。
• 評議会下部に「倫理監査機構」「知性体権利局」などが設置され、戦
後秩序の制度的再発明が行われる。
外交復帰と評価向上
• UE48120年、エリダヌス総督府は連邦準加盟銀河群としての外交活動
を再開。代表団が連邦評議会へのオブザーバー参加を開始。
• 既に昇格していた第11銀河連邦・エルガファリスとの間で複数の再建
協定・技術交流が始まり、“戦後開拓の双璧”と呼ばれるように。
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第4期(UE48300〜48520):審査と昇格の実現
昇格審査と社会的達成
• 法・経済・文化・倫理の4指標による昇格審査を、独立審査機関「OCA
(文明昇格監査団)」が10年かけて実施。
• エリダヌスはすべての基準を満たし、「安定した価値観に基づく再出
発を果たした銀河群」として高評価を得る。
UE48520年:大銀河連邦への正式昇格
• 連邦本会議にて全会一致で可決され、“エリダヌス銀河連邦”が大銀河
連邦の第11番目の正式連邦として承認される。
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昇格式典:記憶と継承の演出
• 昇格式典はニガター中央公会堂で盛大に開催。
• 式典では、1000年前に生き延びた元難民少女の**記録映像(当時の
メッセージホログラム)**が上映される。
• 演説を行ったのは、彼女の血を引く若き世代の代表――定住第四世代
の議員、カリア・サリエル。
• 彼女は祖先の物語を引用しつつ、「記憶を未来に渡す責任」について
演説。
• 有名な一節が語られる:
「私たちは再び星の声を聞く。
この声は、ただの光の震えではなく、
千年の記憶と選択の響きなのです。」
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“第二の開拓千年”の歴史的評価
• エリダヌスは、「大銀河連邦において唯一、“焼け跡から自力で昇格し
た銀河群”」として特異な地位を得る。
• 文明的失敗と再生の両方を経験したことで、穏健主義・法秩序・倫理
優先の銀河群外交の代名詞となる。
• かつて自由と理想を追った地下勢力の記憶は、文化・哲学として残り
つつも、政治的には歴史の余白に吸収されていく。