室蘭型海防空母
### **室蘭型海防空母**
### **建造経緯**
#### **1. 計画の背景**
- **船団護衛の需要**
- 第二次世界大戦中、北大西洋や北海を中心とした船団護衛の必要性が
高まりました。特にUボートの活動が激化する中、護衛空母の配備が急
務とされました。
- 英国からの要請と日英同盟の枠組みの中で、短期間で量産可能な海防
空母の計画が日本海軍によって立案されました。
- **戦時標準船の応用**
- 日本がすでに大量建造していた戦時標準タンカーの船体を流用するこ
とで、設計期間の短縮と建造コストの削減を図りました。
#### **2. 技術供与と設計改良**
- **英国からの技術供与**
- 英国から提供された油圧式カタパルトの技術が、この計画の重要な基
盤となりました。これにより、短い飛行甲板を持つ海防空母でも効率的
な航空機運用が可能になりました。
- **日本独自の改良**
- 日本側では、カタパルトの整備効率の向上を目的とした改良を実施し
ました。また、船団護衛任務に適した簡易格納庫や防御装甲を排除した
軽量設計を採用しました。
#### **3. 建造スケジュール**
- **建造開始**
- 1939年、室蘭型の建造が正式に開始されました。大規模な造船所だ
けでなく、地方の中小造船所もモジュール方式での生産に参加しまし
た。
- **英国向け供与の決定**
- 日本海軍向けとして計画された36隻に加え、英国への供与用として
20隻が建造されることが決定しました。これにより、総計56隻の建造が
計画されました。
#### **4. 造船所と生産体制**
- **主要造船所**
- 室蘭、横須賀、呉などの主要造船所が建造を担当。これらの造船所で
は、戦時標準タンカーの改造が迅速に行われました。
- **モジュール生産**
- 船体や甲板、航空設備のモジュール化を進め、地方造船所での分散生
産が可能となりました。
#### **5. 建造後の運用**
- **日本海軍での運用**
- 主に大西洋や地中海での船団護衛や対潜哨戒、航空機輸送任務に投入
されました。
- **英国での活用**
- 英国に供与された20隻は、大西洋での船団護衛作戦において重要な
役割を果たしました。
- **戦後の再利用**
- 戦後、一部が対潜ヘリ空母や物資輸送艦に改造され、残りは保管艦に
なっていましたが、第二次日米戦争時には現役復帰、護衛任務や航空機
郵送で再び活躍しました。
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#### **概要**
- **分類**: 戦時標準タンカーを改造した海防空母
- **任務**: 船団護衛、対潜哨戒、航空機輸送
- **建造数**:
- 日本海軍向け: 36隻
- 英国向け供与: 20隻
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#### **基本スペック**
- **全長**: 160.50m
- **全幅**: 20.00m
- **基準排水量**: 約15,000トン
- **最大速力**: 約16ノット
- **航続距離**: 約12,000海里(巡航速力12ノット時)
- **推進機関**: ディーゼルエンジン採用(生産性と燃料効率を重視)
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#### **航空機運用設備**
- **搭載機数**: 最大24機(運用機と予備機を含む)
- **航空機**:
- 初期: 零戦、九七艦攻(磁探搭載型)
- 中期以降: 零戦、紫星(瑞雲改造型)、東海艦上型
- 第二次日米戦争時: 零戦、海鳥(対潜ヘリ)
- **発艦設備**: 英国から技術供与された油圧式カタパルトを計画段階で
採用
- **性能**:
- 最大発艦重量: 約6トンまで対応可能
- 発艦速度: 約120~140km/h
- 短い飛行甲板からの安全な発艦を実現
- **技術供与の背景**: 室蘭型海防空母の計画が開始された1939年、日
本は英国と協議を行い、船団護衛の航空戦力強化を目的に油圧式カタパ
ルト技術の供与を受けることが決定。
- **運用エピソード**: 日本側は供与された設計を基にカタパルトを改
良し、日本独自の整備手順を追加することで運用効率を向上させた。ま
た性能向上型は正規空母でも採用され、艦載機の急速展開能力向上に多
大な貢献を果たした。
- **格納庫**: 簡易型格納庫を装備、甲板下に航空機を収容
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#### **武装**
- **12cm単装高角砲** ×2基
- **25mm三連装機銃** ×6基(戦時中に増備)
- 防御装甲は非搭載
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#### **運用**
1. **船団護衛任務**
- 主に日本海軍による大西洋や地中海での船団護衛作戦に投入。
- 英国に供与された20隻は、大西洋での対潜哨戒と航空機輸送を担
当。
2. **航空機輸送**
- 分解状態の航空機を搭載し、戦線への補給を支援。
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#### **戦後の影響**
- 戦後、大量建造された室蘭型の一部は民間輸送船に転用される予定
だったが、大部分は保管艦として維持。
- 再改造を受けた艦は対潜ヘリ空母や物資輸送艦として活躍。
-特にヘリ空母実験艦として改造された「横浜」による実績は、海軍に
よる今後のヘリコプター運用に多大な影響を与えた。