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戦後の状況

日露戦争の結果


1. 日本の戦果

• 戦場での成果

奉天会戦では勝ちきれなかったものの、旅順陥落と日本海海戦での圧勝により、ロシアに一定の打撃を与えることに成功。満州南部の利権(旅順・大連の租借権、南満州鉄道の管理権)を獲得し、朝鮮半島での優越権を確立。

• しかし、奉天での膠着や財政的負担の増大により、国力が消耗。戦争継続が不可能となり、賠償金を得ることはできず、国内では不満が高まる。


2. 英国の視点

• 陸軍の弱点露呈

日露戦争での日本陸軍の作戦遂行能力が限界に近いことが明らかになる。特に奉天会戦での膠着は、兵力や補給能力、戦術の限界を露呈した。

• 一方で、日本海軍の高い実力は再確認され、制海権を確保した能力を評価。

• 朝鮮問題への懸念

英国は、ロシアが朝鮮半島への影響力を完全に失ったものの、日本の陸軍力が十分でないため、朝鮮半島の安定維持が危ういと判断。※1


3. 日英同盟の強化

• 英国は朝鮮半島へのさらなるコミットを決定し、1906年、英国陸軍の部隊を釜山や仁川、京城(現:ソウル)に駐留させることで、日本を支援。※2

• 表向きは朝鮮の独立維持と東アジアの安定確保を目的とするが、実質的には日本陸軍の弱点を補完する措置。

• 日英同盟の拡張

• 英国はこの駐留を背景に、日英同盟の強化を提案。1907年に日英同盟を改定し、朝鮮半島防衛と満州の権益保護を共同目標として明記。

• 日本にとっては英国の支援を得ることで、ロシアや他列強への抑止力を強化できる一方、英国は極東での戦略的影響力を維持。


戦争後の朝鮮


1. 朝鮮の政治状況

• 朝鮮は依然として独立国の地位を保つが、李氏朝鮮政府の統治能力は脆弱。※3

• 日本と英国の影響力が増大する中、朝鮮政府は外圧への対応に追われる。

• 英国は朝鮮の内政改革を支援しつつ、港湾施設や鉄道整備を進め、戦略的基盤を構築。


2. 経済的影響

• 日本と英国が主導する鉄道網の建設や貿易の拡大により、朝鮮経済は外資依存が強まる。

• 一方で、農村部の貧困問題は解消されず、国内の不満が蓄積。

・日英は共同で朝鮮を保護国化し、要地を確保する。満州地域の開発が優先された結果、朝鮮は「戦略拠点」として活用され、要地以外の開発はされず、全体として現地政府に任されたほぼ封鎖・放置状態が継続する。


国際的影響


1. ロシアの動向

• 極東での影響力後退

ロシアは日露戦争の敗北と国内の第一次ロシア革命の余波により、極東への影響力を大きく失う。

• 満州北部を維持するものの、シベリア鉄道を防衛するのが精一杯の状況。

• 英国と日本の圧力により、朝鮮半島への干渉を放棄。

• 欧州への集中

ロシアは西部国境の強化とバルカン半島への影響力拡大に軸足を移し、極東での活動は減少。


2. 列強の反応

• 英国の戦略的優位

英国が朝鮮に駐留したことで、極東における英国の影響力がさらに強化される。

• 日本と協調しつつも、列強間の均衡を維持するための新たなカードを得た。

• 米国の関与

米国は朝鮮半島への英国の介入を静観しつつ、中国市場での利権拡大を狙う。門戸開放政策を引き続き主張。


3. 日本の戦略調整

• 日本は日英同盟を頼りにする一方で、陸軍の近代化と兵站能力の強化を急務とする。

• 英国からの技術支援やノウハウを導入し、次の戦争に備える。

• 海軍力の重要性が再確認され、八八艦隊計画を加速。


1.日露戦争と英国の戦略的判断


日露戦争(1904~1905年)は日本がロシアに勝利を収めたものの、奉天会戦での膠着や財政的負担の増大により、日本の戦争遂行能力には限界があることが明らかになった。

一方、ロシアの極東進出(満州占領、旅順要塞化、シベリア鉄道完成)によって、極東地域での緊張は依然として高く、英国は次のような戦略的判断を行った。


(1) ロシアの南下政策の脅威

• 英国にとって、ロシアの南下政策は中東イラン・アフガニスタンやインドに至る戦略的ルートを脅かすものであった。極東でロシアの影響力を抑えることは、これらの地域での英国の優位性を維持するために不可欠だった。


(2) 日本陸軍の限界と補完

• 日露戦争の結果、英国は日本陸軍の戦術能力に疑問を抱くようになった。特に奉天会戦での膠着や、日本の財政的・人的資源の限界が露呈したことから、英国は日本単独では極東の安定を維持できないと判断。

• そこで、日本の軍事的弱点を補完するため、英国が極東への直接的な関与を深める必要が生じた。


(3) 英国の経済的利益

• 南満州鉄道の利権の一部が日本から英国に譲渡されたことにより、極東での経済的影響力を拡大する機会を得た英国は、これを確保するために極東でのプレゼンスを強化する動機を持った。


2. 英国の極東政策の変化


(1) 朝鮮半島への駐留


日露戦争後、英国は日本の提案を受け入れ、釜山・仁川・京城(現在のソウル)に部隊を駐留させることを決定した。この駐留は、以下の目的を持っていた:

• ロシアの朝鮮半島進出の抑止:旅順に近い朝鮮半島南部に英国が軍事的拠点を設けることで、ロシアの圧力を直接的に牽制。

• 日本陸軍の補完:日本が負担しきれない朝鮮半島の防衛を英国が部分的に担うことで、日英同盟の戦略的効果を高めた。


(2) 南満州鉄道利権の確保

• 英国は南満州鉄道の利権を日本から譲渡されたことで、中国東北部での経済的利益を得る道を確保。

• この鉄道を利用して中国市場へのアクセスを容易にし、輸出入の拡大を狙った。


(3) 極東での港湾利用

• 朝鮮半島の釜山や仁川の港湾施設を英国海軍の補給拠点として利用することで、極東海域での英国海軍の行動能力を高めた。

• また、これらの港湾施設は英国製品の輸出やアジア市場での商取引の重要なハブとしても機能した。


3. 英国の関与拡大の動機


(1) 地政学的動機

• 英国は、朝鮮半島を「極東における戦略的緩衝地帯」と見なし、ここでのロシアの勢力拡大を防ぐことを優先課題とした。

• さらに、朝鮮半島を支配下に置くことで、満州や中国北部でのロシアの南下を防ぐと同時に、極東全域での英国の戦略的地位を強化した。


(2) 経済的動機

• 南満州鉄道や港湾施設を通じて極東市場へのアクセスを確保し、英国が優位に立つことを狙った。

• また、日本が財政的に負担を軽減する代わりに、朝鮮の近代化(鉄道、教育、農地改革)に協力することで、英国製品の需要拡大を図った。


(3) 軍事的動機

• 英国は朝鮮半島に駐留することで、極東における日本海軍と英国海軍の連携を強化し、太平洋や黄海でのロシア艦隊への対応能力を高めた。


(4) 外交的動機

• 英国は、朝鮮への駐留を通じて日英同盟を強化するだけでなく、フランスやドイツなどの列強を牽制する意図を持っていた。

• また、列強間の均衡を保つために、「朝鮮の独立を維持するための国際的な責任」として関与を正当化した。


4. 英国の関与による影響


(1) 日英同盟の深化

• 朝鮮半島での英国の駐留と協力は、日英同盟の実効性を高めると同時に、極東での日本と英国の相互信頼を強化した。

• 英国の駐留による防衛負担の軽減により、日本は国内開発や軍備拡張に集中できるようになった。


(2) 極東での英国の地位向上

• 英国は極東での存在感を強化し、ロシアやフランスに対する抑止力を確保した。

• また、南満州鉄道や港湾施設の運営を通じて、極東での経済的影響力を拡大した。


(3) 朝鮮半島の近代化

• 英国が朝鮮半島の鉄道や港湾整備に関与することで、朝鮮の近代化が加速。これにより、朝鮮半島が英国の極東戦略にとって重要な経済・軍事拠点となった。


(4) 列強間の緊張

• 英国の極東進出により、ドイツやフランスなどの列強は警戒を強め、特にロシアとの対立がさらに激化した。これが、日露間だけでなく、英国とロシア間の緊張の増加を招いた。


※1:日英同盟継続の一番の理由。朝鮮は日英で共同管理することとなる。

※2:英国にコミットさせることで日本は朝鮮半島への出費を削減、国内開発を進めることとなる。

※3:英国式間接統治の導入。収奪的植民地経営が始まる。

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