高千穂型戦艦
## **⾼千穂型戦艦と⽇⽶戦争の戦訓**
### **1. 戦時急造計画と遅延の背景**
#### **1.1. 計画⽴案**
- **⽇⽶戦争中の戦⼒補填案**
- 1936年、⽇⽶戦争激化に伴い、⾦剛型代艦として45,000トンクラスの⾼速
戦艦「⾼千穂型」の建造が決定。
- 当初の計画では、1938年から1939年にかけて全艦を竣⼯させる予定だっ
た。
#### **1.2. 遅延の原因**
- **設計変更による影響**
- ⽇⽶戦争の戦訓が建造中に反映され、以下の改良が実施された:
1. **対空⽕⼒の強化**
- ⽶軍の航空戦⼒に対抗するため、⾼⾓砲を10基から12基に増設。
- 25mm三連装機銃をさらに多数搭載し、対空⽕⼒を⼤幅に強化。
2. **⽔中防御の強化**
- ⽶軍潜⽔艦の活躍を教訓に、複層構造の⿂雷防御システムを強化。
- **資材供給と優先順位の問題**
- ⼤和型戦艦に使⽤される特殊鋼材の優先供給が⼀時的に影響し、⾼千穂型
の建造進捗が遅れた。
- ⽇⽶戦争終結後に資源供給が安定し、⼯期が短縮される。
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### **2. ⾼千穂型戦艦の竣⼯スケジュール**
#### **2.1. 各艦の進⽔と竣⼯**
1. **⾼千穂**
- 1938年進⽔、1940年竣⼯(呉海軍⼯廠)。
2. **穂⾼**
- 1938年進⽔、1940年竣⼯(佐世保海軍⼯廠)。
3. **葛城**
- 1939年進⽔、1940年竣⼯(横須賀海軍⼯廠)。
4. **笠置**
- 1939年進⽔、1940年竣⼯(舞鶴海軍⼯廠)。
#### **2.2. ⽇⽶戦争後の調整**
- **戦訓を反映した戦艦の完成**
- 戦争終結後に得られたデータを設計に反映した結果、艦隊防空能⼒が向上
し、欧州戦線での実⽤性が増した。
- **竣⼯時の完成度**
- 戦訓を取り⼊れた結果、当初計画を超えた性能を持つ戦艦として完成。
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### **3. 第⼆次欧州⼤戦での活躍**
#### **3.1. ⽇英同盟の再評価と⽇本の派遣**
- **⽇英同盟強化**
- 1940年、欧州での戦争激化に伴い、⽇英同盟が再評価され、⽇本海軍の戦
⼒が英国の要請に応じて派遣される。
- **⾼千穂型の派遣**
- 最新鋭の⾼千穂型戦艦4隻が地中海戦線に投⼊され、連合軍の主⼒艦隊とし
て活躍。
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#### **3.2. 地中海戦線での活躍**
- **護衛任務**
- ⾼千穂型は、地中海における連合軍の輸送船団護衛に投⼊。ドイツおよび
イタリア海軍の通商破壊作戦を阻⽌する任務を担う。
- **シチリア沖海戦(1941年)**
- ⾼千穂と穂⾼が、イタリア艦隊の「ヴィットリオ・ヴェネト級」と交戦。
主砲の精度と速⼒を活かし、敵艦隊に⼤打撃を与える。
- **マルタ防衛**
- 英国の植⺠地マルタに対する攻撃を阻⽌するため、対空⽕⼒を駆使し、連
合軍輸送船団を⽀援。
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#### **3.3. 北⼤⻄洋戦線での活躍**
- **Uボート対策**
- 北⼤⻄洋での護衛任務では、対潜哨戒機と連携し、ドイツUボートの活動を
制限。
- **ティルピッツ撃破作戦**
- 1943年、葛城と笠置がノルウェー沿岸でドイツ戦艦ティルピッツを発⾒
し、これを撃破する戦果を挙げる。
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### **4. ⾼千穂型の戦後の影響**
- **戦後の象徴**
- ⾼千穂型は、⽇英同盟の象徴として認識され、戦後の⽇本と英国の協⼒関
係を象徴する存在となる。
- **技術的進化**
- 戦争中の設計変更により得られた技術は、⽇本の造船技術向上に⼤きく寄
与。
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### **⾼千穂型戦艦 要⽬(竣⼯時)**
#### **基本性能**
- **艦種**:⾼速戦艦
- **基準排⽔量**:45,000トン
- **満載排⽔量**:55,000トン
- **全⻑**:240m
- **全幅**:32m
- **吃⽔**:10.5m
#### **主機・速⼒**
- **機関**:タービン4基4軸、重油専焼⽸12基
- **出⼒**:165,000⾺⼒
- **速⼒**:31ノット
- **航続距離**:9,000海⾥(18ノット巡航時)
#### **兵装**
- **主砲**:41cm三連装砲4基(12⾨)
- 最⼤射程:42,000m
- ⾼初速砲弾を採⽤し、徹甲能⼒を強化。
- **副砲**:15.5cm連装砲4基(8⾨)
- 射程:22,000m
- **対空兵装**:
- 12.7cm⾼⾓砲6基(12⾨)
- 25mm三連装機銃48基(144⾨)
- 戦時中の改修で機銃の増設を予定。
- **⿂雷兵装**:なし(航空雷撃や潜⽔艦対策のため⾮装備)
#### **防御**
- **主装甲帯**:350mm
- **甲板装甲**:最⼤220mm
- **砲塔装甲**:400mm(前⾯)、200mm(側⾯)
- **⽔中防御**:多層防御構造を採⽤し、⿂雷の爆発⼒を吸収する設計。
#### **搭載装備**
- **航空機**:艦載機3機(零式⽔上偵察機など)
- カタパルト2基を装備。
#### **乗員**
- **定員**:1,600名
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### **設計思想の特徴**
1. **⽕⼒の集中**
- 主砲12⾨により敵戦艦に対する圧倒的な砲撃⼒を発揮。
2. **⾼速性の重視**
- 31ノットの速⼒で、巡洋戦艦的な機動⼒と戦艦としての⽕⼒を両⽴。
3. **防空能⼒の強化**
- ⾼⾓砲と機銃を多数装備し、航空機からの攻撃に対応可能。
4. **防御⼒の向上**
- ⿂雷や爆弾に対する耐性を強化し、戦場での⽣存性を⾼める。