松型駆逐艦小史
松型駆逐艦(丁型)
(1) 開発背景
• 計画の背景
松型は1936年の②計画で護衛艦として設計され、鴻型水雷艇の計画を
見直して生産性や護衛能力を重視して開発されました。
• 戦争の継続により、護衛艦の不足が顕在化したため、鴻型の増強を取
りやめ、松型に切り替えられました。
• 後に**マル急計画(1941年)**で48隻の追加建造が行われました。
(2) 設計と特徴
• 基本要目
• 基準排水量: 約1,280トン
• 全長: 約100m
• 主機: 蒸気タービン(19,000馬力 / 鴻型の機関を流用)
• 速力: 27.8ノット
• 航続距離: 約4,000海里 / 18ノット
• 兵装
• 主砲: 八九式12.7cm高角砲(連装1基、単装1基)
• 対空機銃: 九六式25mm機銃(連装2基、単装10基)
• 魚雷: 61cm4連装魚雷発射管1基
• 対潜装備: 九三式爆雷投射機2基、爆雷投下軌条2基
• 設計上の特徴
• 生産性を高めた簡易構造が特徴。
• 対潜能力を強化し、輸送船団護衛を主目的とする設計。
(3) 建造数と運用
• 建造数
• ②計画: 16隻計画され、8隻が竣工、8隻は建造中止。
• マル急計画(1941年): 48隻が建造され、1944年までに全艦竣工。
• 運用実績
• 主に大西洋・地中海航路での護衛任務に従事。
• ドイツUボートに対抗し、護衛戦力として重要な役割を果たした。
橘型駆逐艦(丁型改)
(1) 開発背景
• 計画の背景
1941年のマル追計画で松型を改良した橘型が計画されました。
• 溶接工法やブロック工法の採用で建造効率を大幅に向上。
• 対潜能力の強化とともに、護衛任務に最適化。
(2) 設計と特徴
• 基本要目
• 基準排水量: 約1,350トン
• 全長: 約103m
• 主機: 蒸気タービン(19,000馬力)
• 速力: 27.8ノット
• 航続距離: 約4,000海里 / 18ノット
• 兵装
• 主砲: 八九式12.7cm高角砲(連装1基、単装1基)
• 対空機銃: 九六式25mm機銃(連装2基、単装10基)
• 魚雷: 61cm4連装魚雷発射管1基(任務により撤去も)
• 対潜装備: 九三式爆雷投射機2基、爆雷投下軌条2基
• 設計上の特徴
• 生産性の向上と耐久性の強化が特徴。
• 魚雷発射管を撤去し、対空機銃を増設した艦も存在。
(3) 建造数と運用
• 建造数
• マル追計画(1941年): 80隻が計画され、1947年までに全艦竣工。
• 運用実績
• 大西洋や地中海航路での護衛作戦を中心に活躍。
• 航空攻撃やUボートの脅威に対処し、多数の輸送船団を守る。
梓型駆逐艦(丁型改Ⅱ)
(1) 開発背景
• 改⑤計画(1942年)
橘型を発展させ、打撃艦隊や駆逐隊旗艦としても運用可能な梓型が計画
されました。
• 速力を向上させ、艦隊行動への適応を目指す。
• 対空・対潜能力をさらに強化し、多用途性を追求。
(2) 設計と特徴
• 基本要目
• 基準排水量: 約1,600トン
• 全長: 約111m
• 主機: 蒸気タービン(42,000馬力)
• 速力: 33ノット
• 航続距離: 約5,000海里 / 18ノット
• 兵装
• 主砲: 九八式10cm高角砲(連装2基)
• 対空機銃: 戊式40mm機銃(四連装1基、連装3基)、九六式25mm機銃
(単装15基)
• 魚雷: 61cm4連装魚雷発射管1基(旗艦仕様では撤去)
• 対潜装備: 三式爆雷投射機16基、四式対潜弾投射機1基、爆雷投下軌条
2基
• 設計上の特徴
• 魚雷発射管と40mm機銃の換装が可能。任務に応じて装備を変更。
• 操艦性、速力、航続距離を向上させた艦隊駆逐艦としての性能。
(3) 建造数と運用
• 建造数
• 改⑤計画(1942年): 100隻が計画され、1947年までに建造開始分の
大部分が竣工。
• 運用実績
• 魚雷装備型は水雷戦隊や駆逐隊旗艦として運用。
• 対空・対潜能力を活かし、主要な護衛作戦で活躍。