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友鶴事件・第四艦隊事件・臨機調事件

## **1. 友鶴事件(1934年)**

### **1.1 発生の背景**

- **軽量化と復原性:**

水雷艇「友鶴」は武装強化と軽量化を進めた結果、復原性に課題を抱

えていました。設計余裕があったため転覆には至りませんでしたが、重

量配分の偏りが問題視されました。

- **蒼龍の航空巡洋艦構想:**

友鶴事件発生当時、蒼龍は航空巡洋艦として計画されており、この事

件が設計変更の決定的な契機となりました。

### **1.2 事件の経緯**

- **発生日時:** 1934年3月12日

- **場所:** 瀬戸内海での試験航行中

- **概要:** 水雷艇「友鶴」が波浪を受けて大きく傾斜。復原性の問題が

明らかになり、曳航されて帰港。損傷は軽微でした。

### **1.3 対応と影響**

- **原因調査:** 重心位置や装備の重量配分に問題があることが判明し、

設計改良が実施されました。

- **蒼龍の設計変更:**

- 航空巡洋艦から航空母艦へ設計変更され、復原性や航空機運用能力が

大幅に向上。

- この変更により、日本海軍の航空母艦設計が世界的に評価されるよう

になり、後の飛龍型や翔鶴型の設計に影響を与えました。

- **国際的影響:**

- 日本海軍の艦艇設計思想が「多目的運用」から「専門性重視」へ転

換。特化した航空母艦設計が、米国のヨークタウン級と並ぶ性能を持つ

と評価されました。

---

## **2. 第4艦隊事件(1935年)**

### **②.1 発生の背景**

- **設計思想の進化:**

この世界ではロンドン軍縮条約が緩やかだったため、艦艇設計に余裕

がありましたが、コスト削減や新素材の導入で設計の最適化が進められ

ていました。一部の駆逐艦や軽巡洋艦では、耐波性の検証が不十分な部

分が残っていました。

### **②.2 事件の経緯**

- **発生日時:** 1935年9月26日

- **場所:** 太平洋演習中の第4艦隊(旗艦「那珂」)

- **概要:** 台風接近中に艦隊が暴風域に突入し、一部の駆逐艦や軽巡洋

艦が波浪の影響で損傷。

- 駆逐艦「初春」:甲板構造に亀裂。

- 駆逐艦「夕立」:艦橋窓の破損。

- 軽巡洋艦「那珂」:軽微な浸水。

### **2.3 対応と影響**

- **原因調査:** 新素材を採用した部分の耐波性に弱点があることが判

明。

- **改修:** 艦艇構造の補強と耐波性向上を目的とした設計改良が施され

ました。

- **国際的影響:**

- 日本海軍の耐波性設計基準が強化されたことで、日本の駆逐艦や軽巡

洋艦は、各国の艦艇と比較して優れた海上耐久性を持つようになりまし

た。

- 第4艦隊事件で得られた教訓が、後の駆逐艦(朝潮型、松型)や巡洋

艦(利根型)に活用され、艦艇性能が国際的競争力を持つに至りまし

た。

---

## **3. 臨機調事件(1937年~1938年)**

### **3.1 発生の背景**

- **新型タービンの採用:**

朝潮型駆逐艦には新型タービンが搭載され、出力性能が向上しました

が、共振現象が設計段階で十分検証されていませんでした。

- **朝潮型の重要性:**

朝潮型は②計画で建造された最新型駆逐艦であり、艦隊護衛や対空任

務において重要な役割を担っていました。

### **3.2 事件の経緯**

- **発生日時:** 1937年12月29日

- **場所:** 駆逐艦「朝潮」の定期点検中

- **概要:** タービン翼の一部に破損が発見され、翌1938年1月19日に臨

時機関調査委員会が設置。調査の結果、特定の回転数で共振現象が発生

することが判明しました。

### **3.3 対応と影響**

- **改修:** 朝潮型全艦のタービン翼に対する補強が行われ、以降の新型

駆逐艦や巡洋艦ではタービン設計が改善されました。

- **運用の安定化:** 改修後、朝潮型は通常運用に復帰し、日米戦争後の

艦隊再建にも貢献。

- **国際的影響:**

- 臨機調事件で得られた技術が、後の日本海軍全体の機関設計基準に反

映され、駆逐艦や巡洋艦の耐久性が向上。

- 日本海軍の駆逐艦は信頼性の高いエンジン性能で知られるようにな

り、特に英国海軍のトライバル級駆逐艦などと並び称されました。

---

## **4. 三つの事件を通じた影響**

### **4.1 技術革新の連続性**

- **復原性(友鶴事件):** 艦艇設計における復原性の重要性を認識し、

以降の艦艇では重量配分が最適化。

- **耐波性(第4艦隊事件):** 構造設計の耐波性が向上し、日本海軍艦

艇はより厳しい海況に対応可能に。

- **機関性能(臨機調事件):** タービン設計の信頼性が確立され、駆逐

艦や巡洋艦の性能が向上。

### **4.2 国際的な競争力**

- 三つの事件を通じて得られた技術革新により、日本海軍は以下の点で

国際競争力を高めました:

1. **航空母艦:** 蒼龍型の設計変更が、日英米の航空母艦競争において

重要な転機となり、後続の飛龍型や翔鶴型にも影響。

2. **駆逐艦:** 朝潮型駆逐艦が、出力性能と信頼性で高評価を得る。

3. **巡洋艦:** 耐波性を重視した利根型巡洋艦が、国際的にも優れた偵

察巡洋艦と評価される。

---

### **5. 総括**

- **短期的成果:** 三つの事件が日本海軍の技術課題を明らかにし、迅速

な対応が艦艇設計を改善しました。

- **長期的意義:** 技術革新が戦後の日本の造船業や軍事技術に波及し、

商船や輸出造船業の国際競争力向上にも寄与しました。

- **国際的影響:** 日本海軍の設計思想は、米英を含む主要海軍国にとっ

て注目の対象となり、日本が海軍技術での一角を占める基盤を築きまし

た。

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