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異世界源氏物語〜愛に形があるのなら私はあなたの翼になる〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十章 風の旅人

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第92話 風の旅人



 翌朝。

 ユスタッシュはカジエバ村から、ウィリスたちを送りだした。ウィリスと、もともと一星号に残してきた騎士たちだ。


「どうしてもお戻り願えないのですか?」

「すまない。エルタルーサにはよろしく伝えてくれ」


 別れを惜しむフェアフォードたちにも、ユスタッシュは笑顔をなげる。


「そなたらも達者でな。最後に今一度会えて、嬉しかった」

「我らのほうこそ。ユスタッシュさま。離れていても、我らの忠誠はいつも、あなたさまのもとにあります」

「ユイラへ帰り、エルヴェを新たな主君として、私同様に仕えてくれ。ヴァルシアにもそう伝えるのだ」

「御意に。閣下」


 勇ましい騎士たちの目に涙がにじんでいる。


「ですが、閣下。一つだけお約束ください。どうか、何年、何十年たとうとも、いつか必ずユイラへお戻りいただけると。我らの前に閣下のお元気な姿を見せてくださると。我々はそのときまで、何年でも待っておりまする」


 真摯しんしな瞳でのぞきこまれて、ユスタッシュは胸を打たれた。


「約束しよう。果てるときは、わが祖国ユイラでと」


 騎士たちがかわるがわる、ユスタッシュの手をとり、くちづける。

 抱きあう親友たちもいる。


「フェアフォード。元気で」

「閣下を頼んだぞ。ギュスターヴ。命にかえてもお守りするんだ」

「わかってるとも。おまえのぶんまで閣下とそのお妃さまをお守りする」


 また、別れはマハドにも迫っていた。


「ハグン。おれ、ユスターハンと行くよ。おやっさんには、あんたから謝っといてくれ」

「そうじゃないかと思ってたぜ。達者でな」

「ああ。達者で」


 ハグンたちは旅のあいだに大好きになっていた小さなお姫さま、ルビーにも最後の別れを告げた。


「姫さま。お幸せに。そうでなけりゃ、苦労して送ったおれたちの甲斐がないからね」

「ありがとう。わたし、もう充分幸せよ」


 それは今日のルビーの輝きを見たら、誰にでもわかるだろう。

 ルビーは泣きべそをかきつつ微笑んで、ハグンやウィリス、送ってきてくれた全員の頬にキスをした。


「みんな、大好きよ。ありがとう」

「おれたちも、姫さんといられて楽しかった。いつか、親父さんの店に、また来てくれ」

「いつか……いつかね」


 別れはどうしても湿っぽくなってしまう。ましてや、おそらくはもう二度と会えないとわかっている人たちだ。


「さよなら」

「さよなら。みんな、元気で」

「侯爵さま。なにとぞ、姫をよろしく頼みます」

「ユスタッシュさま。我ら一同、御身のご健勝と幸運を祈っております」

「さよなら!」


 手をふって、彼らが去っていく。

 何度もふりかえるその姿を、ユスタッシュはこみあげる思いで見送った。


「あのなかにあなたがいたらと思うと、ルビー。胸がひきさかれる」


 南国の巨大な葉陰に一行が見えなくなると、ユスタッシュはかたわらのルビーを抱きよせた。


「やはり、送りかえさないでよかった」

「そうでしょ?」

「あなたは正しい。私を一生、導いてほしい。私にはうまく舵をとる船長が必要だ」

「心配しなくても、わたし、思いっきり、おっかない奥さんになるから。あなたが浮気なんてしたら、ゆるさないわ」

「おっかなくありませんね。浮気なんてしませんから」


 あーあ、と、マハドが肩をすくめる。

「デレデレ。見てらんねぇや」


 ユスタッシュは照れかくしにせきばらいする。


「では、我々も出発だ。行くさきは古代の遺跡。神々の塔だ」


 ユスタッシュの旅は始まったばかりだ。

 やがて、希代の冒険家として名をはせるのだと、彼はまだ知らない。

 そのかたわらには、いつも彼の愛する美しい妻がいたと、後世まで語りつがれることを——

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