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異世界源氏物語〜愛に形があるのなら私はあなたの翼になる〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十章 風の旅人

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第91話 辺境の花嫁



 そしてその夜、酋長の好意で、ユスタッシュとルビーの婚儀がとりおこなわれた。ユイラ貴族のユスタッシュたちには心ばかりの、しかし、この村ではおそらく十年に一度あるかないかの盛大なお祭りだ。


 旅用の飾りけのない服しか持っていないユスタッシュとルビーは、この村の花婿と花嫁が着る刺繍の衣装と、色をぬった木の実の首飾り、貴重な村の宝である銀細工の冠まで貸してもらえた。


 両耳に赤い花をかけ、かがり火に照らされるルビーのおもては、一種異様なまでに神秘的だ。


 たき火のまわりを輪になって踊る村人たち。

 濃厚な盃。

 二人は異郷の神の前で愛を誓いあった。


「死してなお彼女への愛を守りぬきます」

「生涯ただ一人のわたしの伴侶であると誓います」


 ほこらのなかの小さな木彫りの神。

 ユスタッシュとルビーはそれぞれの想いを神に告げる。神の代弁者である祭祀さいしがこれを受ける。


「もし誓いをたがえたならば?」


 二人は目を見あわせる。


「どんな罰を受けてもかまいません」


 声がそろい、祭祀が頭上に祝福の花びらをなげる。


「この婚姻は神に認められた。くれぐれも誓いをたがえぬように」


 そして踊り。祝宴。

 なりたての花婿と花嫁は、村外れの洞くつへ入れられる。外からかんぬきがかけられ、入口が閉ざされる。奥には祭壇があり、赤い絨毯じゅうたんが敷かれていた。


「今夜はここですごすのね?」

「そのようですね。さあ、祭祀に言われたとおり、神の像にロウソクをささげましょう」

「ちゃんとロウソクはあるのね」

「ブラゴールとの交易で得ているようですよ」


 すると急に、ルビーがふきだした。


「なんですか?」

「だって、あなたったら、ほんとに変わってないんだもの。あいかわらず、ロマンチックじゃないのね。小舟に乗せてくれたときのままだわ」

「すみません。私はそういう男なのだ」


 ユスタッシュが恥ずかしさにうつむくと、ルビーの手が頬にかかり、彼女のほうをむかせる。ルビーは微笑んでいた。


「そんなあなただから好きになったんだもの」

「ルビー……」


 ロウソクの細い光に照らされて、二人の影がゆれる。

 無言になると、さっきまで強気だったルビーが急にモジモジしだす。これから何かがあると理解はしているが、まだ何があるとはわからない。乙女のはじらいだ。


 ユスタッシュは少女の肩を抱きよせ、そっとくちづけた。


「異国の神よ。二人の愛をいつまでも見守っていてください」


 神像の前に冠をささげる。薄くのばした銀細工がかろやかな音をたてる。それから、首飾り。ななめに肩にまいたショール。帯や、刺繍のほどこされた衣服。一つずつ、つみあげられていく。


 ルビーは少しふるえていた。


「ユスタッシュ。わたし……」


 ユスタッシュは幼い妻を両腕で包みこむ。


「愛しています。私の妻」


 少女が落ちつく呪文を、何度もささやいて。

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