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異世界源氏物語〜愛に形があるのなら私はあなたの翼になる〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
七章 陰謀は生贄を求める

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第62話 皇帝陛下の使い



 翌朝早くに、ユスタッシュはベルモット邸から出かける支度をしていた。


「ほんとにクルエル公爵と話しあうつもりか?」と、エルタルーサは賛成しかねるようすだ。


「ムダだと思うがね」

「フォクサーヌは一命をとりとめたが、まだ後遺症が出るかどうかもわからない。私はハリオットにわびてもらいたいのだ」

「君は優しすぎる。君がそうだからといって、相手もそうだとはかぎらない。土台、地方領主の君に、宮廷貴族ってやつは理解できない」

「大臣の書記をしている君は立派な宮廷貴族だろう? エル」

「だから言ってるんだ」


 ユスタッシュは笑ったが、エルタルーサは真剣だ。


「君みたいな純粋な男は、老獪ろうかいな宮廷貴族にかかれば赤子同然だ。クルエル公爵ほどの切れ者ならば、なおさら」

「伯父上は悪いかたではない」

「彼の家族むけの顔しか知らない者は、みな、そう言う。私なら今すぐ真実をル・スター伯爵に話し、皇帝陛下に訴えでるよう進言するね。いや、もう遅すぎるかもしれないが。昨夜すぐでなければならなかったんだ」

「そうだろうか?」


 ユスタッシュはエルタルーサの杞憂きゆうだと思っていた。そこまで心配する必要はないと。

 だが、事実はエルタルーサのほうが正しかったのだ。まもなく、ユスタッシュはそれを思い知る。それも、最悪の形で。


 二人が話しているところへ、表門から番兵が走ってきた。


「ラ・マン侯爵閣下に迎えが来ております」


 番兵の声は少しふるえている。


「私に? 誰が?」

「皇帝陛下の近衛隊にございます」


 皇帝陛下からの使い——

 それがどんな用件なのか、一瞬で理解できた。

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