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異世界源氏物語〜愛に形があるのなら私はあなたの翼になる〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
六章 ユスタッシュの帰還

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第51話 ハリオットの呼びだし1



 サラエラがかけていったあと、ルビーはヒルダと話していた。


「サラエラったら、ハリーが好きなのかしら?」

「あら、どうして?」

「誠実な殿方に弱いみたいよ。しかも、サーラは世話好きだから、つくしがいのある人がいいの。いっしょうけんめいやってるのに、なぜかうまくいかない人を見ると、ほっておけなくなるらしいわ」

「なんだか、どこかで聞いたような人柄ね?」

「えっ? そう?」

「うーん。誰だったかしら? わりと近くにいた気がするんだけど。思いだせないわ」

「お父さまじゃないわよね?」

「違うわ。もっとカッコイイ。なんというのかしらね。美青年だけど残念な感じ。ああ、誰だった? こう、喉元まで出かかってるんだけど」

「ふうん?」


 なんて、二人が話しているとは思いもしないサラエラは、手紙に書かれていた呼びだし場所へ走っていった。


 あずまやと闘技場入口へのあいだの木立で、ハリオットは待っていた。近くに泉はあるものの、木々の奥まで入ったあたりなので、あまり人影がない。


「お待たせしました」

「なんだ。君か。ルビーはどうしたの?」


 サラエラはルビーの信奉者たちのこうした態度にはなれていた。彼らにとって、サラエラは空気なのだ。


「姫さまはお会いしたくないそうです」


 すると、ハリオットはチッと舌打ちをついた。たしかに、こういう仕草を見ると、ルビーの言うとおり計算ずくなのかもしれないと思える。真摯しんしに毎日、謝罪の手紙を書いてきて、同情していただけに、サラエラはガッカリした。


「わかった。また手紙を書く。ルビーがゆるしてくれるまで、何度でも書くから」

「お伝えします」


 サラエラを残して、サッサと立ち去ろうとしたハリオットは、ふと何を思ったのか立ちどまる。


「サラエラだったかな? 君は僕をどう思う?」


 さっきまではなかった妙に優しい笑みまで浮かべている。


「とおっしゃいますと?」

「僕がルビーの夫になることに、君は賛成かい?」


 サラエラは答えにきゅうした。姫さまにその気はないようですとは言えないし、こればっかりはいかに仲がよくても、侍女風情がどうこう言える立場ではない。


 そのようすを見て、ハリオットは目を光らせた。


「まさか、ルビーには好きな男がいるとか?」

「いえ、それはないだろうと……」

「隠さなくてもいいんだ。僕だって、ルビーにかぎってと思うがね」と、唇をかみしめる。「気丈に見えても女の子だ。ルビーはあの男が好きなんじゃないか?」


 サラエラは困りはてた。ハリオットが何を言いたいのか、さっぱりわからない。


「何をおっしゃっておられますのです?」

「だから、僕に隠す必要はないよ。知ってるんだ。あの湖礼祭のとき、ユスタッシュに——だから好きになったなんていうんじゃないだろうね? 奪われたから惹かれたなんて?」


 やっぱり、何を言っているのかわからない。長らく考えて、ようやく、サラエラはハリオットの盛大な勘違いに気づいた。


「何をおっしゃっているのですか! 姫さまにきずなんてございません。たとえクルエル家のご従兄弟さまでも、姫さまを侮辱なさってはいけません」

「そりゃ、そう言うよね。僕だって、未来の花嫁の醜聞は望まない。何もなかったことにしておくのが一番さ。表むきはね。僕は……気にしない」


 と言いつつ、かなり気にしている顔だ。憎悪と嫉妬で人を呪い殺せる目つきである。


「ですから、ほんとに——」

「それはもういい!」


 ハリオットはとつぜん、サラエラの口を手でふさいだ。


「もういいんだ。あのときはいっそ、ルビーを殺して僕も死のうとすら考えたけど。ルビーは幸せになる権利がある。僕が忘れさせてあげる。あの男は決してゆるさないが」


 言いながら、ハリオットはサラエラをイヤな目つきで見おろした。これから神殿にささげる生贄いけにえの羊を見る目だ。冷酷で恐ろしい。

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