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異世界源氏物語〜愛に形があるのなら私はあなたの翼になる〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 贖罪の日々

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第24話 禁じられた関係1

ここからしばらく、推敲なしで投稿します。現在進行形で入力中なので、推敲してる時間が惜しい(^v^;)


スキマ時間がとれしだい、順次、推敲したものとさしかえていきます。三連休明けですね。

じゃないと、〆切までに投稿できる量が少なくなるので。

誤字などあるかもしれませんが、後日直します。



 雨が降る。

 おだやかですごしやすい気候のユイラにしてはめずらしい長雨が続いている。


 ユスタッシュの部屋からは、霧雨にけぶるルーラ湖が見渡せた。昨年までは父が使っていた部屋だ。父の遺品は整理し、数日前からこの部屋に移っている。城内でもっとも見晴らしのいい一室だ。


 この部屋で窓をつたう雨のしずくをながめながら、いつしか寝入っていた。めざめたのは、室内に誰か侵入してきた気配を感じたからだ。


 甘い女物の香水。

 フォンナは婚儀の準備のため実家へ帰っている。となれば、ラ・マン家に残る女は一人しかいない。召使いなどは香水をつけないから、その人にまちがいなかった。哀愁を帯びた香りにも覚えがある。


「ご用ですか? 義母上」


 ユスタッシュが声をかけると、セブリナはひるんだ。が、じきに気をとりなおして、ユスタッシュのベッドへ近づいてくる。


「父上を思いだされたのですか? だから、父上の使っていた部屋に来た?」

「あなたと話したくて」

「では、そこでお待ちください。今、行きます」


 ユスタッシュはランプに火をつけると、それを手に、同じ室内のテーブルセットの席につく。セブリナはむかいにすわった。


「親子とはいえ、若い婦人が深夜に一人でいらっしゃるのは感心しません。人目にふれればウワサの種になります」

「あなたはもうじき花嫁をお迎えですものね。今さら醜聞スキャンダルはお困りですわ」

「私がそれほど計算高い男に見えますか?」

「いいえ。あなたはバカ正直なほどマジメなかた。そうでなければよかった」

「今さら性分は変えられません」


 セブリナの瞳はどこか硬質に、ユスタッシュを見つめている。やがて、決意を秘めた声音でささやく。


「そんなあなただから、好きになった」

「義母上」


 あくまで、ユスタッシュは母と息子という態度をくずさない。強い調子でさえぎると、セブリナは嘆息した。


「ほんとに、あのかたと結婚なさるの?」

「そのつもりです」

「愛していらっしゃるわけでもないのに?」

「貴族の結婚なんて、そんなものでしょう」


 こんなふうに二人きりで話すのは、あのとき以来だ。それなのに、なぜか、毎夜こうして語りあっていたように、たがいの考えが手にとるようにわかった。

 同じ罪を犯した二人だからだろうか?


「ラ・マン家は豊かな領地を持っています。政略結婚をする必要はないのではなくて?」

「だが、父上の遺言です」


 けっきょくはそこに帰結する。その制約だけが厳然と目の前に立ちはだかっていた。


 ユスタッシュにもわかっていたのだ。不本意な結婚をするユスタッシュを、セブリナが案じていることは。

 それでも、これから、彼女にとって、とても酷なことを言わなければならない。


「義母上。じつは私もあなたに話があります」

「わたしを修道院に追いやりたいのね? 召使いたちがウワサしています。新しい花嫁さまは若い姑を嫌って、やっかいばらいをしたいのだと」

「誰がそんなことを」

「みんなですわよ。だから、真偽をただしにまいりました」


 やはり、人の口はふさげない。どこからか、ウワサとなってもれてしまう。

 それでいえば、あのことが誰にもバレずに来ているのは奇跡だ。


「やっかいばらいなどいたしません。ただ、別の城に移ってもらうだけだ。皇都に屋敷を買うのではいかがです? むこうは華やかだし、女一人でも暮らしやすい。エルヴェが寄宿舎で暮らすときにも、母のあなたに会いに行きやすい。悪くはないでしょう? むろん、生活費はこちらで保証しますよ」


 セブリナの瞳が暗く沈む。


「やはり、わたしがジャマなのですね。それならいっそ、夫に対して落ち度があったと、修道院に閉じこめればいいのに」

「落ち度などなかったでしょう?」


 すると、セブリナは妙にキッパリと断言する。むしろ、不思議そうな顔をしていた。


「落ち度はありました。たった一度でしたが」


 ユスタッシュにとっても意外だ。それは口にしてはいけない秘密だ。それこそ、ウワサになれば、とんでもない醜聞になる。


「よしてください」

「お忘れなわけはないでしょう?」

「あなたに落ち度などない」

「わたしはあれからずっと、あなたをお慕いしています」


 ユスタッシュは机をたたいて立ちあがる。


「やめてください。十年も前だ。私があのときのあなたの罪を問うとでもお思いですか? 私自身の罪でもあるのに?」

「あのときからというのは嘘です。わたしはあなたに会ったときから、お慕いしておりました。わたしのほうが年上でもある。だから、わたしから誘ったことになるのでしょうね」

「あなたはまだ十五だった。誘うとか、そういうものじゃなかった。あれはただの通り雨みたいなもの。そうでしょう? たがいに子どもすぎたんだ」


 セブリナは皮肉に笑う。


「エルヴェはあなたの子どもかもしれないのに?」

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