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1話 旅は道連れ世は情け

「鞄よし! 中身よし! 準備万端です!」

 私——テイラー•フィッシャーは旅に出るために村の出口で持ち物を点検していた。

 ある人物にバレないようにするため、出発時間は早朝にしておいてある。

 「まずはオルクスの街に向かいましょうか」

 私は魔道具師。魔力を用い、道具に力を吹き込む存在。私はその中でもただ道具に魔力を込めるだけでなく、元となる道具も製作するタイプに当たる。

 しかし、今私がいる村では手に入らない素材が多く、作れるものには限界があった。

 特に今私が設計図を作り上げた懐中時計は、いわゆるレア物が多く市場にすらないものがある。

 だから私は旅に出るのです。時を操る懐中時計を作成するための旅へ。

 「ふぎゃ!?」

 私が決意と共に村の外へ一歩踏み出そうとした途端、背後から何者かが抱きついてきた。

 「このあたしを置いて旅に出ようとは水臭いじゃない、テイラーちゃん」

 「……なんでいるんですか、ヘレンさん」

 私は抱きついてきた彼女の手を振り解き、彼女の方に体を向ける。

 ヘレン•カシス。彼女こそ私がバレないように動いていた人物で、私の数少ない友人だ。

 「愛の力、と言いたいところだけどテイラーちゃんのお母様から無理やり吐かせたの」

 「吐かせた!? 一体何をやったんですか!」

 私はヘレンの服を掴み、彼女に詰め寄る。

 すると彼女はニヤリと笑い、意気揚々と私に彼女の犯行を説明してきた。

 「ほらあの人お酒好きでしょ? 年代物のワイン渡したらすぐに教えてくれたよ」

 「……そんなもので娘を売ったんですか!? ちょっと1発ぶん殴ってきます!」

 私は怒りの矛先をヘレンから母親に変更し、自分の家へと戻ろうとした。

 しかしヘレンはそれを妨害するために私を羽交い締めにしてきた。

 「放してください! 私はあの人にガツンとやらなきゃ気が済みません!」

 「落ち着いてテイラーちゃん! それより冒険行こ、ね?」

 「ぐぅぅぅ! 元はと言えばあなたが原因でしょうが!」

 ヘレンの力はとても強く、筋肉には多少の自信のある私でも全く引き剥がすことができなかった。

 「気にしちゃダメだよ。ほらほら落ち着いて、一緒に旅に出よう?」

 「むむぅぅぅ……まあ私は戦闘に関しては微妙ですし戦闘要員は必要です。誠に遺憾ですが同行を許可しましょう、どうせ許可しなくても着いてくるんでしょう?」

 「やったー! テイラーちゃん大好き!」

 ヘレンさんはようやく私から手を放し、バンザイをして喜んでいた。

 完全に彼女のペースに乗せられてしまいましたが、見つかった時点で既に手遅れなので諦めますか……

 「……旅の間で私に変なことしたら殴りますからね」

 私は歩きながら後ろを向き、ヘレンに警告する。

 彼女はとんだ変態で、事あるごとに私をアレな目線で見て来ます。

 なんだかんだ良い人だから友人でいるだけで、それがなかったら絶交している自信が私にはある。

 「それは保証しかねるかな!」

 ヘレンさんは自信満々にそう言い放つ。今すぐにぶん殴りたいですが我慢します。

 「はぁ……おっとモンスターですね、討伐しますか」

 私が深くため息をついて前を向くと、そこにはエル・ゴートというヤギのモンスターが私達の前に立ち塞がっていた。

 私はポケットの中から素早くナイフを取り出すと、モンスター目掛けて投擲する。

 ナイフはモンスターに命中すると青く発光し、瞬時に私をモンスターの元へと瞬間移動させる。これがこのナイフの効果だ。

 「メェェェ!」

 私は続けざまにモンスターをナイフで何回も刺し、その度に瞬間移動してモンスターを惑わす。

 「うーん、火力が足りませんね。まあ良いやヘレンさん、トドメお願いします」

 「オーケー! それじゃぶちかますねー」

 ヘレンは背中に背負っていたハルバートという斧と槍の融合体のような武器を手に持つと、一気にモンスター目掛けて振り下ろした。

 「メェ、ェェ……」

 モンスターは悲鳴をあげて消失し、そこには立派な角だけが残った。

 私はそれを片手でひょいと拾い上げると、鞄の中にしまった。

 別に使う予定はありませんが、町で売ればそれなりのお金になるでしょう。

 「テイラーちゃんそのナイフ格好良いね! いつ作ったの?」

 「つい最近です。ただこれは他の武器と併用必須ですね、単体で使う武器ではない」

 今回私がこれを使ったのは試し斬り目的。自信作だったため、最初に使うのはこの武器と決めていた。

 「確かにね、陽動に使うのが良さそう」

 ヘレンも私に同意し頷く。楽しい武器ではあるが瞬間移動に力を振りすぎている。

 「そうだ、せっかくならこれを使ってみますか」

 私は先ほど魔物から入手した角を取り出すと、魔道具作成の準備へと取り掛かった。

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