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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鎖つきメイドの真の姿を、その時までハルディは、知らなかったのです

本作は、ひだまりのねこ様主催の「つれないメイド企画」参加作品です。

 プロローグ


 目の前で動いているこの小さな者は、一体どこから来たのだろう。

 綿よりもふわふわで、絹よりもすべすべの頬を、少女は人差し指で押してみる。


 ぷにゃん。


 それは稀に母が夜会の帰りに貰ってくる、果汁を固めたものよりも、柔らかく跳ねる。


 面白くて、触り心地が良くて、彼女は何回も続ける。


 つんつん。

 ぷにゃん。


 つんつん。

 ぷにゃん。



 突然、少女に湧き上がる想い。

 それは、熱く迸るような感情だった。


 守りたいな。

 守ってあげたいな。

 ずっと、ずうっと守っていきたい。


 目の前の、この小さな命を。






 ◇村の歴史◇ side 読み人知らず 




 大陸の端にある小国は、かつては女神を奉り、その加護により豊かで幸せな国と言われていました。

 しかしながら、国が豊かになると人々は女神への感謝を忘れ、人間同士の奪い合いが起こします。

 宮殿内にあった美麗な神殿も、いつしか荒廃し、血生臭くなった王都から、女神は去ってしまいました。


 小さな国のそのまた端っこに、一つの村がありました。

 王都から離れた山間の村で、村民は五十人にも満たない小さな村です。

 信仰心の厚い村民たちは、朝な夕な敬虔な祈りを、女神に捧げておりました。


 王都から去った女神は、その小さな村が気に入って、村のはずれの泉に落ち着くことにしました。

 女神が降臨した時には、泉には見たこともないような、七色の光が空に立ち昇りました。


 村民は、王都での争乱も女神の転居も知らなかったのですが、元々信心深い人たちだったので、泉の周りを整備して、毎日毎日、お酒や野菜を捧げました。


 女神は大層この村を気に入り、この村に住む人全員に、何がしかの加護を与えることにしました。豊穣祭の夜に泉に祈れば、女神は各人に必要な、特別な加護を振る舞います。


 ただ。

 女神は気まぐれ。

 泉の水面に、ぽつぽつ順不同に文字を浮かべます。

 その文字を組み合わせて、加護を推理することは、人間に任せました。


 単に女神が、面倒臭がりだった……。

 まさか、ね。


 最初に加護を受けたのは、先代の村長でした。

 女神から与えられた文字は「こ」と「め」。


「こ、め? って何じゃ?」

「め、こ、で女の子のことか?」


 村長と副村長は、あれやこれや言い合います。

 ていうか、あと一文字、間違って付け加えられていたら、困ったでしょうね。


 結局、結論が出ない二人を哀れに思ったのか、女神は村長の掌に、一握の籾を渡したのです。


『これを育てよ』


 村長に与えられた加護は、「米」だったのです。


 こうして、村には米がもたらされました。

 米以外にも、たくさんの自然の恵みが与えられました。

 いつしか小国のはずれのこの小さな村は、女神にちなんでドラディエス(女神の村)と呼ばれるようになりました。


 ちなみに女神は、今後加護を与える時には、三文字以上の単語にしようと思ったのでした。


 それから幾星霜。

 王都は王位継承権争いが激化。

 互い有力な貴族を暗殺し、粛清の嵐が吹き荒れます。


 しかし、女神の坐す村、ドラディエスには、遠い世界のお話です。

 村では四季折々の野菜を、秋にはコメを収穫し、村民は戦や争いとは無縁の日々を送っているのでした。


 でした、が。


 王都から、二人の子どもが疎開してきたのです。

 折しも秋深く、村の収穫祭の頃です。


「僕はハルディ」

「わたくしは、ミーナ」


 ハルディという少年は、六歳か七歳。

 ミーナという少女はそれよりちょっと年上。九歳くらいでしょうか。

 姉と弟、と思いきや、ミーナは言いました。


「わたくしは、ハル様付のメイドです」


 二人ともボロボロの衣服でしたが、どこか上品な子どもたちでした。



 どう見ても訳あり。

 とはいえ、ドラディエスの村民は、困っている人には手を差し伸べてしまう気質です。

 ましてや、二人とも幼気(いたいけ)な子どもです。

 村長は二人を、泉にほど近い空き家に、住まわせることにしました。


 その夜の豊穣祭。

 村長に促され、二人も泉の女神に祈りを捧げます。


 まずはハルディ。


 女神からの加護は、『くくる』でした。


「ほうほう。なにかをまとめる能力じゃな」


 村長は目を細めます。


 次にミーナです。


 浮かんだ加護は、『くさりつき』です。


 村長の瞳が一瞬だけ、ほんの一瞬翳りました。

 すぐに元の表情に戻ると、村長はミーナに告げました。


「鎖を。いつも鎖を付けておくと良いだろう」


 そして鎖の先に錠を付け、鍵をハルディに渡しました。


「これを持ってなさい、ハルディ。それがミーナの為であり、女神の御意思だ」




 それから数年後、物語は動き出します。




 ◇メイド心得の条◇



 村のはずれの泉の畔で、今朝もハルディは素振りをしている。


「男子たるもの、剣を振れなくてどうします!」


 メイドのミーナの叱咤が飛ぶ。


 ミーナはハルディ付のメイドである。

 ミーナの母も、ハルディの母付のメイドであった。


 ミーナの母は、メイドの心得をミーナに教えていたのだ。



『メイド心得の条その一』


 男子たるもの、世界一の勇者たれ。メイドはその成長を助ける者なり。



 ハルディは素直にミーナに従って、剣の腕を鍛える。

 元々、剣の修練は好きだった。

 物心ついた時、最初に剣を教えてくれた人は、今はもういないけれど。



『メィド心得の条その二』


 メイドはアメとムチとを使い分けよ。


 ハルディの稽古が終わると、ミーナは温かいミルクと、エッグパイを用意する。新鮮な野菜の盛り合わせもつく。

 ミルクは村長の飼っている牛の、乳しぼりを手伝って、毎朝ミーナが貰ってくる。

 借りている家の周囲で、放し飼いにしている鶏が、毎朝卵を産んでくれる。


 ハルディの身体を十分に成長させるために、牛乳と卵は毎日食べられるようにミーナは手配している。


「美味しいね! 今日も美味しいよ! ありがとう、ミーナ」


 ハルディの言葉に、ミーナの頬は薄く色付くのだが、表情には出ない。

 至って冷静にミーナは言う。


「ハルディ様のお体は、あなた様のものだけでは、決してないのですから」


 食事後は勉強である。

 読み書きや算術、そしてこの国の地理やら歴史やら、ミーナが持っている全ての知識をハルディに伝授する。


 午後は少しばかりの自由時間がある。

 村の中で、ハルディと同じくらいの年齢の、男子二人と一緒に遊ぶのである。


 一緒に遊ぶ男子は、カウラとオイセア。

 カウラは『ねこ鳴き』、オイセアは『(くちばし)』という加護を持っている。

 どんな加護かは、よく分からない。




『メイド心得の条その三』


 メイドたるもの、主人に心情を読まれてはいけない。


 ミーナはいつでもツンツンしているように見える。

 カウラとオイセアは、キツメの表情で口調も厳しいミーナを怖がっているようだ。


 村のおばさんたちは、ミーナによく言っている。


「あんた、もっと笑えば可愛いのに」


 もっとも、村長以下、村の役職付の三人の爺さんたちは、ミーナの心根を分かっている。


「ミーナちゃんは、いっつも一生懸命だのう」

「どう見ても、ミーナちゃんはハル坊を心底愛しているからねえ」

「あの二人は、どっかの貴族の御落胤あたりと、その御付きだろうしな」


 伊達に年を取ってはいない連中である。

 それなりに慧眼。


 村長は、山羊のようなあごひげを撫でる。


「二人とも、煩わしいことに、巻き込まれないといいのだが……」





 ◇村の歴史◇ side 読み人知らず 



 それから七年ほどの月日を越え、二人はすくすくと育ちました。

 ハルディは十四歳、ミーナは十六歳になりました。

 ハルディは、村に来た時の骨だらけだった体が筋肉に覆われ、身長もぐっと伸びました。

 赤みを帯びたブロンドの髪と、湖底を思わせる深い青の瞳は、王都のやんごとなきお立場の方を彷彿とさせます。


 ミーナは黒髪を肩で切りそろえ、真っ白なエプロンを着て、いつもハルディの二歩後を歩いています。笑顔でハルディが振り返っても、相変わらず顔色一つ変えません。

 ミーナの首には、いつでも細い鎖が巻かれています。

 きっと鎖の鍵は、ハルディが持っているのでしょう。


 ハルディの友だち、カウラとオイセアも、ミーナから教育を受け、いっぱしの側近顔になってきました。

 今では二人とも、ハルディの剣の稽古の相手役になっています。



 折しも春先の種蒔きの時期。

 村長が、泉の女神に夕刻の祈りを捧げていると、突然啓示が降りました。


 ――警告! 警告! 村に危険が迫っているぞ!



 地響きが轟きます。



 ◇その素性◇



 村長が祈りを捧げている、まさにその時である。一頭の馬が、村に駆けて来た。

 村に続く道は一本だけだ。

 何事かと、村民は村の入口付近に集まって来る。


 馬からは、鎧を着た一人の兵士が、転がるように地面に降りた。


「お迎えに、お迎えに上がりました! ハルディ殿下!」



 わらわら村民が兵士を取り囲むと、少し遅れてハルディとミーナが現れた。

 ハルディの姿を見た兵士は、涙を流さんばかりに跪く。


 ミーナが低い声で言う。


「貴殿は、サーリア妃の護衛騎士でありましたね。現状の報告を」

「はっ! 王宮では王妃が追放、現王太子廃嫡となりました。したがって継承権第一位は、ハルディ殿下のものとなり、大至急王都への御帰還をお願いいたしたく存じます」


「ほおほお、ハル坊は王子様だったかい」

「お上品だったもんねえ」


 兵士の話に、あまりびっくりもしない村民であった。


 ハルディが跪く兵士の手を取ろうとした、その時である。

 地鳴りが聞こえる。

 夕暮れの空に、黒雲が沸く。


 村長と副村長がヨタヨタと走って来る。


「あああ、これは!」


 兵士が絶望的な声を上げる。


「王妃様、いや王妃であった方が、ハルディ殿下の居場所を知ってしまった!」


 咆哮が聞こえる。


「女神様のご神託は、これかい」

「ありゃりゃ。こりゃあ、魔獣だな」

「おーい。カウラとオイセア。出番じゃ」




 ◇戦い◇



 カウラとオイセアは、ハルディの前に進み出る。


「ここは俺らに任せてよ、ハル様」

「わかった。無理はするな」


 村の手前にぞろりと揃った魔獣たち。

 赤い眼と黒の体毛を持ち、馬よりも大きな体躯で咽喉の奥をグルグルと鳴らしている。

 二十体以上の魔獣たちの後ろには、騎馬と歩兵が十体ずつ構えている様子がうかがえる。


 カウラは、足音もたてず、そろそろと魔獣に近づく。

 細身の体に力技は感じられない。

 魔獣たちは前足で地面を引っかき、戦闘体勢に入る。


 魔獣の咆哮が一声高く上がる。

 一斉にカウラに向かって駆け出そうとした瞬間であった。


「ニャオーーン!!」


 魔獣の咆哮を蹴散らすかのような、カウラの鳴き声が響く。

 魔獣たちは背中が震え、次々と平伏していく。


 これこそが、カウラの加護、『ねこ鳴き』である。

 四足の肉食獣は、カウラの鳴き声に従わざるを得ない。


「にゃあにゃあにゃあ(いいからお前ら、森に帰れ)」


 魔獣たちは踵を返し、走り去っていった。

 しかし、まだ残っているものたちがいた。


 シューシューと毒を吐き出す、這いずるものだ。

 大蛇である。三体もいる。

 鎌首を擡げ、ずるずると村に迫る。


「へっへっへ。今度は俺の番だな」


 木の棒を一本、肩に担いだオイセアが、大蛇を見据える。

 大蛇は長い舌をチロチロと見せながら、オイセアに向かって跳ねる。


 トーン!


 自分の背丈よりも高く飛び上がったオイセアは、木の棒の先端を大蛇の頭部に振り落とす。

 棒は鋼のような鋭さで、大蛇の頭を次々と潰した。


 オイセアの加護『嘴』は、空を舞う猛禽類と同じである。


 あっという間に、魔獣の戦列は一掃された。


「さすがじゃ」

「まっこと、女神様の加護とは素晴らしいものだ」

「でもまだ、兵隊さんたちは残っておるぞ」


 そう。残った騎馬隊と歩兵隊は、槍を構えて村に突撃を開始した。


「ありがとう、カウラ、オイセア。下がってくれ」


 ハルディは、剣を構える。


「いいえ、ハルディ様。あなたも下がって下さい!」


 ハルディの前に、ミーナが歩み出た。



 ◇加護の真実◇



「止めろミーナ! 相手は兵士。丸腰のお前では無理だ!」

「いいえ、ハルディ様! これは『メイド心得の条その四』なのです!」



『メイド心得の条その四』


 メイドはいかなる時でも、主人の命の盾となるべし。



 そう。

 赤ん坊だったハルディを初めてみた時に、ミーナは誓った。


 守ってあげたいと。

 何としてでも。

 自分の命に代えてでも。


「鎖を解け、ハル坊!」


 後方から村長が叫ぶ。


「えっ? 鎖?」

「いいから(はよ)う!」


 ハルディは慌てて、ミーナの鎖の錠に鍵を挿す。


 カチリ。


 鎖を解いた瞬間、ミーナの体が紅く燃え上がる。

 それは神々しくもあり、禍々しくもある赤い光であった。


「ハルディ様。わたくしに命じて下さい!」


 ごくりとハルディの喉が動き、乾いた唇からミーナへの命が飛ぶ。



「蹴散らせ! 敵を蹴散らせ、ミーナ!」



 ミーナは迫りくる槍を躱し、飛び上がる。

 そのまま槍の穂先を蹴り、兵士の顎を打ち砕く。

 相手の槍を奪い取り、槍を旋回させると、一瞬にして兵士たちの首筋が朱に染まっていく。



 圧倒的なミーナの戦闘能力に、ハルディは言葉も出ない。

 何時の間にか、村長がハルディの隣にいた。


「す、すごい……」


「これが、ミーナちゃんの真の加護だからな」

「え、村長。今、なんと……」


 ミーナの加護は『鎖付』だったのでは?


「いや。『くさりつき』と読んだのは、わしの勝手な判断じゃ。

 本当は『さつりくき』即ち

 殺戮鬼だったのだ、次期国王よ!」



 ◇加護の発動◇



 殺戮鬼(さつりくき)


 その加護の真の名に相応しく、ミーナはあっという間に歩兵全員を葬り去る。

 すると、騎馬隊の真ん中から、隊長らしき者が現れた。

 隊長は、馬上に一人の女性を乗せていた。


 馬上の女性は、夕陽に染まる金髪を持ち、青い瞳をこちらに向ける。

 誰かに、似ている。


 その女性の姿を見た、ミーナが叫ぶ。


「サーリア様!」


 隊長は文字通り、上からの目線で言い放つ。


「その通り。サーリア妃だ。ハルディ殿下の母君でもある」


 隊長は細身の剣を抜き、サーリア妃の首筋に当てる。


「聞け! 皆ども。正当な王位を覆そうとする、不埒な輩は成敗するのみ。妃の命が惜しければ、降伏せよ!」


 サーリア妃は猿轡をかまされ、イヤイヤするように首を横に振る。


「やめろ! 母上を放せ!」


 剣を捨て、駆けだそうとするハルディを、村長らは止める。


「加護を信じろ! ハルディ殿下」


「降伏せぬか。仕方ない。構えよ」


 騎馬隊兵士らは、弓を構える。

 キリキリと弓を引き絞る音がする。


 ミーナはハルディを守るために立ち尽くす。

 間に合わない。

 人質を取られていては、騎馬隊を殲滅することは無理である。


 せめて飛んで来る矢から、ハルディ様を守らなくては。



 それが、メイドの心得なのだから。



 風を切る音と共に、前面から無数の矢が向かってくる。

 その全てを、ミーナは自身の体で、受け止めようとする。


(くく)れえええええ!!!」


 突然、ハルディが叫んだ。

 ハルディの加護、『くくる』を発動させたのだ。


 ハルディの叫びと同時に、空中には大きなリボンが現れた。

 そのリボンは、飛んで来た全ての矢を、包み込んで括った。


「な、なんだと!」


 隊長も矢を穿った兵士も、信じられないものを見て動きが止まった。

 その隙を、ハルディは突く。


「反転!!」


 空中のリボンが解かれる。 

 括られていたはずの矢は、くるっと向きを変え、騎馬隊兵士へと飛んで行く。

 兵士の肩へ、足へと矢は刺さる。


「ぐわっ!」

「ギャッ!」


 隊長の両肩も打ち抜かれ、彼はそのまま落馬した。

 馬は暴走する。サーリアを乗せたまま。


 カウラがピュッと口笛を吹く。

 すると馬は村の入口まで、ゆっくりとした歩みでやって来た。


「母上!」


 馬から降りたサーリアは、走って来た息子を抱きしめた。

 兵士たちは敗走する。


「深追いするな!」


 ハルディはミーナに命じた。


 ハルディの元に戻ったミーナは、サーリアの前で、跪く。


「よく、よく、いままで生きていてくれました」


 サーリアは、二人とも抱きしめた。

 ミーナの目から、涙がこぼれた。

 母を亡くしたあの日以来、枯れてしまっていた涙であった。



 夕陽は山頂に、いまだ輝きを残していた。

 三人の抱擁は、長く続いた。




 ◇村の歴史◇ side 読み人知らず 



 その後、サーリア妃はしばらくの間、村に留まっておりました。

 泉の女神に、深く祈りを捧げるために。

 元々、聖女だったサーリア妃は、国王の第二妃となりました。

 何度も神殿の修繕と、王族たちの女神への祈念を、王に進言していたのです。


 王がようやくその気になった頃、王宮内には不穏な影がちらつくようになります。

 正妃と、正妃の実家である公爵家が、蠢き始めたのです。


 王が寵愛する第二妃とその御子のことを、正妃は嫌っておりました。

 正妃と公爵家は、サーリア妃を幽閉し、御子であるハルディ殿下に刺客を送り続けました。


 ハルディ殿下を守って、サーリア妃付の侍女、即ちミーナの母は亡くなりました。

 亡くなる前に、ミーナの母は手配をしていました。

 時が来るまで隠れ住むことの出来る、ドラディエス村への道程を。


 さて、泉の女神は、聖女サーリアの願いを聞き入れました。

 聖女の願いとは。


 この国が平和でありますように。

 この国が豊かでありますように。

 全ての国民が、幸せでありますように。


 そう、この村、ドラディエスのように……。



 サーリア妃とハルディ殿下、そして侍女のミーナは王宮に戻ります。

 カウラとオイセアも付いて行きました。


 その後、荒廃した王都は復興し、人民は心安らけく、豊かな暮らしを手にします。

 ハルディ殿下は国王となり、ミーナはハルディを支え続けるのです。

 真の加護の力を発揮することは、その後はほとんど、なかったようです。


 (後日加筆)たまに、あったかもしれません。


 侍女として?


 いえいえ。

 陛下となった、ハルディの妃としてです。

 王妃教育を受ける機会はなかったですが、ミーナには、サーリア妃から手渡された、『妃の心得の条』がありますので大丈夫です。……多分。



 二人はお忍びで、たまに村にやって来ます。

 勿論、カウラとオイセアも一緒です。



 了

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました!!

誤字報告、助かっております。

感想、レビュー、ブックマーク、評価の★、イイね、その全てに感謝申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  すごく面白かったです!  女神の加護による力の秘密や、その文字に関する謎が明かされていく展開にドキドキワクワクいたしました。 [一言]  ミーナ、格好いいですね~。 『メィド心得の条』に…
[良い点] 「つれないメイド企画」から拝読させていただきました。 どことなくユーモラスな女神様と村人たち。 テンポの良い展開に、痛快なハピエン。 魅力的ですね。 まさに高取様の作品です。 [一言] ご…
[良い点] 女神様の加護がすごいです。これまで女神様を祀って異村人たちのおかげですね。 くさりつきは、聖闘士☆星矢のアンドロメダ瞬の技かと思いした。 くくるは、短歌の『水くくるとは』から、水を操る能力…
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