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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期
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錬金術とは?

 美容の授業でドッと疲れた。魔法もいっぱい使ったし、この世界の子どもの扱いの軽さに精神的なショックも受けたからだ。

「私は裁縫の授業だけど、ペイシェンスは錬金術なのね」

 マーガレット王女も慣れない髪のセットでお疲れのようだ。

「ええ、何だか変化に先生達も準備不足の様ですわね。美容の授業、辞めますか?」

 家庭医学は退屈かもしれないけど、みっともない姿になるのは避けられる。

「いえ、家庭医学で履修内容に変更があったら怖いわ。お互いに診断し合うとか絶対に嫌ですからね。それに比べたら髪がぐちゃぐちゃになる方がマシだわ」

 確かにそれは避けたい。育児学で変化が無かったのは良かったのかもしれない。令嬢達が赤ちゃんの世話をするなんて危険過ぎるもの。そこは学園もゆっくり考えているのかも。子守の助手とかから始めないと赤ちゃんが死んじゃうよ。なんて考えながら、またもや不気味な雰囲気の漂う魔法使いコースのエリアに来た。ここにも変化の波は来ているのかな? 怖すぎて想像したくないな。

「おっ、ペイシェンス!」

 ベンジャミンが手招きしている。自分は窓際の1番後ろの席を確保している。やっぱり指定席みたいだね。その横に座ると、魔法陣で一緒だったブライスが前に座った。

「ペイシェンスだったっけ? ベンジャミンから聞いたけど、カエサル様に錬金術クラブに誘われているんだってね。一緒に入らないか?」

 あれ? ブライスは入ってないの?

「錬金術クラブは中等科の学生ばかりで、人数が少ないのだ。教えてやると言っても、なかなか入ってくれない。ブライスも入れと何回も言ったのに、錬金術ができなかったらとか言って入ってくれなかったのだ」

「だって出来なかったら入る意味が無いだろ。それに魔法クラブに入っているから」

 あっ、ベンジャミンの髪の毛が逆立つ。ライオン丸と呼ぼう。

「魔法クラブなんか、存在意義が無いクラブじゃないか!」

 そんな大声で他のクラブの悪口を言って良いのかな?

「おい、聞き捨てにできないぞ。変人ばかりの錬金術クラブなんか廃部の危機のくせして、偉そうな事を言うな!」

 ほら、やっぱり。席を変わろうかな?

「魔法クラブなんか、騎士クラブの下請けじゃないか。メインの活動は冬の討伐の付き添いだろ。それに近頃は騎士クラブの練習に付き合わされていると聞いているぞ」

 火に油を注いでいるよ。

「ブライス、錬金術クラブになんか入らないよな」

「いや、魔法クラブの近頃の活動が私は理解できないから……」

「そんなこと言うなよ。お前にまで辞められたら困る」

 ブライス、モテモテだね。熱心に引き止められているよ。私は退散しよう。こそっと席を立とうとしたが、ベンジャミンに捕まった。

「今年は女学生も入部するし、ブライスも入ったら廃部は免れるさ」

 えっ、廃部寸前なんですか? それに私は入部するなんて言ってませんよ。

「おい、煩いぞ! アンドリュー、席につけ!」

 あの魔法クラブの人はアンドリューなんだね。あの人もAクラスで見たことあるよ。つまりAクラスの魔法使いコースはベンジャミン、ブライス、アンドリューの3人なのかな? 少ないね。後は騎士コースと文官コースか。そんなものかもしれないな。

「錬金術を教えるロビン・キューブリックだ。錬金術は魔法の最高傑作だと思うぞ。何故なら、魔法は魔法使いにしか使えないが、錬金術で作った魔道具は魔石さえあれば、魔力の無い人でも使えるからだ。君達は貴族で魔法を賜っているが、それがローレンス王国の極一部だとわかっているか? さぁ、錬金術を学ぼう」

 キューブリック先生の熱気あふれる授業だ。でも、錬金術は魔法陣が無いと話にならないみたい。そこはカエサルに感謝しよう。

「春学期は1番よく使われている灯の魔道具を作るぞ。これが作れたら、食べるのには困らないから頑張れ」

 食べるのに困らないのは嬉しい! 頑張るよ。

「教科書を開け、先ずは理論を教えるぞ。その後で実践だ」

 それからはキューブリック先生の熱い授業が続いた。

「これで灯の魔道具の作り方は分かっただろう。さぁ、作ってみよう。前に材料を取りに来い」

 できるか不安だけど、材料を持って席に着く。

「ペイシェンス、分からなかったら私に聞け」

 ベンジャミンが親切に言ってくれるけど、勧誘目的なんだよね。

 灯の魔道具は、前世の科学の夏休みセットみたいだ。

 灯の魔法陣に魔石を乗せ、スイッチをセットして、ここで灯が点くかチェックする。

「あっ、灯が点いた」

 そして、カバーを取り付けて出来上がり。これって、魔法陣が大切なんじゃないの?

「おっ、ペイシェンスもできたか、やはり錬金術クラブに入るべきだな」

 ベンジャミンの勧誘はスルーする。

「でも、錬金術といっても、材料を組み立てただけです。誰でも灯の魔法陣が有ればできるでしょ」

 そんな事を話していたら、上からキューブリック先生の熱気溢れる声が降りて来た。

「その通りなのだ。だから、灯の魔法陣をいっぱい書けたら、食うに困らないのだ」

 さっきと微妙に言っている事が違う。

「だが、そのスイッチやカバーを作るのにも錬金術は使うぞ。勿論、その材料は金属細工職人やガラス職人に作って貰ったのだが、その前の魔道具を作り出す段階は錬金術の見せ所満載だ。どうだ面白いだろう」

 そうか、大量生産のラインにのせたら、錬金術で作るより職人に作らせた方が良いんだね。

「先生、私はその前の段階ができるかわからないのです」

「そうか、では錬金術クラブに一度来てみなさい。カエサルなら教えてくれるだろう。授業は、順序だてて教えなければいけないからな」

 キューブリック先生、やたらと錬金術クラブを推すな。

「キューブリック先生、錬金術クラブの顧問だからといって、授業中に学生を勧誘しないで下さい」

 あっ、魔法クラブのアンドリューから文句が来たよ。

「そうだなぁ。では、ベンジャミンとペイシェンスは飛び級だ。1年の授業は組み立てばかりでつまらないだろう。他の皆は、さっさと組み立てろ。このくらい目を瞑ってもできるぞ」

 アンドリューは何か言いたそうだけど、まだ組み立てもできていないので座って作業を続けた。アンドリュー、魔法陣のクラスでは見なかったよね。錬金術と一緒に取らないと無駄になるの、ベンジャミンもブライスも教えて無いのかな? それか、他のコマで取っているのかもしれない。

 マナーと錬金術、飛び級したけど初等科と違って同じ時間じゃ無いんだよね。また時間割を考えなきゃいけないんだ。

ペインシェンス4年時間表(飛び級後)


月曜 外交学 世界史 錬金術2 ?

火曜 地理 外国語 裁縫 織物

水曜 経営学 魔法陣 ? マナー2

木曜 行政 料理 習字 染色

金曜 法律 経済学 刺繍 ?

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― 新着の感想 ―
[一言] とんとん拍子で修了証貰ってるのに暇を埋めるかのように次々と増えてくなーw
[気になる点] すごい勢いで飛び急や終了証書貰わないと、過労死しそうでふ…
感想一覧
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