面白い授業を受けよう
寮に帰ってマーガレット王女と話し合う。
「キャサリン様達は音楽クラブを本当に辞めて良かったのでしょうか? マーガレット様、圧力を掛けたりされなかったですか?」
失礼かもしれないが、キチンと聞いておかないと音楽クラブを続ける気になれない。
「まぁ、人聞きの悪い事を言わないで。私は学友から外れて貰うと言っただけよ。それでキャサリン達は怒って『なら、音楽クラブも辞めますけど良いのですか?』と私を脅したの」
音楽ラブのマーガレット王女の弱みを突いたんだね。でも、音楽愛の深さを読み間違えたみたいだ。
「そんな打算的な気持ちで音楽クラブを続けて欲しくないと言ったら、社交界の方が大切だとか色々と今までの文句もいっぱい言っていたわ。本当に私って人を見る目が無いのだとガッカリしたのよ」
そこから2人で時間表を作り直す。私はルパート先輩から貰ったメモを参考にした。もう月曜と火曜は授業が終わっているから、ルパート先輩を信じて履修届を出すしかない。
私はこんな感じにしていたけど、マナー2にしなくてはいけないんだね。
月曜 外交学 世界史 マナー ?
火曜 地理 外国語 裁縫 織物
水曜 経営学 魔法陣 美容 錬金術
木曜 行政 料理 習字 染色
金曜 法律 経済学 刺繍 ?
マーガレット王女は染色と織物は無理だし嫌だと言われるので、習字と刺繍を増やしたけど、馬鹿らしい育児学ともう1つ選択科目を選ばないといけない。
月曜 国語 育児学 マナー ?
火曜 家政数学 外国語 裁縫 美術
水曜 古典 ? 美容 ?
木曜 魔法学 料理 習字 魔法実技
金曜 歴史 ? 刺繍 ?
「家政数学は2コマいるわ。簡単だと言われていたけど、かなり履修内容の変更があったみたいなの。年間の予算配分とか先輩達は作った事が無いと騒いでいるそうよ」
家政コースのあまりに内容のスカスカ加減にも変化が訪れたみたいだ。良かったよ。父親が職を掛けて護ったのが、あんな内容では情け無いもん。
「それと裁縫も2コマいりそうだわ。私はサボったけど、他の人が美術の時間に騒いでいたもの。縫ったドレスで青葉祭のダンスパーティに出なくてはいけないんですって。そんなの聞いてないわ!」
去年の青葉祭のダンスパーティは全員制服だった。中等科の学生も制服だったよね。それに4年の課題は確かワンピースだった。ドレスは5年、ロングドレスが6年の課題だった筈だ。
「それは皆様大変ですね」
「もうペイシェンスったら余裕なのね。裁縫が得意なのは知っているけど、ドレスなのよ。それも自分で着なくてはいけないのよ」
ダンスしてて、縫い目が解けたら大惨事だね。
「裁縫と家政数学は2コマですか……で、後の選択科目は栄養学か家庭医学ですね」
時間割表と睨めっこしながら決める。どちらもどっちに思える科目だからだ。
「水曜の栄養学にするわ。金曜の家政数学を取らなくてはいけないもの。水曜の4時間目に裁縫の2コマ目を入れるわ。3コマ必要になるかもしれないわ」
やっと時間表が決まったので紅茶を淹れて飲む。
「ペイシェンスは本当に錬金術や魔法陣の授業を取るのね。魔法使いコースは変人が多いの。天才もいるそうだけど、王宮魔術師とかになる人は極一部だそうよ。変な学生に引っかかっては駄目よ」
その変な学生とはカエサルのことだろうか? あっ、音楽クラブを辞めると言ったけど、辞めてないんだ。嘘ついたみたいで、心がザワザワするよ。
「それにしても『別れの曲』は素敵だったわ。譜面は書いているの?」
新譜の要求をされた。それは良いけど、側仕えを辞めないでと言った時、なるべく自分で起きると言ったのを忘れてないでしょうね。
「明日からご自分で起きられるよう頑張って下さいね」
マーガレット王女は『えっ!』って顔をした。
『カラ〜ン、カラ〜ン』
「ペイシェンス、夕食よ。まぁ、努力するわ」
あっ、誤魔化したな。でも、努力する気持ちは一歩前進だ。今はそれで良いとしよう。
水曜の朝、一応は起きようとされたみたいだ。ベッドの上でぼんやりしたマーガレット王女に生活魔法を掛けて起こす。そして紅茶を飲んで貰う。
「夜、早く寝たのよ。でも、同じだわ」
髪を結い上げて、片側に巻き髪を下ろしながらマーガレット王女の努力を聞く。
「今朝はベッドの上で座っていらしたもの。少しずつですわ」
努力を褒めないと駄目だよね。段々この髪型にも慣れてパパっと出来上がる。
「ペイシェンスは美容も飛び級しそうね。同じ授業を受けられないのは寂しいわ」
そうだよね。学友を切ったんだもの。でも、取り巻きはいっぱいいる。中には少しはマシな学生もいると思いたいよ。
朝食を2人で食べていたら、キース王子が合流した。ああ、あの罵倒を聞かれたのは恥ずかしいよ。
「昨日は失礼いたしました。上着を貸して下さり、ありがとうございます」
お礼は言っておくよ。
「そんなのは良いのだ。それよりペイシェンスはもっと体力をつけた方が良いぞ」
私の失言レーダーは『亀よりものろい』と言いそうだと察知したけど、キース王子は口を閉じた。少しは成長したみたい。良かった。
「昼食は姉上と2人で食べようかと思っているのだが、ペイシェンスは別のテーブルにするか?」
兄弟の食事に私を強制参加させるのは気の毒だと思ったんだね。それなら下の学食で食べられるかな? ラッキー!
「まぁ、ペイシェンスは私の側仕えよ。一緒に食べるわ。それと貴方の学友も一緒に食べましょう。5人で食べたら良いのよ」
マーガレット王女はキース王子と2人きりの食事は拒否した。姉弟喧嘩しても仲裁役がいないものね。
「姉上の学友は?」
「彼女達は学友から外れて貰ったわ」
「それは良かったです」
あっさりとした会話だけど、王族に見放されるのって簡単なんだね。横で聞いててゾクッとしたよ。
水曜は、経営学 魔法陣 美容 錬金術だ。経営学はルパート先輩のお勧めメモに書いてあった先生なので楽しみだ。それに魔法陣と錬金術はわくわくするよ。
「ペイシェンス、お昼は上級食堂に来るのよ。下の学食で変な虫が付いたら嫌ですもの」
いくら下級貴族が多い学食でも虫なんていないよ。
「姉上に近づこうとする下級貴族に気をつけろと仰っているのだ」
あっ、そういう意味ね。まだ11歳だから、私に変な虫がつく訳ないもんね。
「本当にペイシェンスは勉強はできるけど、世間知らずね。気をつけなさい」
マーガレット王女に注意されちゃったよ。異世界は11歳でも適齢期なの? ロリコン天国なのか!
✳︎ペインシェンス4年時間表
月曜 外交学 世界史 マナー ?
火曜 地理 外国語 裁縫 織物
水曜 経営学 魔法陣 美容 錬金術
木曜 行政 料理 習字 染色
金曜 法律 経済学 刺繍 ?
✳︎マーガレット王女4年時間表
月曜 国語 育児学 マナー ?
火曜 家政数学 外国語 裁縫 美術
水曜 古典 栄養学 美容 裁縫
木曜 魔法学 料理 習字 魔法実技
金曜 歴史 家政数学 刺繍 ?




