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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第二章 王立学園中等科春学期

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もう無理!

 ダンスの修了証書は、マーガレット王女も褒めてくれた。

「ペイシェンス、頑張ったわね」

 そこまでは良かったのだが、マナーを飛び級した件でぐちぐち言われた。

「やっとペイシェンスと同じ授業だと喜んでいたのに、良いわ。私も頑張って飛び級するわ」

 マナーはまだ良い。問題は育児学だ。それと栄養学、家庭医学も同じ程度なら受けたく無い。修了証書を貰う努力もしたくない気分だ。ビクトリア王妃様が嘆かれるのも無理は無い。簡単というより時間の無駄だ。

 これらの科目は社交界デビューされる令嬢の為に簡単に修了証書が貰えるようにしてあるのだろう。割り切って修了証書を貰う方が賢い選択だ。でも、もやもやする。

『もっとマシな科目を選択するべきではありませんか?』とマーガレット王女に言った方が良いのかもしれない。なのに小心者だから言い出せない。もしかしたら栄養学や家庭医学はしっかりとした内容なのかもしれないと自分を誤魔化す。


 火曜は、行政、外国語、裁縫、織物だ。行政が法律より面白い授業でありますようにと願ったが、同じパターソン先生で退屈だった。でも育児学みたいに時間の無駄とは思わない。覚えた方が良いとは思えるもの。4年の内容は中学の公民程度だ。教科書を丸覚えできそう。


「外国語は一緒に受けましょうね」マーガレット王女に腕を組まれて、教室移動する。

 あれっ、取り巻きがいないよ。外国語は難しいから逃げたのだ。これは気楽だね。

「外国語と言うが、デーン語は我が国や隣国のソニア王国、コルドバ王国、そしてエステナ聖皇国で話されているエンペラード語の親戚だ。第二外国語のカルディナ語ほど難しくはないから安心しなさい」

 口髭の立派なダンディなフィリップ・モース先生は、なかなか面白い。各国の口調を真似して笑わせてくれる。

「エンペラード語も各国で訛りがある。ローレンス語は堅苦しい、文学に向かないと他国から非難されているが、素晴らしい文学もあるのを知らないのだろう。ソニア語は女っぽくて、なよなよしているな。女を口説くのが好きなソニア人らしく変化したのだろう。コルドバ語は荒っぽいぞ。飛んでくる唾に気をつけなくてはいけない。エステナ語は宗教臭い。一々、神様の名を付けて話すから、聞いていて内容が分からなくなる。デーン語より難しいかもしれないぞ」

 学生を笑わせて緊張を解き、まずは簡単な挨拶から練習させる。私はマーガレット王女と組んで練習する。

『はじめまして、私の名前はマーガレットです』

『はじめまして、私の名前はペイシェンスです』

『おはようございます』

『こんにちは』

 この授業は楽しいよ。単語とか覚えるのは大変だけど、やり甲斐があるもの。

 

 昼食は、キース王子を無視して、食べる事に集中しよう。少なくとも私は努力したよ。なのに空気読めないね。

「ペイシェンスはカエサルの錬金術クラブに入るのか?」

 わざわざ不愉快な話題を掘り起こすんだね。昨日、変人が寄ってくる匂いでもしているとか侮辱したの忘れたのかな。

「まだ決めていません。錬金術の授業を取ってから考えます」

 これで、この話題はお終いだよ。私は食事に集中するからね。なのに、諦めないんだ。

「錬金術の授業を受けるのは本気だったのか?」

 人の授業に文句を付けないで欲しいよ。

「ええ、受けて錬金術ができるかどうか試したいと思っています」

 あっ、キース王子が何か言い出すよ。失言レーダーが稼働した。去年1年間、リチャード王子を怒らせていたから、察知できるようになったんだ。

「もしかしてカエサル目当てなのか? バーンズ公爵家は裕福だそうだ」

 馬鹿じゃない! と睨みつけた。クスクスと忍び笑いがする。3人が私を笑っている。ああ、この席で食事は無理だ。

「マーガレット様、気分が優れませんので失礼致します」

 お子様の言う事だから、軽くいなしたら良いのは分かっている。でも、私も思春期でホルモン全開なんだよ。それに、ご学友達とも一緒にいたくない。

 なるべく優雅に立ち去る事に神経を集中させる。後ろで騒いでいる学友達やキース王子は無視するよ。

 階段を降りて、庭に行く。寒いけど、ここなら見つからないからね。

「もう無理だ! マーガレット王女の側仕えは嫌だ。朝起こすのとか、音楽フェチな事ぐらいは良いよ。でも、あの取り巻き連中は大嫌い。それに意味がない授業を受けるのも嫌だ」

 寒い中で叫ぶ。

「青葉祭でも騎士クラブの男子目当てでマーガレット王女を放ったらかしにしたし、友だちぶっているくせに寮に入りもしない。それに難しい外国語は一緒に勉強しようともしない。きっと、マーガレット王女の学友になったのも、良いところに嫁に行く為に有利だとしか考えていないんだ。大嫌い!」

 叫ぶだけ叫んだら、スッとした。キース王子の失言に腹が立ったのは事実だけど、本当は自分に嫌気がしていたのだ。

 ハッキリとマーガレット王女に言おう。側仕えを続ける条件として、私は自分の授業は自分で決める。そして、尊敬できない学友との付き合いはしない。そう、初めから寮生活だけの側仕えだったのだ。マーガレット王女が彼女達と一緒にいたいなら、いれば良い。私はいたくない。

「音楽クラブも辞めよう」

 音楽クラブは嫌いじゃないけど、あの3人と一緒は嫌だ。寮だけの側仕えに戻して貰おう。昼食も下の食堂の方が気楽だ。顔をバンと叩いて気合いを入れる。

「あっ、お腹空いたな……下の食堂で食べたらいけないかな?」

 前菜の途中で席を立ったのだ。つまり、ほとんど食べてない。お腹がグウグウ鳴っている。格好悪いな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 叫んだら聞かれていますわよね?ペイシェンス
[良い点] やっと切れたかー。 いくら前世の記憶があっても転生した身はまだ子供ですもんね。 [一言] ちゃんと場所を移して爆発したペイシェンスはやっぱり偉い。 叫んでスッキリしたおかげで状況が整理でき…
[一言] 穏やか通り越して事なかれ主義すぎてめっちゃモヤモヤしてたので、あ、とうとうキレた!と喜んでしまいました。普段怒らない人を怒らせると怖い(笑 この調子で王子にもそろそろ苦言が欲しいところです。…
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