グレンジャーホテルで話し合い
小会議室での話し合いは、ホテル関係のは簡単に済ませた。
食事を取った後や泊まってからの方が改善案が出やすいからね。
でも、モンテス氏とは領地全体の事を話し合わなくてはいけないのだ。
これには、お父様とワイヤットとメイド長のナタリーは参加しないけど、アダムには残って貰う。
「ハープシャーで畜産業をしたいと手紙で指示されたので、何頭か牛を増やしました。それと、グレンジャーホテルを開業されるのなら、鶏も増やさなくてはいけませんね」
本当は、領民にもミルクや卵を食べさせたいけど、グレンジャー家でも前は口にできなかったのだ。
でも、グレンジャーホテルは高級路線でいく予定なので、ミルクや卵は必要だと思う。
「養鶏場の浄化はきっちりとして下さい」と言ったけど、ハープシャーのお爺ちゃん司祭は、浄化はイマイチなんだよね。
今は、グレンジャーから司祭に週一来て貰っている状態なんだ。
「開業したら、グレンジャーにも養鶏場が必要となります」
朝食には卵があると嬉しいからね。そこは、モンテス氏に任せよう。
パーシバルは、私の横で聞いていたけど、今回の目的について話す。
「モラン領の西のラグーン地方を視察したいと考えているのだが、何か知っている事は無いか?」
モンテス氏とアダムは、やはりね! って顔で頷く。私が伯爵に陞爵したのは、手紙で知っていたし、近くで纏まった王家が管理している土地は、ラグーン地方だからだ。
「それは、私よりモンテス氏の方が詳しいでしょう」
アダムは、今はホテルの開業に専念しているみたいだ。本当に人材が必要だよ!
「温泉があるぐらいしか知らないのですが、人口はハープシャーより多いみたいですね」
その温泉の調査表は、クラリッジ伯爵のライナス卿から貰っている。
「温泉は、なかなか良さそうなの。ただ開発に時間が掛かりそうだし、酷い話だけど孤児が多いみたいなのよね。もしかしたら、ハープシャーとグレンジャーで面倒をみないといけないかもしれませんわ」
モンテス氏は、ハープシャーとグレンジャーの孤児院は人数が少ないので頷く。
「何人ぐらいまで引き受けられるか、司祭に聞いておきます」
ハープシャーは、老夫婦なので手伝いの下女を雇う必要があるかもしれない。
グレンジャーの司祭は独身だけど、しっかりしているから、必要なら下女を雇いそう。
「ペイシェンス、まだ決まっていませんよ」とパーシバルが笑う。
「ええ、視察をしてから決めるのですが、孤児達が心配で……」
それと、モンテス氏とアダムに話しておきたいことがあるんだ。
「親戚のモンテラシード伯爵から、一人管理人助手を譲っていただける事になりました。新しい領地の管理人として教育して下さい」
身元のしっかりした管理人助手は二人に大歓迎された。
「それと、家政婦も必要になりますよ!」
ふぅ、それも考えなきゃね。いざとなったら、結婚した後のグレンジャー家の家政婦になって貰おうとミッチャム夫人に教育して貰っている途中のローザを……とか考えちゃう。
「ハープシャーに新しい料理助手が増えました。元はグレンジャーの宿の娘ですが、なかなか見込みがありそうです」
頭の痛い人材問題だけど、嬉しい報告に私もパーシバルも笑顔になる。
「あの食堂は美味しかったですね!」
「ええ、マッドクラブのスープは素朴な味ですが絶品でしたわ」
そんな事を話すとアダムが引き抜きたそうな顔をする。
「オープンまで日が少しあるので、エバに鍛えて欲しい料理人を帰りに連れて行きますよ」
「そうして頂ければありがたいです! エバさんに鍛えて欲しい料理人とパティシエがいるのです」
ホテルの宿泊客だけじゃなく、昼食やお茶の客も大切だからね。
特に、この世界は馬車移動だから、王都まで何回か途中で休憩が必要だ。
「モラン領へ行く途中、グレンジャーホテルで休憩しても良いですね」
「ええ、そう考える方も多いと思いますわ」
アダムは、それも織り込み済みで考えているみたい。
「馬が休む間、食事やお茶を楽しんで貰いたいですが、予約制にします」
今回の旅でも、途中休憩する宿には、予め予約を取っていた。
ふと、ウッドストック伯爵領に行く途中で、ここで休憩とか嫌だなぁと思ったけど、彼方も嫌だろうから、ノースコートホテルを選ぶだろうね。
私がマーガレット王女の側仕えになったのも王妃様に文句を言って、少しの間、王宮への出入りを禁止されたぐらいだからさ。
「モラン領の宿で休憩しているのかも? 私も領地の事は、クーパー氏に任せっきりでしたね」
パーシバルもウッドストック伯爵のやり口に嫌気がさしているみたい。
ノースコートから一気にウッドストック領は、厳しいな。
兎に角、ハープシャーやグレンジャーで休憩しないでくれたら良いよ。
別に、禁止はしないけど、歓迎もしない感じ。
「貴族の旅って大変なのね」なんて言ったら、パーシバルに呆れられた。
「言っておきますが、マーガレット王女とのソニア王国行きは、こんなものではありませんよ。どの貴族の屋敷に泊まるのか、今、外務省は頭を痛めています」
ふぅ、大人数だし、移動も大変そう。
「でも、ソフィアを見れますわ!」
花の都として名高いソフィア! ただし、恋愛が盛んすぎて、ちょっと注意も必要だし、冷め切っている王様夫妻はいただけないな。
「少しぐらいは観光もできると良いですね」
パーシバルは、大使館で仕事だろうなと溜息をつく。
「パーティばかりかしら? 疲れるわ」
「ペイシェンス? 討伐を忘れていませんか? ゲイツ様の側を離れないで下さいね。こちらとは違う遣り方みたいなので、私も出来るだけお側にいますが」
馬に乗って討伐だなんて、気が重いよ!
「兎に角、ラグーン地方を視察してから、もう一度話し合いましょう」
あまり酷かったら手を引こう! と思っているけどできるかな? パーシバルがギュッと手を握ってくれた。
きっと、本当に駄目だと思ったら、止めてくれる!




