領地に行く前にあれこれ
月曜は、やはり昨夜の婚約披露パーティーの疲れで、朝の馬の王と金の鬣の運動には参加できなかった。
パーシバルが私の代わりに運動させてくれたので、一緒に朝食は食べたいと思ったけど、やはり体力の限界!
ヘンリーは、カミュ先生に任せて、お昼までゆっくりと過ごした。
「お昼もお部屋にお持ちしましょうか?」とメアリーが心配そうだけど、十分に寝たので大丈夫。
「着替えて下に降ります」
楽なワンピースで、ロマノ大学の卒業式を終えてのんびりしているお父様とヘンリーとカミュ先生と一緒に昼食だ。
「明日は教授会ですわね。ノースコート伯爵とリリアナ伯母様に来ていただきます」
お父様も騎士戦略科の教授達との会話は苦手そうなので、ノースコート伯爵に頑張って貰いたい。
ミッチャム夫人が教授会のメニューをチェックして欲しいと持ってきたので、それを読む。
「メインはワイバーンのゲームパイなのですね。討伐の様子など聞かれると困るわ」
危険な話題になりそうな予感! 私は、騎士戦略科に転科なんかしないからね。
「では、ロマノ大学のゲームパイに変更しましょうか?」
これまでの教授会は、そちらだったのだから、良いのかな? でも、私がワイバーン討伐隊のメンバーだったのは、知っているだろうし……ケチだと思われたくない。
「いえ、もうエバは用意しているでしょう! ワイバーンのゲームパイをお出ししましょう」
慰労会を開いたし、親戚や美麗様にお裾分けしたけど、ゲイツ様の分も貰ったので、まだ十分にある。
ゲイツ様で、ドラゴンの新作料理も考えないといけないのを思い出した。
「でも、味を確かめないと……これは、保留ね!」
魔素が多く含まれていると、美味しく感じるのは分かっている。ただ、あまりに脂が多いのは、私は少しだけで十分だと感じるんだ。
天狼星もゲイツ様も南の大陸で、ステーキは食べているだろうから、手の込んだ料理にしたい。
あっ、天狼星は生かステーキが好きかもしれないけどね。犬は玉ねぎが駄目だったけど、天狼星は平気だと食べていた。
天狼星は、タルタルステーキとか好きそう! 但し、私は生肉はちょっとね!
ローストドラゴンとか、洋芥子と一緒に柚子ポン酢で食べても良いかも。
サラダの上に薄く切ったローストドラゴンを並べて食べるのも、さっぱりしそう。
あっ、しゃぶしゃぶ! どの程度のサシが入っているか、チェックしてからだよね! 赤身が多かったら、すき焼きもありだな。
保留と言いつつ、あれこれ考えちゃった。
教授会は、十二時からなのに……皆様、早く来られた。ノースコート伯爵夫妻が早めに来て下さっていて、良かったよ!
「ペイシェンス様、スレイプニルをお見せ下さい!」
あっ、こっちもあったんだね!
「第一騎士団が警護していますから……」と言葉を濁していると、ノースコート伯爵が「王家に引き渡すことになっています」と強気で断ってくれた。
やはり、ノースコートには海軍が常駐しているから、騎士関係には強い。
それと、奥様方がにこやかだけど、教授達に厳しくマナーを守らせてくれたので、意外とスムーズな食事会になった。
「ワイバーンのゲームパイです」
ワイヤットがゲームパイのワゴンを押して食堂に入ったら、拍手が湧いた。
「素晴らしい! ペイシェンス様が討伐されたのですよね!」
「是非、騎士戦略科で学んで頂きたい!」
やはりこの話題になったね。実は、お父様と事前に話し合っていたんだ。
「ええ、ゲイツ様の指導のお陰ですわ」
伝統的に騎士戦略科と魔法学科は仲が良くない。
せっかく招いた騎士戦略科の教授達には悪いけど、転科する気は無いからね!
「そうか……ペイシェンス様は次代の王宮魔法師になられるのか……それは、それで必要かもしれない! ドラゴンの活動期になっているのだから、魔法使いと騎士との連携も大切だ!」
いや、いや、それも望んでいないから! と言いたいけど、お父様とノースコート伯爵から「今日はそうしておくように」と忠告されたので、曖昧に微笑んでおく。
応接室に移動してからは、私は奥様方の接待をリリアナ伯母様とした。
お父様は、あまり会話が弾んでいなかったみたいだけど、その分はノースコート伯爵が受け持ってくれて良かったよ。
奥様達にはチョコレート、教授達にはビスケットバーの詰め合わせをお土産に渡した。
ビスケットバーは、H&G商会でも売るつもりだから、宣伝を兼ねている。
「伯父様、今日はありがとうございました」とお礼を言ったら、笑われた。
「ペイシェンスの身内だと鼻が高いから、このくらい平気だ」
「そうよ! 女の子で伯爵に叙されるなんて、凄く名誉なことだわ」
お二人には、ウィスキーボンボンとトリュフチョコレートを詰め合わせてお土産にしたよ。凄く喜んでもらえた。
さて、明日はクラリッジ伯爵家に訪問予定。何の話なのか? パーシバルは、昼食に来てくれるから、話し合ってから行く。
ウッドストック伯爵家が手放したラグーン地方の事じゃないかと思っているけど……違うのかもしれない。
しっかりしているとの噂の領地管理人さんが、何か伝えるべきだとお尻を叩いたのか?
それか、本当にリリーナに優しくしたお礼だけなのか?
パーシバルもモラン伯爵に色々と情報を調べて貰っているけど、クラリッジ伯爵とはあまりこれまで親しくなかったからね。
貴族主義者の貴族とつるんでいたけど、今は離れたみたい。
だから、特に親しい貴族がいないから、調べるのも難しいそうだ。
それと、陰謀とか画策しているのなら、外務省はお手のもので調べやすいけど、クラリッジ伯爵は、そういう事と無縁だから……。
これは、行ってみないと分からないかもね!




