パーシバルと話し合い
王妃様から注意された事で、あれこれ指示を出していたけど、パーシバルが訪ねてきてくれたので、二人で話し合えたのは良かった。
「ペイシェンス、彼方で魔物討伐に参加しなくてはいけないみたいなのです」
パーシバルは、問題なさそう。だって、外務省に勤めるけど、本当は騎士になりたかったぐらいだもの。
「ええ、私も王妃様から伺って、困惑していますの」
「乗馬が基本みたいですからね」
「そうなのです」
乗馬が苦手なのは、パーシバルもよく知っている。
「馬の王を連れて行くのは無理でしょうか? 金の鬣だけをお留守番させるのも良くない気がしますし……」
「まだ繁殖期では無いので、大丈夫だとは思います。それに、パリス王子にスレイプニルを一頭プレゼントするそうですから」
王家に譲ったスレイプニルをどうしようと私は関係ない。婚約のプレゼントなら、良いんじゃないの?
それに、パリス王子も冬の魔物討伐に積極的に参加してくれているし。見た目のバラを背負っているような容姿とは違って、結構硬派なんだよね。
「まぁ、馬の王や金の鬣を譲れと強引な事を言ったら、デーン王国がソニア王国に宣戦布告しそうですからね」
スレイプニル愛の激しいあの国ならしかねない。馬の王と金の鬣が私を主と決めているから、我慢しているだけだもの。
「でも、その事をソニア王国は理解しているのでしょうか?」
私も、知識ではスレイプニルを大切にしていると知っていたけど、あれほどの激しい愛だとは知らなかった。
「こちらに駐在している大使が本国にも伝えていますよ。王宮のホールに美しき雪号を置いているのは、各国も呆れていると思います」
あれは、やりすぎだよね。
「王妃様は、国王陛下から連絡があるだろうと仰ったけど、連れて行く方針で用意しておきます」
ふぅと溜息が出ちゃう。
「ソニア王国もドラゴンの噂と共に魔物の動きが活発になっているそうです。木の蛇の被害が激しいと、外務省でも掴んでいます」
「木の蛇!」
パーシバルの目が負傷した時を思い出して、抱きついてしまった。
「パティ、大丈夫です! あれから私も少しは強くなりましたからね!」
ギュッと抱きしめられたら、ホッとする。
「コホン!」
いちゃいちゃモードになったのに、メアリーの邪魔が入る。
まぁ、前もってパーシバルに渡そうと準備していた小箱を差し出してくる。
「ええ、こちらを……準男爵になられたお祝いですわ」
プレゼントをあげるのは嬉しいけど、もう少し引っ付いていたかったなぁ。
「ペイシェンス、ありがとう!」
早速、付けてくれる。カフスボタンって、本人だけだと付けにくい。普段は、従者が付けてくれるみたい。
だから、今回は私が手伝う! いちゃいちゃタイムだよ。
「似合っていますわ」
「ペイシェンスが選んでくれたと思うと、より嬉しく感じますね」
こんな風な話をしていると、時間があっという間に過ぎる。でも、まだ話し合わなきゃいけない事がいっぱいある。
「天狼星の件は、ゲイツ様が帰国してからだと父も話していました」
「できれば、ヘンリーとお留守番していてくれたら安心なのですが……」
パーシバルは、ヘンリーが天狼星に乗って庭を走り回っているのを何回も見ているのに難しい顔だ。
「今は、スレイプニルの為に第一騎士団が護衛をしていますが、ソニア王国に行く前に王家にスレイプニルを渡すのですよね? フェンリルに馬鹿な真似はしないと思いますが、小型化した時しか知らない者がちょっかいを出したら……天狼星は負けませんが、怪我とか大騒ぎをする愚か者もいますから」
「ヘンリーでは天狼星を抑えられないとお考えなのですね」
「ええ、ペイシェンスやゲイツ様なら、『やめろ!』と命じる事ができますが……」
「連れて行ったら、ソニア王国は嫌がらないかしら?」
「ははは、それは面白い見ものですね!」
パーシバルにしては、過激な発言だ。
「もしかして……従者に扉の前で寝させろと注意されましたか?」
「ええ、ペイシェンスも気をつけて下さいね。彼方では、寝室に乱入するのも恋の駆け引きとしてよくあるそうですから」
「まぁ! それほど乱れていますの?」
「そうされないように、用心する事が肝要なのです! それも駆け引きだそうです」
かなり外務省で厳しく指導されたのか、パーシバルの言葉にトゲが混じっている。
「王妃様にベリンダを扉の前で寝させたら? と言われたのですが、半分冗談ではと思っていました」
「私は、父上に従者を扉の前で寝させろ! と命じられていますよ。婚約破棄騒動は御免ですから」
「天狼星に寝てもらいますわ!」
「それなら、誰も突破できないでしょう!」
二人で笑い合うと、不安なんか飛んでいく。
それからは、領地でやるべき事、新領地候補の視察について、パーシバルと話し合う。
「グレンジャー子爵が一緒なのは助かります」
パーシバルだって、お父様が視察の役に立つとは考えていない。でも、保護者が一緒じゃないと、モラン館に泊まれないのだ。
ハープシャー館からだと、ラグーン地方に行くのに時間が掛かるからね。
「ええ、説得して下さったアマリア伯母様に感謝しなくては! クラリッジ伯爵との面会にも付き添って下さるし」
この件、モラン伯爵が調べてくれたそうだ。
「どうやらウッドストック伯爵は、孤児をラグーン地方に追い出しているようです」
「それって……もしかして娼館の?」
「ええ、元々ラグーン地方の厳しい年貢の取り立てが払えず売られた娘の子だからと……酷い話です!」
「人口が多いと言われていましたが、孤児も多いのですね。結構ですわ! 売られた喧嘩は買いましょう! 彼方のウッドストック伯爵領から人口が流出して、立ち行かないと泣きつかれても許しません!」
「パティ、素晴らしいです! でも、視察してから決めましょう。あまりに酷かったら、他の領地にしたら良いのですからね」
「ええ、勿論ですわ!」と言ったけど、腹が立つと冷静になれないのは良くないね。
「ははは……ソニア王国に一泡吹かせてやりましょう。木の蛇の討伐、頑張りましょうね!」
パーシバルは、気合が入ったみたい。
「木の蛇は苦手ですわ。ずる賢いのか、馬鹿なのか理解できませんし」
「そうだよなぁ!」
二人で、プッと吹き出して、笑いながら抱き合う。
「今なら、空中から攻撃できる!」
「ええ、あんな気持ちの悪い紫の毒など、いる場所が分かるだけですもの! 霧ごと切り裂いてやるだけですわ」
メアリーが、令嬢らしくない会話に呆れながらも、引っ付き過ぎだと咳払いしている。




