久しぶりの王妃様
宝石店で、私としては大散財したけど、メアリーやリリアナ伯母様的には、嫁入りの時は、もっと豪華なダイヤモンドのティアラを誂える必要があるそうだ。
「ペイシェンス自身が伯爵なのですもの!」と鼻息の荒いリリアナ伯母様。
屋敷の食堂でヘンリーとカミュ先生と一緒に食べる。
前に、カミュ先生は家庭教師だけど使用人だから、とリリアナ伯母様に注意されたけど、グレンジャー家が朝と昼はヘンリーと一緒にと決めているなら良いって感じ。
それに、カミュ夫人とリリアナ伯母様は王立学園で乗馬部で友だちだったそうだからね。
夜は、ヘンリーも別に子供部屋で食べているから、カミュ先生もルッツにサービスされて、そちらで一緒。
再来年、ヘンリーが王立学園に入学したら、カミュ先生には私の個人秘書になってもらう。
その時は、上級使用人の食堂を使うそうだ。一緒で良いのにと言ったら、ちゃんとケジメをつけませんと、と叱られた。
「ペイシェンスも、大学生なのね。私は、両親に大学に行っても良いと言われたけど……良縁に恵まれたのよ」
リリアナ伯母様、今も凄い美人さんだから、そりゃ若き日のノースコート伯爵が一目惚れしたのも理解できる。
「それに、大学で文学を学ぶのがピンと来なかったの。算数は苦手でしたから、合格できたかもわかりませんわ」
やはり、グレンジャー家は学問の家だから、女の子でも大学に行く可能性はあったんだ。
「アマリアお姉様は、ああいった方なので大学なんか! って態度でしたけど、シャーロッテお姉様は、少しの間ですが聴講生として通ったのよ。それが、今でも領地経営に役立っているみたいですわ」
ヘンリーは、マナーを守って大人の会話に口を挟まず、食べる方に集中している。
「このワイバーンのパイ、とても美味しいわ!」
「ええ、今度の教授会に出す予定です。エバが練習する為に作ったみたいですわ」
本番のは、ワイバーンのゲームパイにしたいと言うので、焼き型は作ったよ。
冬の魔物討伐の慰労会でも、大絶賛されたんだよね。
「ワイバーンのお肉、こちらにも分けて下さってありがとう。丁度、パーティを開いたので、お客様に喜んで頂けたわ」
デザートも、エバの新作! これは、教授会向けと言うより、マーガレット王女達との勉強会向けかもね。
「まぁ、とても可愛いデザートね!」
ヘンリーは、あっという間に完食。だって、大好きないちごのプチケーキだから。
下はイチゴのババロア、上はスポンジ、ピンクと白のコンビに真っ赤なイチゴ。
「今度の教授会には、可愛いらしすぎるでしょうか? 騎士戦略科の教授会なのです。ノースコートの伯父様にも参加して頂き、とてもありがたいですわ。お父様も私も、彼方方面はあまり詳しくありませんから」
「まぁ、なんて事を言うのかしら? ワイバーンを討伐し、スレイプニルの群れを捕獲し、フェンリルを従えたペイシェンスに皆様は質問したい事があると思いますわ」
「えええ、そうなのですか? 困りましたわ。天狼星に会いたいと、彼方から申し込まれたのかしら? これまで、教授会にお父様が誘っても、必要ないって態度で断られていたみたいなのに……」
「ほほほほ……今のローレンス王国で、ゲイツ様に次いで強いペイシェンスですもの。騎士戦略科に転科して欲しいのでは?」
「それは無理ですわ! 乗馬が苦手なのです」
「まぁ! あんな素晴らしいスレイプニルの主なのに? 勿体無いわ!」
乗馬クラブだったリリアナ伯母様の言葉にカミュ先生が頷く。
「せっかくのお休みなのだから、カミュ先生から乗馬を習ったら良いのよ」
「そうですわね」と大人しく聞いているけど、私には暇は無い! 朝の馬の王達の運動だけで十分な気分。
「午後から、王妃様との面会なのでしょう? これで失礼するわ」
リリアナ伯母様には、チョコレートの詰め合わせをお土産に渡す。スイーツ大好きなサミュエルが喜ぶだろう。
リリアナ伯母様を見送ったら、張り切るメアリーにお着替えさせられる。
高級な宝石店に行くので、上等なドレスを着ていたから、これで良いと思うんだけどさ。
着ていたのは、ネックレスを付ける為に、襟ぐりが大きく開いているデザインだったけど、昼からのドレスは若々しくて慎ましい感じ。
薄いピンク色のドレスだけど、襟と袖は白のサテンで清楚な感じ。
髪型も、ティアラを飾りやすいようにアップに纏めていたけど、それを解いて編み込みを使ったゆるふわ纏め髪。
そこに、半貴石のピンクの髪飾りをつけたら、超可愛い!
靴は、白のハーフブーツ。上には白のアルミラージの毛皮があしらってある。
ピンクと灰色のツイードのコートにも、アルミラージの毛皮があしらってあって……ちょっと可愛らしすぎるかも?
「これ、大学に通うにはフェミニン過ぎるわ。毛皮は取れるのよね?」
「ええ、でも大学には婚約者のパーシバル様もいらっしゃるのですよ!」
メアリーの意見も分かるけど、それでなくても女学生は少ないのだ。悪目立ちしたく無い。
「大学には黒のコートを着て行くわ!」と言ったら、ショックを受けたみたい。
「あれは喪服用ですわ! 良いです! マダム・マグノリアに通学用の服とコートを作って貰いましょう」
そう、大学では地味な男物に近い色合いの服を着て通いたい。ただし、可愛さも必要だけどね。
前世のファッションで使えそうなデザインを描いて、マダム・マグノリアに渡せば適切な服を作ってくれるだろう。
今回は、王宮に着いたらコートはメアリーに渡すから、甘々過ぎる姿を王妃様に見せる事は無い。
今回も出迎えはシャーロット女官だ。メアリーが見本の新作チョコレートを渡している。
ここで、メアリーと別れて、シャーロット女官と王妃様の部屋へ行く。
「ご無沙汰しております」と頭を下げて、お言葉を待つ。
「ペイシェンス、頭を上げて、ベネッセ侯爵夫人の横にお座りなさい」
ベネッセ侯爵夫人、あの非常識なゲイツ様のお母様とは思えない程の美貌を持つ優しいお方。
いや、ゲイツ様も黙っていれば美貌なのだけどね。
髪の色は、銀髪の伯母様に当たる王妃様にも似ているね。こちらも、毎回、驚くほどの美貌!
「ペイシェンス、伯爵に陞爵おめでとう。その忙しい時期に、マーガレットの側仕えとして、ソニア王国に同行して貰う事になって……でも、ペイシェンスほど信頼できる側仕えはいないのです」
確かに忙しい! ソニア王国に行かなくて良かったら、領地や新領地に行けるのだ。でも、そんな事は言わないよ!
「マーガレット王女様のお友だちにして頂いて、光栄です」
これが王政の下で暮らす貴族としての常識。
「ペイシェンス様、息子がずっと屋敷に通っていたそうです。ご迷惑をお掛けしました」
本当に、ベネッセ侯爵夫人は常識があるのに、育ちが悪かったのか? 前王宮魔法師のお祖父様、かなり独特な価値観があったみたいだからね。
「いえ、南の大陸のドラゴンを討伐するのに、天狼星との協調が必要だと通われていたのです」
それと、エバの料理目当て!
「ほほほほ……ペイシェンスの料理は、とても美味しいと評判ですわ。こちらの料理人も修業させているのです」
「まぁ! 羨ましい! 息子の料理人も修業させたみたいで、この前の食事会でとても美味しい料理がいただけましたのよ」
へぇ、ゲイツ様もたまには食事会とか開くんだね。




