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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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またもや閲兵式?

 今日は朝から慌ただしい。女子テントの中では、騎士チームはとっくに討伐に出かけているし、魔法使いチームも朝のビッグバード狩りに出かけるみたい。

「お嬢様……テントの前にいる大きな犬は魔物だと聞きましたが、お腹を空かせているのでは?」

 メアリーは、気が気じゃないみたい。


「ええ、馬の王(メアラス)金の鬣(グルファクシ)にも会いに行かなきゃいけないし、天狼星(シリウス)にも餌をあげなきゃ」

 少し顔を青褪めさせたメアリーに「急ぎましょう!」と食事のテントへ向かう。勿論、天狼星(シリウス)も一緒だ。


天狼星(シリウス)、お腹空いたでしょう」

 朝、少し遅くなったのを詫びる。騎士達や魔法使いの女の子達は、とっくに朝食を終えていたのだ。

 私は、少し寝坊してしまった。やはり、疲れが溜まってるのかも。それと、ロマノに帰ってからの騒動を考えて、寝つき難かったんだよ。

 去年、馬の王(メアラス)を連れて帰った時の閲兵式を思い出して、溜息が出ちゃう。


「ペイシェンス様、こちらですよ」

 ゲイツ様は、朝のビッグバード狩りはサボったみたい。

「ルーシー達の引率は?」

 確か、ビッグバード狩りに行くと言っていたような? 慎重なお爺さん王宮魔法使いは、ビッグバード狩りはさせないよね。

「ああ、サリンジャーと飛行隊のメンバーに指導させています」

 ふうん、それなら安心だね。


天狼星(シリウス)、食べなさい!」

 ゲイツ様と話している間にメアリーが山盛りの肉を持って来てくれた。

「ウウワン!」『美味しい!』

 ドラゴンの肉じゃなくても、天狼星(シリウス)は美味しそうに食べている。

 南の大陸に行く必要は無いんじゃないの?


「お嬢様」と、メアリーが私の朝食も持って来てくれた。

「ああ、御免なさい」と謝るが、メアリー的には侍女が世話をするのは当然って態度だ。

「昼食後にロマノに向かう事になりました。少し早めに食べて下さい」

「やはり、閲兵式があるのでしょうか?」

 昨夜、リチャード王子と第一騎士団長が言っていたんだよね。

「ロマノにフェンリルを連れ込むのですから、陛下の許可が必要ですよ」

 何を当たり前の事をって態度だ。


 それは、そうなんだろうけど……閲兵式って苦手。

 騎士とかは、誉なんだろうけどさぁ。

「それに、今回はワイバーンの討伐もありましたからね。ワイバーンなんて、大きいビッグバードに過ぎないのに……ドラゴンの噂で浮き足立っている貴族は安心したいのでしょう」

 ふぅ、それは少し理解できるよ。文官コースの学生とかも、ワイバーンの飛来の影にドラゴンの脅威を重ねていたもの。

「ワイバーンの討伐に参加したメンバーには何かご褒美が貰えると良いですね」

 気楽なゲイツ様だけど、ちゃんと話しておかなきゃ。


「本当に天狼星(シリウス)を南の大陸に連れて行くつもりですか? ゲイツ様だけでも十分なのでは?」

 パクパク食べている手を止めて、こちらを見る。

「私一人だと数頭のドラゴンなら討伐できますが、それ以上は難しいです。竜の谷の周辺で、少し間引く程度なんですよ。まぁ、それでローレンス王国にドラゴンが飛来する可能性が低くなったら良いなって程度です」

 うっ、それでは意味がないとまでは言わないけど、ドラゴンの脅威に晒されたままなんだ。


「数百年に一度の繁殖期になっていますからね。この五百年ほどは、ローレンス王国にドラゴンは飛来していませんが、何があるかは分かりません。少しでも討伐した方が良いと考えただけです。それに、ドラゴンは若いうちは血の気は多いけど、愚かですから」

 

「でも、天狼星(シリウス)が参加する事で、ドラゴンの討伐に影響は出るのでしょうか?」

 まだ天狼星(シリウス)は、幼いと去年は言っていたよね。

「当たり前ですよ! ドラゴンを倒せる魔物は、フェンリルぐらいしかいないでしょう。まだ天狼星(シリウス)は若いから、年老いたエンシェントドラゴンには敵わないかもしれませんが、若い馬鹿なドラゴンなど遊び相手に過ぎません」

 ううう、そう言われると……でも、美味しそうに肉を食べ終えて、ピンクの舌で口の周りを舐めている天狼星(シリウス)を見ると、やはり心配だよ!


天狼星(シリウス)、本当にドラゴンを狩りに行きたいの? 私は、南の大陸には行かないのよ」

 天狼星(シリウス)の前に跪き、もふもふの顔を両手で掴んで尋ねる。

「ワン!」『行く!』

「ほら、天狼星(シリウス)も行く気満々ですよ」

 天狼星(シリウス)の言葉を分からなくても、今の「ワン!」という即答はゲイツ様でも理解できたみたい。


「お母さんは、私の所に行っても良いと言われたのよね? 私は行かないのに、南の大陸に行っても良いの?」

 難しいニュアンスが通じるかしら? 

「ワワン!」『大丈夫!』

天狼星(シリウス)!」

 思わず抱きしめちゃった。


「ペイシェンス様、天狼星(シリウス)の事は私が護ります!」

 ゲイツ様も珍しく真剣な口調だ。それに、万が一、天狼星(シリウス)が怪我でもしたら、お母さんフェンリルがローレンス王国に突撃しそうだもんね。


 天狼星(シリウス)とのコミュニケーションは、少しずつ練習するしか無さそう。うっ、という事は、南の大陸に行くまで、ゲイツ様が我が家に来るって事なのかしら? 

金の鬣(グルファクシ)を慣れさせる必要もあるし、他のスレイプニルもどうすれば良いのでしょう? いきなり、ボスと離すのは良くないとは思うのですが、天狼星(シリウス)もいるから、学園は無理ですわ」

 ゲイツ様は、私が困っているのに笑っている。

「ラドリーに仮馬房を作らせましょう! 彼は討伐に参加していませんが、慰労会に招待すると言えば、半日で仮馬房ぐらい作りますよ」

 前庭が潰れそうな予感! でも、全てのスレイプニルを私が独占する訳ではない。半月もしたら、王宮に引き取って貰えるよね? 折角の薔薇だけど、何処か裏庭に植えて貰おう。

 

 

 

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― 新着の感想 ―
本格的な馬房を作るのならラドリーに頼むのも良いけど、一時的な簡易宿程度ならペイシェンス様が「馬小屋になれ!」からのなんということでしょうで終われるよ
本来なら、今回のスレイプニルの所有権は天狼星のマスターであるペイシェンスだよね。 ペイシェンスは領主だから、収入から王家に税金を払う必要があるけど、王家に預けてブリーダー手数料で税金を相殺できるレベル…
スレイプニルは、ペイシェンスが領地につれていきなさい 王に権利はありません
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