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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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大雪の日

 集団討伐の後始末は知らない。基地キャンプに戻った途端、回復薬を飲んで、寝てしまったからだ。

 幸い、テントの中は暖かく、ぐっすりと眠れた。


 メアリーが夕食のシチューを運んで来たので、それを食べて、また眠った。

 本当に体力がないのが辛い。馬の王(メアラス)にも会いに行けていないが、寝るしか回復の手段はない。


 朝早く目覚め、トイレに行ったが、涔涔と雪が降っている。

「大雪になりそうだわ」

 王都ロマノは、雪が降っても、人が多いから雪かきもするし、あまり積もったりはしない。

 領地のハープシャーとグレンジャーも、豪雪地帯ではない。薄らと雪が積もる程度だ。

 

「ミラー湖の雪景色は綺麗だったわ」

 ハープシャーから北に位置するモラン伯爵領は、少し高地になるし、雪も積もる事が多いみたい。

 婚約した後に訪問した際に、館の窓から見たミラー湖はとても綺麗だったな。


「お嬢様、朝食を取りに行きましょうか?」

 メアリーが身体の弱いペイシェンスを心配しているけど、寝たら回復した。

 雪で日光は遮られているけど、深呼吸して少しだけでも魔素も吸収できたしね。


「いえ、パーシバル様にも会いたいし、馬の王(メアラス)も気にかかるから、食事場所に行くわ」

 それにワイバーンの動きも気になるからね。これは、メアリーを脅かしそうだから言わないけどさ。


 女子テントの魔法使いチームや騎士チームは、討伐の後片付けにも参加したみたいだけど、元気だね。

「ペイシェンス様、大丈夫ですか?」

 私が体力がないのは、夏合宿に参加したメンバーは知っている。

 ルーシーが心配そうに声を掛けてくれた。

「ええ、寝たので回復しましたわ。やはり飛行すると、体力がかなり奪われてしまいます」

 一緒に食事場所に向かっていたユージーヌ卿も心配していたみたい。運動神経がないのも知っているからね。


「身体強化と体幹強化、それに体力強化が課題ですね。少しずつ馬の王(メアラス)と運動をしてみては如何でしょう」

 それは、そうなんだけど……前よりはかなり上手くなったとは思うけど、乗馬は苦手。

 これが読書をしろ! とか、刺繍をしろ! 絵を描け! ハノンを弾け! とかなら、何時間でもできるんだけどさ。

 苦手な事だから、ついつい後回しになっちゃう。


「ええ、パーシー様に任せっきりは良くないと思ってはいるのです」

 馬の王(メアラス)の主は私なのだし、もうちょっとは乗馬も上手くなりたい。

 それに、領地では馬車より移動が早いのは確かなんだ。


 それにしても、雪がぽんぽん降っている。食事場所に行くまででも、マントの上に雪が積もったよ。

 メアリーに、ダウンコートの上に羽織ったマントを渡していると、ゲイツ様が近寄ってくる。


「ペイシェンス様、具合はどうですか?」

 パーシバルに会う前に、ゲイツ様に捕まっちゃった。

「おはようございます。お陰様で、大丈夫ですわ」

 あっ、パーシバルだ!


「おはようございます!」

 パーシバルも心配そうに具合を尋ねてくれたけど、もう大丈夫だよ。

「朝一にビッグバードは狩りに行きましたが、流石にこの雪では回収は無理でしょう」

 ゲイツ様と一緒にビッグバード狩りに行ったんだね。


「ペイシェンス様、今日は流石にワイバーンも飛びたくないでしょう。警戒はしなくてはいけませんが、少し休憩ですね。できれば、キャベツのスープが飲みたいのですが……」

 やれやれ、討伐がないのなら、スープぐらいは作っても良いよ。それに、朝から焼肉は辛いもの。


 メアリーは良い顔はしないけど、キャベツのスープを生活魔法で時短して作る。ビッグバードの骨でストックスープを取って、ビッグボアの肉を細かく刻んで炒めて、キャベツの塩漬けと煮込むだけ。


「やはり、ペイシェンス様が作られるキャベツスープは美味しいです!」

 去年、飲んだ人は我先にスープを貰っている。

 私もパーシバルと一緒にスープを飲むよ。


「明日に備えて、今日は休憩しておいて下さい」

 つまり、明日はワイバーンが来そうなんだね。

 パーシバルも少し厳しい顔になる。


「それにしても、ガリアーニはもっと指揮する練習をしなくてはいけませんね。サリンジャー、王宮魔法使い達の訓練を厳しくしなくてはいけませんよ」

 おぃおぃ、丸投げする気だね。

「ええ、王宮魔法使い達は、少しゲイツ様に甘え過ぎだと思います。王都に戻った後も、シュヴァルツヴァルトで鍛えるように、何人かずつ派遣した方が良いでしょう」

 サリンジャーさんも結構厳しいね。


 食事が終わったから、パーシバルと馬の王(メアラス)に会いに行く。朝一に、パーシバルとビッグバード狩りに行ったみたいだけど、私は会っていないから。


「ブヒン、ブヒン!」『遅い!』と文句を言われちゃった。

「ごめんね! でも、ご褒美のキャロットケーキをあげるから」

 キャロットケーキも一切れずつパックにして持ってきているんだ。

 綺麗にして、キャロットケーキを食べたら、馬の王(メアラス)の機嫌はなおったけど、やはり少し神経質だ。


「ブヒヒヒヒン!」『馬鹿狼だ!』

 銀ちゃんが近づいているのを察知したのかな?

「銀ちゃんに魔物と遊ばないように言い聞かせなくては!」

 スレイプニルの群れを追いかけているみたいだけど、それってちょっと私的には迷惑。


 神経質になっている馬の王(メアラス)をパーシバルと一緒にブラシを掛けて宥める。

「ペイシェンス、スレイプニルについて聞いて下さい」

 ううう、これ以上スレイプニルが増えるのって、馬の繁殖には良いのだろうけど、厄介事が増えそうでちょっと嫌。 

 でも、パーシバルのキラキラ目線に負けちゃった。


「スレイプニルはきそうなの?」

 去年は、オーディン王子の勇者(アンドレイオス)がスレイプニルの群れの暴走に気づいて、王都からやって来たんだよね。

「ブヒヒン!」『来る!』

 えっ、何故か気合いが入っているんだけど?


「これは、大きな群れかもしれませんよ」

 パーシバルは、スレイプニルの群れを確保できそうだと嬉しそう。

「あのう、またあの国が騒ぐのでは?」

 プッとパーシバルが噴きだす。

「去年とは違い、今年はデーン王国の騎士は参加していません。オーディン王子が捕獲できたら、その一頭は譲るかもしれませんがね」

 そうか、でも……。

「ボスは争わないのかしら? 馬の王(メアラス)が怪我をするのも嫌ですが、他のスレイプニルが怪我をするのも見たくないですわ」

「ブヒヒン!」『負けない!』と強気の馬の王(メアラス)だけど、怪我とか困るよ。


「そこは、ペイシェンスが馬の王(メアラス)の主として、コントロールしなくては! ボス争いは避けられませんが、相手に致命的な怪我をさせる前に引き離すのです」

 パーシバルに真剣に頼まれたけど、自信ないよ。それに、銀ちゃんに言うことを聞かせる自信もない。


 大雪の中、基地キャンプに閉じ込められた私達は、明日のワイバーン戦に備えて休憩したよ。 

 ただ、課題が多くて、気持ち的には安らげなかったけどさ。






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― 新着の感想 ―
更に無茶したら、超ブラックから、限界突破ブラックになってしまう
ペイシェンス、本当に体力無いねぇ。 パワードスーツでも作って、補完するしかないのでは? マギクラフト・マイスターみたいにジュースに魔素を溶かしこむ方法が見つかれば、多少は回復力向上になるのかも。
別に銀ちゃんが魔物で遊ぶのは、問題ないと思うよ。 子供は遊びで色々学ぶから。 ただ、冬に連れて来ないように言えばいいだけだよ。
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