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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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何となく

 昼からは、私とゲイツ様は馬車で移動する事になったから、ベリンダも一緒に乗って貰う。独身の男女が馬車で二人っきりになるのは駄目みたい。

 サリンジャーさんとパーシバルは、馬で移動だよ。


馬の王(メアラス)が馬房で待っていてくれたら、五人で馬車移動でも良いのですが……少し北に行こうと思うのです」

 うん? 朝も北の方角を眺めていたよね?


「ゲイツ様、それってまた何かが暴走しているのですか?」

 怖いから、スタンピートなんて言葉は使わない。


「何となく気になるだけですが……」

 ゲイツ様もはっきりしないみたい。でも、気になるだなんて……何かあるんだ。

 ベリンダは、余計な口は開かないけど、緊張した顔だ。


 シュヴァルツヴァルトの北で馬車を止めさせた。

「うっ、寒い!」

 パーシバルは、先に馬の王(メアラス)と着いていたので、馬車から降りるのをエスコートしてくれる。


「従者が魔物をここまで引き連れて来ますが……多いですね!」

 ドドドドドと凄い音と共に従者の後を魔物の団体が暴走している。


「さぁ、討伐開始です!」

 横に並んで、魔物を討伐していく。数が多いから、パーシバルが何をしているのかなんて、気にしている場合じゃなかった。


「パーシバル! そっちの大きなビッグボアは任せます」


 えっ、あれって小屋ぐらいありそう!


「ペイシェンス様は、気を逸らさずに次々と討伐しなさい」


 ビックボアだけでなく、後ろからはビッグベアも! 熊って前世でも凶暴だったけど、こちらのはもっと怖い。


「あの金色の熊、あいつを倒しましょう!」

 金色の熊は、他のビッグベアよりも一回り大きい。

 普通の首チョッパーでは無理かも? 剣を鞘に納めて、反対に向ける。ポンメルのルビーを活用して、レーザーアタックだよ。


 赤のレーザーで金色のビッグベアを討伐した。

 でも、まだまだ魔物がやってくる。


「少し数を減らします!」

 私たちは、少し討伐の手を止める。


「北の大地から訪れる魔物たちよ。我が国の地を汚すなかれ! 怒りの鉄槌を受けよ!」

 ゲイツ様の詠唱にも慣れたよ。それにしても、空気がビリビリして身体が震えちゃう。


 稲妻が魔物たちを蹂躙していく。周りの樹々もバリバリと倒れる。

「ペイシェンス!」とパーシバルが抱き寄せてくれた。


「残りは、皆で倒して下さい。少し疲れました」

 ポケットから、チョコレートバーを取り出して、一人で食べている。あれは赤いから、ドライイチゴビスケットだね。


「さぁ、ペイシェンス様、パーシバル様! ベリンダも!」

 サリンジャーさんは、ゲイツ様を放置して、さっさと討伐を終えようと励ます。


 殆どは、稲妻にやられたけど、逸れたのもいるから、四人で討伐して完了。


 後始末は、サリンジャーさんとパーシバルとベリンダがしてくれた。

 えっ、私は? ゲイツ様と空を飛んでいたんだよ。


「ちょっと気になって……」と手を取られて空に舞い上がった。


 シュヴァルツヴァルトは、雪景色の中でも黒い森と呼ばれるだけあって、常緑樹が密集している。樹々が雪化粧して、とても綺麗。所々の開けた場所は真っ白だね。


 私が空からのパノラマに心を奪われていた時、ゲイツ様は北へ北へと進路を取っていた。


「やはり、何か来ますね!」

 シュヴァルツヴァルトのはるか向こうには、デーン王国との国境になる山脈、そしてそれが途切れた辺りは……。


「もしかして、銀ちゃん?」

 ふと、そう思った。遥かに霞んで見える山脈の途切れた向こうには北の大地が広がっていると思ったからかな?


「ペイシェンス様、銀ちゃんの気配を感じたのですか?」

 ゲイツ様が真剣な顔で訊ねる。

「いえ、あの北の大地を銀ちゃんが走っているのかな? と思っただけですわ」


 ふぅ、と大きな溜息をついて、ゲイツ様と一緒にパーシバルとサリンジャーさん、そしてベリンダと従者達が後片付けをしている現場に戻る。


「ブヒヒヒン!」

 他の馬と木の枝に繋がれていた馬の王(メアラス)が、『走りたい!』と文句を言っている。


「ペイシェンス様はもう帰っても良いですよ。あっ、パーシバルもベリンダも一緒に」

 そう言いながら、ゲイツ様はさっさと馬車に乗っているんだけどね。


 大きな山になったゲイツ様の討伐した魔物。私のは、金色の熊が目立っているけど、小山だね。ベリンダも数頭討伐している。


「パーシー様、ビッグボアの大物! おめでとうございます」

 これって、学園に寄付するのに選ばれそう。


「いえ、ゲイツ様は相手にならないのはわかっていましたが、サリンジャー様も凄いし、ペイシェンスにも負けています。頑張らないと!」

 ふふふ、偶に見せる青さが好き!


「あのう、基地は何処でしょう?」 

 爆走している馬の王(メアラス)には悪いけど、トイレへ行きたい。

 パーシバルは察して、基地に向けてくれた。よくわかるよね! いや、トイレを察した事もだけど、基地の位置がだよ。


 前世でも方向音痴だったけど、ペイシェンスも駄目だね。

 基地に着いて、私は降ろしてもらったけど、パーシバルはもう少し走るみたい。

 ベリンダは、自分の馬の世話をするみたいだけど、兎に角、先ずはトイレ! 寒かったし、空を飛ぶ季節じゃないもの。

「お嬢様! ああ、こんなに身体が冷えて!」

 暖かいお茶、そして個別包装にしたシュトーレンを食べて、ちょっと人心地ついた。


「ベリンダにもお茶とシュトーレンをあげてね。簡易暖房機が必要だわ」

 どうも私は寒さに弱い。マットの上でシュラフにくるまり、足元には湯たんぽ状態だ。勿論、お腹にはカイロ!

「お休み下さい」とメアリーに言われるまでもなく、バタンキューだった。


 夢の中で、私は中学生だった。ほぼ今の年齢? ちょっと年上になるね。受験シーズンなのもほぼ同じ季節。

 懐かしい私の部屋! あっ、凄く狭く思える。寮の部屋もここより広いからね。

 でも、快適で暖かい。エアコンと足元には電熱ヒーター。前世から寒いの苦手だったんだ。


 今年も、大物が運び込まれた歓声で目が覚めた。


「凄いビッグボアとゴールデンベアだな!」

 うん? ゴールデンベア? あの金色の熊の事かしら。


「お嬢様、もう少しお休みになられても……」

 飛び起きた私に驚いたメアリーが心配している。ベリンダも、すぐに側に来た。


「少し休んだら、楽になったわ」

 子どもの頃から、身体の弱かったペイシェンスの世話をしているんだもんね。メアリーが心配症なのも分かるよ。


「メアリー、ゆず茶が飲みたいわ」

 メアリーがゆず茶を作っている間に、前世の快適グッズを手帳に書き記す。

 魔法の暗記術があっても、ピンときたものはメモしなきゃ忘れちゃうんだもん。


 メアリーがお湯を沸かしているポットを見て、笑ってしまう。

「冷風機が作れるなら、温風機だって作れるわ!」

 電熱ヒーターでも良いけど、あれは受験勉強で机についているから、足元用なんだ。

 テントの空気を温めるなら、温風機だよね!


 ゆず茶を飲んだら、売店だ! 今回は、ベリンダが護衛しているから、他の冒険者に絡まれる事もなく、札と折れた剣二本、それと空いた木箱を二個貰ってきた。

 荷物は、メアリーとベリンダが持ってくれる。私だって折れた剣ぐらい持てるけど、メアリーが許可したのは札だけだったよ。


 冷風機は、錬金術クラブで作っている。魔法陣を冷たくするのから、暖かくするに変えるだけだよ。

 

 ファンを錬金術で作るのに、かなり魔力を使った。やはり錬金釜が必要だね!

 来年からは持ってこようかな? 必要は発明の母! 不自由なテント暮らしで、あれこれ思いつくんだ。

 まぁ、家に帰ってから作っても良いけど、今、寒いの!


 本当は周りも金属の方が良いと思う。でも、今は木の箱を応用して、温風機を作ったよ。

 魔石も前と違っていっぱいある。去年、かなり貰ったからね。

 あっ、グレンジャーホテルの部屋に冷風機を置いても良いかも。ハープシャーより暑いんだ。海風も気持ち良いけどね。


「お嬢様?」と怪訝な顔のメアリー。そして、黙っているけど驚いているベリンダ。


「ふふふ、これは温風機よ! 二台あるから、先ずは一台を動かしてみるわ」


 初めは暖かい風が当たる所だけ、ぼぁとした感じだったけど、少しずつテントの中が暖かくなってきた。

 二台目は対角線上の入り口付近に置こう。

 二台稼働させたら、テントの中が暖かくなった。


 ここにある物で作ったにしては、上出来でしょう!


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― 新着の感想 ―
「今、寒いの!」 それなら仕方ないですよね
さようなら、湯たんぽ!
流れるようにやらかすの草 必要は発明の母だからしゃーないね
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