冬の魔物討伐へ向けて
H&G商会のプレオープンとオープン、メーガンの頑張りでなんとか無事に終えた。
「ペイシェンス様は、オープンの始めだけお越しください」
メーガンとアダムに言われちゃった。オープンの日は、ずっとH&G商会に居ようと思っていたのに、少しショック!
「今、注目されているペイシェンスに挨拶をする客がいると、店が混雑するからでしょう」
パーシバルに言われたけど、ちょっと婚約者を贔屓目で見過ぎなのでは? と疑っちゃったよ。
でも、オープンの日、ドバッと押しかけたお客様の挨拶合戦に巻き込まれそうになって、ローラン卿とベリンダに救出され「パーシバル様とお帰りください」と言われちゃった。
大人しく、パーシバルと屋敷に戻ったけど、品物が足りるのか? 店員は、ちゃんと休憩が取れているのか? やきもきしちゃう。
「ペイシェンス、店長のメーガンがうまくやっていますよ。警備もローラン卿が指揮されているから安心です」
そうパーシバルに言われると、少し落ち着く。
「それより、日曜から魔物討伐ですが、準備は大丈夫なのですか?」
パーシバルは、私がH&G商会ばかり気にしているのを笑う。
「今、エバにチョコレートバーを作ってもらっているのです。ゲイツ様がリヴァイアサンを討伐に遠征された時に差し入れしたら、とても好評でしたから」
夏休みのオルゴール体操のご褒美で配った時も凄く評判が良かったから、パーシバルも覚えている。
「私も欲しいですが……一人で食べていたら、皆の視線が怖いです」
去年の経験で、ソースは各自が購入して持って来るだろう。チョコレートもバーンズ商会で買うんじゃないかな?
「お友だちにはチョコレートバーや日持ちがしそうな焼き菓子を配るつもりです。パーシー様には、多めにしておきますわ」
私の友だちには配るけど、パーシバルには騎士クラブの友だちも多い。そちらは、あまり知らないんだよね。
「去年、頂いた沸くポットも役に立ちました。今年は、持って行く人も多いでしょう」
ティーバッグは、今年は各自が買うんじゃないのかな? 私は、女子テントの分は持って行こうと思っている。
「野菜不足も辛く感じたので、キャベツの塩漬けの樽も寄付するつもりです」
「ペイシェンスのキャベツスープは美味いですから、楽しみです」
バーンズ商会も、シュラフや沸くポット、ティーバッグ、チョコレートなどの購入客で忙しいだろうね。
「差し入れのボックスを作るのを手伝います」
パーシバルと一緒なら、何をしても楽しいね!
寮から戻ってきたナシウスとヘンリーも手伝ってくれるので、わちゃわちゃと詰めていこう。ただ、何人分いるのかな?
「パーシバル様、ゲイツ様、サリンジャー様、サリエス卿、ユージーヌ卿、カエサル様、アーサー様、ベンジャミン様、ブライス様、ミハイル様、マックス様、ラッセル様、フィリップス様……王子様方はどうしましょう?」
「リチャード王子とキース王子には、差し入れなくてはいけないでしょうね! 他の方もチョコレートバーは、バーンズ商会では売っていませんから」
そうだよね! ソース類はたっぷりと購入して頂いたから必要ないだろうけど……リチャード王子は、チョコレートバーを大学生に配りそうだから、多めにあげよう。
「ルーシー様、アイラ様、アイーシャ様、ハナ様、ザッシュ様、ラルフ様、ヒューゴ様にも……キリがありませんわ」
今年は、ラッセルは学生会長だから参加だけど、フィリップスなどの文官コースの学生も多い。私は、一緒に授業を受けた人もいるから悩んじゃう。
「学生会長のラッセルに纏めて渡せば良いのですよ。後は、彼が配分するでしょう。大学生は、リチャード王子に渡せば良いでしょう」
まぁ、そうだよね! 個人的に親しい友だち以外は、ラッセルとリチャード王子に纏めて渡そう! あとは、各王子に渡したら、学友とかに分けるんじゃないかな?
カミュ先生の息子さん達や、親戚のミッシェル・オーエン、それに夏休みに領地に来た大学生達、全員に配って回れないもの。
あっ、でも……カミュ先生にはチョコレートバーを渡しておこうかな? 息子さん達を心配しているだろうから。
「女子テントのチョコレートバーは、袋に入れて持って行きますわ。そこで各自に配っても良いから」
それから、パーシバルと弟達とでチョコレートバーの試食会もしたよ。
「これは、ナッツヌガーをチョコレートコーティングした物です」
前から作っていたのは、このタイプだよ。
「そう言われるという事は、他の味もあるのですね!」
パーシバルは、よくわかったね。
「ええ、こちらは固く焼いたビスケットにチョコレートコーティングした物です。ドライイチゴのビスケット、ナッツビスケット、ドライオレンジビスケット、コーンフレイクビスケット、干ぶどう入りビスケット、どれがお好きでしょう?」
去年、討伐の途中で体力切れになったからね。前世の携帯食を思い出して、色々なフレーバーを作ったんだ。
「ペイシェンス! 凄すぎますよ」
パーシバルが爆笑している。ちょっと種類が増えすぎたのは確かだね。
「作ったのはエバですわ。味見ですから、一口ずつにしましょうね!」
前のヌガータイプのチョコレートバーも一応は四分割できるように切れ目は入れてあったけど、ビスケットタイプの方が割りやすい。
ヘンリーが一本全部食べちゃいそうなので、割るように注意する。
「一番甘いのは、ヌガータイプですわ。あっ、でも体力が無い時は、甘い方が良いのかしら? 私は、ドライイチゴのが酸味もあって好きです」
ヘンリーも「私も!」と賛成してくれた。イチゴ大好きだもんね!
「コーンフレークが入っているのが、サクサクした食感が好きです」
ナシウスは、食感とか敏感だもんね。
「どれも美味しいですが、ナッツビスケットのが一番好きですね!」
パーシバルの差し入れには、それを沢山入れよう!
「明日までに、シュトーレン、堅焼きのケーキ、ブランデーケーキを焼いてもらって、お届けします」
まぁ、それはパーシバルとゲイツ様とサリンジャーさんだけかな? 他の人は、各自の家で用意するんじゃない? 女の子のは多めに持って行くけどね。
今年は、魔物討伐の後は、卒業試験だ! でも、ワインの蔵開きには参加したい。前世のボジョーレーヌーボーのお祭り騒ぎ、懐かしいな。
まだ若いワイン、本当のワイン好きには低評価なのかも知れないけど、フレッシュで好きだったんだ。まぁ、十三歳だから飲まないけどね。
卒業試験が終わったら、収穫祭!
そして、卒業式! 寮も引き払う……なんだか寂しいな。




