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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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ラフォーレ公爵家のパーティ 前編

 昼食の後は、少し身体を休める。

「お嬢様、眠らなくても、ベッドに横たわっているだけでも……」

 メアリーにベッドに押し込まれてしまった。


 火曜にはザッカーマン教授との面接もあるので、領地管理の関連本を読んでおきたかったな……と思っていたけど、朝早く起きたので寝ていたみたい。


「そろそろお支度をしませんと……」

 メアリーに起こされて、お風呂に入り、軽い食事を取ってから、ドレスに着替える。


 食事を取るのは、ラフォーレ公爵家のパーティで用意されていないからではない。舞踏会の会場の横の部屋には、軽い軽食も用意されているけど、令嬢がパクつくのは格好が悪いとされている。


 リリアナ伯母様も、令嬢はお淑やかに振る舞う必要があると注意されるからね。レモネードとかは良いけど、令嬢ががぶがぶお酒を飲むのは駄目。まぁ、ペイシェンスは十三歳だからお酒は飲まないけどね。

 酔って、庭に出て間違いを犯す令嬢が社交界シーズンに二人か三人は出るそうだ。


 髪の毛をアップして、軽くお化粧をして、ドレスを着る。

 今夜の髪型は結い上げている。舞踏会だから、崩れ難いように編み込みなどを入れているけどね。


 アクセサリーはリボンに銀ビーズを刺繍したチョーカーだ。髪にも同じリボンを飾っている。


 薄いブルーのドレスを着ると、ちょっと前世のシンデレラになった気分。

 白の長手袋を付け、銀ビーズの小さなバッグを持ったら用意万全。


 少し早目に来て下さったリリアナ伯母様に、ドレスのチェックをしてもらう。


「まぁ、長いスカートの裾を指につけるのですね! ちょっとターンしてみて!」


 クルッとターンしたら、ヒラヒラとスカートが翻る。


「脚は見えないわね! それにとても華やかだわ。ペイシェンス、このデザインはマダム・マグノリアなの? 私も作って欲しいわ!」


 ノースコート伯爵も到着したので、馬車でラフォーレ公爵家に向かう。


「まぁ、まぁ、とても綺麗ですわね!」


「カエサル様達、頑張ったのね!」


 私は電飾を作るのは手伝ったけど、飾りつけはしなかった。

 ラフォーレ公爵家が電飾でキラキラしている。夢の国に入るみたいな気分になるよ。


「さぁ、ペイシェンス! パーシバル様がいらっしゃいますよ」


 パーシバルは、先にモラン伯爵夫妻と到着していたみたいなのに、私をエスコートする為に屋敷に入らずに待っていてくれた。


「ペイシェンス! これは錬金術クラブの宣伝になるね!」


 パーシバルが学生会長の時の収穫祭を思い出したんだね。カエサルも頑張った甲斐があるよ。


 他の招待客も、この飾り付けに感嘆している。


「ペイシェンスの作曲した歌も楽しみです」


 私も実は楽しみにしているんだ。私は木曜は音楽クラブをパスしようかと思ったけど、お昼休みにマーガレット王女とドレスについて話していた後で、来てね! と言われたから行ったんだ。


 音楽関係は凄く仕事の早いアルバート元部長が『乾杯の歌』の楽譜と歌詞をクラブハウスに用意していた。


 私は伴奏がメインだったけど、主役部分は元グリークラブのマーガレット王女とパリス王子が歌い、その他の客の部分の合唱は全員で稽古した。


「コーラスクラブやグリークラブでも練習して舞踏会に参加するのよ! きっと素晴らしいパーティになるわ」


 まだ、途中で催される小劇については秘密なんだ。マーガレット王女は、どんな曲なの? と聞きたがったけどね。


「パーティの幕開けの『乾杯の歌』は音楽クラブでも練習したのです。でも、『愛あれば』の最終的な演出は知らないので、とても楽しみなの」


 パーシバルにエスコートして貰って、ラフォーレ公爵家に入る。


「まぁ、中の飾りも素敵だわ!」


 煌めくシャンデリア、それに花々! そして、壁には電飾があちらこちらに。


「ペイシェンス、ポンチョを脱ぎに行きましょう」


 控え室にリリアナ伯母様と一緒に行って、メアリーに雪狼(ニックスルプス)のポンチョを渡す。伯母様はロングコートを脱いで、メアリーに目を離さないでねとお願いしている。


「ペイシェンス様! そのドレス、とても素敵だわ!」

 

 エリザベスも母親と到着して、パッと私に近づいて褒めてくれた。


 母親とリリアナ伯母様は顔見知りなので、二人はにこやかに挨拶を交わしている。私も紹介されて、挨拶したよ。


「そろそろ会場に向かいましょう!」


 招待客が会場の入り口で、ラフォーレ公爵とチャールズ様、そしてアルバートに挨拶して中に入る。


 ほぼ全員が揃った頃、なんと国王夫妻とリチャード王子とリュミエラ王女、マーガレット王女とパリス王子。

 それにソニア王国のベーリング大使夫妻とコルドバ王国のジョレンテ大使夫妻が、それぞれの王女や王子の付き添いで現れた。


 全員が、国王夫妻にお辞儀をして、桟敷席に付かれるのを見送る。


 リチャード王子とリュミエラ王女、パリス王子とマーガレット王女は、ダンスフロアに降りてきた。


 舞台にチャールズ様が立って、舞踏会の始まりを告げる。


「ようこそいらっしゃいました! 皆様にグラスを! そして、お楽しみ下さい」


 私は、パーシバルにレモネードを渡して貰う。大人は、シャンパン!


 音楽が流れ出し、カルメン・シーターが豪華なドレスで舞台に登場する。迫力のある薔薇姫だ。電飾の階段を優雅に降りていく。

 そして、前の舞台で騎士役だった男役の人が、若き貴族みたい。

 何人かの貴婦人、貴族達も、電飾の階段の途中で立ち止まって、グラスを手に取ってポーズしている。

 

「まぁ、彼の方は!」なんてピンクのハートが飛んでいる。


 二人が『乾杯の歌』を歌い始める。どんどんと恋が盛り上がっていく歌詞に全員のテンションも上げ上げだ。


 舞台の貴婦人、貴族達、それに音楽クラブ、グリークラブ、コーラスクラブのメンバーと歌詞を配られていた学生を中心に、合唱していくと、簡単な繰り返し部分は他の招待客も一緒に歌う。


「「「乾杯!」」」


 歌が終わったら、薔薇姫と青年の音頭で乾杯し、素早くグラスを使用人達が集め、拍手が巻き起こる。


 そして、音楽が流れ、ダンスが始まった。役者達と電飾の階段は、左右に別れて舞台から消えている。


「ペイシェンス、とても良い曲ですね! それに、とても綺麗ですよ」

 

 パーシバルが着飾った私を褒めるのが遅くなったのは珍しい。ただ、踊り始めると、ターンする毎にスカートが翻るのが、とても気に入ったみたいなんだ。

 パーシバルは、目立って恥ずかしくないかしら? と心配していたけど、大丈夫みたい。私は、ちょこっと恥ずかしい。

 だって、凄く注目されている感じなんだもの。


 ダンスをしながらも、国王夫妻に貴族達が、挨拶をしに行くのが目の端に写る。


「大人達の挨拶が終わってから、行きましょう!」

 社交界のあれこれは、パーシバルに任せておけば良いから安心。グレンジャー家でもマナーは習うけど、社交界とかは無縁な感じなんだもん。


 数曲踊って、リリアナ伯母様が座っている席にパーシバルにエスコートしてもらう。


「パーシバル様とご挨拶して来なさい」

 リリアナ伯母様にも言われたので、少し階段を上がった場所の桟敷席へと向かう。


 国王夫妻は良いんだけど、ちょっと苦手なラフォーレ公爵とベーリング大使が横にいるよ! 

 パーシバルがソッと手を握ってくれたので、にっこりと笑い返す。


「国王陛下、王妃様、お目にかかれて光栄です」

 パーシバルが挨拶してくれるので、横でお辞儀をしていれば良いだけなので楽だね!


「おお、皆も楽しんでいるようだ。それにしてもペイシェンス、とても綺麗だ!」

 国王陛下もお世辞を言うんだね。

「ペイシェンス、本当に素晴らしいドレスだわ。それに、曲も良かったですわ」

 王妃様に褒められたよ! やれやれ、無茶振りを労われて良かった。


 ラフォーレ公爵も、ベーリング大使も、国王夫妻の前なので礼儀正しく、大人しくしているので、私としてはホッとした。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ペイシェンス 完全に自分の事が後回しどころか、できていない 大学で、パーシバルと一緒に外交官の授業を受けている女生徒がいて、ペイシェンスより、そっちが優先されている。としても、ペイシェンス…
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