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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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ロマノ大学受験

 水曜は、朝から少し緊張している。ロマノ大学の受験だからね。

 

 それに、お父様と二人っきりの朝食も久しぶりだ。

「おはようございます」

「おはよう! 今日は試験だな」

 珍しく挨拶だけじゃない。いや、普通の親なら、それが当たり前なのだろう。何だか、より緊張してきたよ。


「お嬢様、大丈夫ですよ!」

 メアリーの励ましを受けて、二階の大教室へ向かう。

 メアリーは侍女の控室で、細かなビーズ刺繍をリボンにするみたい。前のようにシャツや繕い物をしなくても良いけど、細かな装飾は時間と手間がかかるし、メアリーの得意分野だからね。


 これは、ロマノ大学にもついて来そうだな! なんて合格前から溜息が出ちゃう。

 実は、ロマノ大学生になったら、パーシバルとデートできないかなと考えていたんだよ。

 メアリーは監視の目を緩めそうに無いな。


 二階の大教室で、自分の受験番号の席に座る。

 ラッキー! 窓側の後ろの席だ! 好きな席に当たったのは幸先が良い気がする。


 少し早目に来たけど、何人も先に来て座っている。

 あっ、アーサーだ! 知り合いを見つけると心強い。文官コースの中等科三年生の姿もチラホラ。


 そろそろ始まる時間になって、アルバートが教室に来た。もしかして、編曲していて夜更かししたのかな? 大丈夫? 

 試験内容は予め告知されていた。一時間目は、国語。二時間目は、数学。三時間目は、古典。四時間目は、歴史と地理。


 王立学園でもロマノ大学でも授業は一時間半だけど、試験はそれぞれ一時間。

 それに途中で出ても良いシステム。


 国語は、問題は簡単だった。最後の問は、作文で「ロマノ大学で何を学びたいのか述べろ」だ。

 これは、過去問でもよく出ていたから、想定済みだ。


 用意していた文章を綺麗に、綴りの間違いがないように書きながら、アルバートは音楽愛溢れた文章を書くのだろうかと想像したら、ぷっと笑いがこみあげて、平静を装うのに、ちょっと苦労しちゃった。


 二時間目の数学は、解いて、見直して提出して出て行った。最後の大問は、ちょっと難しかったけど、大丈夫! トイレに行っておきたかったから。


 ロマノ大学生は、男子が多いから、女子トイレは少ないんだよ。これも見学の時にチェックしておいた。でも、受験生、二階の大教室には女子は私だけだった。つまり、トイレは貸切状態。


 鏡もあるので、リップクリームも塗り直しておく。試験が終わったら、パーシバルとランチする予定なんだもん。


 古典は、問題は過去問とよく似ているから、すらすら解けたけど、最後の大問が違っていた。


『カザリア帝国の滅亡について、古語で述べよ』

 これまでは、古語で自分の事や趣味などを書くとかだったよね? 教室のあちこちで、呻き声が上がる。

 これは、もしかしてお父様が学長になったから『過去問だけで合格はさせないぞ!』と教育改革をやり始めたのかしら?


 幸い、私のクラスメート、フィリップスと文官の授業をよく一緒に受けていたから、カザリア帝国の滅亡についてはかなり詳しい。フィリップスったら、休憩時間に、ずっと話しているんだもん。


 それを古語で書いていく。今のローレンス語と文法が違う箇所は気をつけて書かなきゃね!

 ただ、長くなりすぎたんじゃないか? 答案用紙にびっしりになったのは、ちょっと不安。もっと簡潔に纏めて書くべきだったかも。


 この試験は、途中で退場する学生はいなかった。

「終わりですよ!」と肩を叩かれる学生もいたほど。


『お父様、教育改革は緩やかにお願いします!』と心でお祈りしておく。首は困るからね!


 それと、明明とナシウスに過去問頼りは駄目だと教えておかなきゃ! まぁ、ナシウスの受験の頃には、最新の過去問が出そうだけどね。


 歴史と地理は、問題は簡単だったけど、最後の大問がまた難題だったんだ。


「カザリア帝国から独立した王国の一つを取り上げ、地理的要因を含めて述べよ」

 大教室中に呻き声が上がっている。あの暗黒の戦国時代は、授業中はサラリと通り過ぎたんだ。

 歴史の先生は、カザリア帝国の繁栄と崩壊を語るのが好きだからね。

 そして、自国のローレンス王国の成り立ちへジャンプしちゃう感じだったんだよね。


 ローレンス王国の歴史は、ここにいる学生は詳しいけど、カザリア帝国から独立してはいない。だから、書けない。

 ローレンス王国の前の、前の王国が分裂独立して、それが他の王国に滅ぼされたり、ごちゃごちゃなんだよ。


『カザリア帝国から分裂した王国かぁ。それに地理的要因を絡めるなら、ソニア王国の前王国であるフィニキア王国かな?』


 私は、昨年の夏休み苦労して、歴史の年表と歴史地図を書いたからね。

 一番、地理的要因を絡ませ易いフィニキア王国にした。

 東方の騎馬民族との交易とかで、経済力を付けて独立の資金を貯めたんだよ。

 まぁ、カザリア帝国の第四だったか、第五王子が旗頭になっているんだけどさ。名前はフィニキア! 初代王の名前と王国の名前が同じなのはラッキー! 第五だったと思うけど……魔法暗記能力をここで使って良いのかな? 王立学園の学長は使って良いと言ったよね? やはり第五王子だった。


 それと、ノートの内容も詳しく蘇ったから、びっしりと書いちゃった。これも、もっと簡潔に纏めるべきだったのかも。


「これで試験は終わりです。結果は、金曜の午後一時に発表します。合格した学生は、各自、指導教授に面談を申し込むように」


 やったね! 試験って、やっぱり疲れるよ! さて、パーシバルが迎えにくる約束だから、待っていようと席に座っていると、アルバートが凄い勢いでやってくる。


「ペイシェンス! これから時間はないか?」

 アルバート、顔色が悪い。元々、色白だけど、青みががっている。


「申し訳ありません。パーシバル様と食事の約束を致しています」

 これって決定的なお断り文句だよね。婚約者とのデートを邪魔する奴は馬に蹴られるんだよ! なんなら、馬の王(メアラス)に蹴らすぞ! 

 

 同じ教室で受験していたアーサーが助けに来てくれた。

「アルバート、不粋な真似は止めろ!」

 そう、そう! それにパーシバルがお迎えに来てくれた。


 あれっ? カエサルも一緒なんだけど? それにグリークラブのマークス・ランバート元部長まで?


「ペイシェンス! 大変なんだ!」

 あれっ? マークスも顔色が悪い。それにパーシバルとカエサルも何故か居心地悪そう。


「マークス、それはお前達の問題だろう! ペイシェンスを巻き込むな!」

 カエサルは、マークスを止めているみたい。ただ、パーシバルは戸惑っている。もしかして、少女歌劇団絡みなの? モラン伯爵夫人がパトロンだから、きつく断れないのかな?


 試験の後の、ランチデートは波乱含みだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] どこの社会科(歴史)の教科はそんな感じなんですね。 特に日教組の狂師だと『日本が世界中に迷惑をかけた』ような物言いしかしないし。 創氏改名は“日本国民全員に行われた”戸籍政策であるにも関わら…
[一言] 祝!!700話!! ありがとうございます。 続きが楽しみでなりません! これからもどうぞ宜しくお願いします
[一言] 女子歌劇団絡み? 1.カルメンが駆け落ち 2.スパイ侵入 それとも、わがままゲイツ王がなにかした? 皆さん、テストは解けましたか? 舐め腐ってたアルバートは、一次試験落ちていいよ ペイえも…
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