表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
7/751

ショックな夕食

 まだまだ生活改善するところはいっぱいだけど、お腹が夕食の時間だと告げる。で、食堂に行こうとしたんだけど、ペイシェンスのチェックが入る。

『夕食は着替えて行かなきゃ駄目!』

 そう言えば、英国貴族のドラマでは毎回夕食は着替えて食べていたな。あっちは豪華な晩餐だったけど、着替える価値のある食事は期待できそうにない。

 黄昏た部屋で箪笥に掛かっているもう一枚のドレスを出してみる。

「寒そうだけど……」

 長袖だけど、レース。こんな寒いのにレースはないだろう。泣きたくなる。

「中に服を着たままじゃ駄目かしら?」

 激しくペイシェンスに『駄目!』と拒否されて、火の気の無い部屋で震えながらレースの袖のドレスに着替えた。

「うう……寒い。早く食堂に……」

 ペイシェンスが髪をとかして、綺麗にセットしろと騒いでいる。

『もう、本当にペイシェンスは死んだの? なんだか凄く文句が多い気がするよ』

 とはいえ、日本でOLしていたのは伊達じゃない。寝過ごしても十分で着替えて化粧してアパートを出ていたのだ。古ぼけた化粧台で、曇っていてよく映らない鏡を見ながら、ブラシで髪の毛をとき、一部を上げて、ハーフアップにする。引出しの中にあった唯一の髪飾りで止めた。

 金髪、青い目、なかなか可愛いとも言えるけど、生憎と痩せすぎだ。目もぎょろっとして見える。

「もっと太らなきゃ」なんて思う日がくるなんて! 人生初だわ。なんて感慨に耽る暇もない。

「お嬢様……申し訳ありません。お支度は……」

 メアリーが急いでやってきた。あっ、ペイシェンスの記憶では、メアリーが晩御飯の前には着替えさせてくれていたみたい。

 「良いのよ」そう、メアリーには何もかもやって貰っているんだから。

 でも、メアリーは本当に残念そうだ。

「明日は、教会に行く前は私が髪の毛を整えます」

 そっか、メイドっぽい仕事もしたいよね。下女の仕事もしているメアリーだけど、本来はメイドだもの。

 明日は任せると言って、食堂に急ぐ。格好つけて薄いハムを弟達に譲ったけど、お腹はぐうぐう鳴っている。それに、まだ早いとしても、食堂には暖炉がある。

 食堂には父親が座って居た。やはりドレスコードがあるのか、黒い上着と白いタイを結んでる。その黒い上着も肘やあちこち擦れててテカッている。

「おお、ペイシェンス。では、夕食を始めよう」

 朝と昼は、父親は座ったままだったのに、ドレスアップした私が食堂に入った途端に立って挨拶した。こんな礼儀を守るより、何か収入になることして欲しい。

「でも、ナシウスとヘンリーがまだですけど……」

 朝と同じ薄いスープが執事にサービスされる。それも朝と昼と違う。いつもはメアリーだった。そんな事より、食卓には二人分のカトラリーしか並んでない。

「ペイシェンス様? お子様は晩餐の席には着きません」

 私の動揺に、執事のワイヤットが小さな声で返事をしてくれた。急いでペイシェンスの記憶をググる。10歳までの子どもは子供部屋で夕食は食べるようだ。豊かな貴族の家では、子守りが朝も昼も夜も食べさせる。つまり、貧乏なグレンジャー家だから、朝、昼は弟達(エンジェル)と一緒に食べられたのだ。

 薄いスープ、そして薄いハム、固いパン。ここまでは、昼と一緒だけど、なんとデザートが出た。

「林檎でございます」

 林檎を薄く切って、それにチーズが添えてある。それと、父親にはワイン。私には紅茶。うっすい! エバの料理は何もかも薄い。要改善だ!

「明日、教会では心を落ち着けて能力テストを受けたら良いから」

 あまり父親とは話は弾まない。本当は何故こんなに貧乏なのか聞きたいけど、ペイシェンスに禁じられている。娘がそんな失礼な事を父親に質問するのは駄目だそうだ。

 朝や昼と違い、暖炉の火もすぐには消されなかったが、私は弟達が心配で、早々に食堂を後にした。だって、子守りもいないし、夕食を食べさせて貰ったのか心配なんだもん。

 子供部屋で、弟達はベッドに入っていた。

「お姉様、来てくれたの?」

 まだ、ベッドサイドには蝋燭が灯してある。まだベッドに入ったばかりみたいだ。

「ええ、ナシウスとヘンリーにおやすみを言わなくてはね。ちゃんと夕食は食べた?」

「うん、林檎が美味しかったよ」

「チーズ、大好き」

 どうやらちゃんと食べさせて貰っているようだ。ホッとする。まぁ、こんな貧乏なグレンジャー家に残ってくれている使用人は信頼できるのかもね。まだ会っていないエバとは薄い料理について話し合わなきゃいけないけど。

 弟達の布団の下には灰色の毛布がある。二人で寝るなら暖かいだろう。私は、布団をきちんと掛けてやり、弟達(エンジェル)に「おやすみなさい」と言って、おでこにキスをした。幸せ!

 「蝋燭を消さないで」下のヘンリーは強請るけど、「これから冬になるんだよ。昼でも暗い時も多くなるから、節約しなきゃ」ナシウスの賢い言葉にお姉ちゃん泣きそうになるよ。

「また消しに来るわ。それまでに寝てなさい」

 本当に『どげんかせんといかん!』だわ。あら、何となく普段の思考もペイシェンス化してきたのかしら。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あ、これ夕食が一緒だったらもっと早く死んでるやつだわ……。 流石のペイシェンスさんも弟が同じ目にあったり、くっきり綺麗な鏡があったらここまでうるさくない可能性が……数%くらい。
[一言] 今の状況がヤバいの分かってて元本体が一々干渉して邪魔するの謎 それで自分は死んでるのにねぇ 主人公が同じく死んでも構わないと思ってそう。自己犠牲するのが当たり前みたいだし?
[一言] 貴族だからと布団もかけず肺炎で死ぬどころだった10歳のお子ちゃんにダメ出しされてるのうざいんですけど...
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ