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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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ベーリング大使って冷たいの?

 ソニア王国大使館のパーティの主役は、パリス王子とマーガレット王女だ。


 二人は、婚約披露パーティを楽しんでいる。私とパーシバルも、ダンスの合間に二人にお祝いの言葉を告げた。


「ペイシェンス、パーシバル、ありがとう!」


 本当に幸せそう! それは良いんだけど……ソニア王国のベーリング大使とも挨拶したんだ。


「ご婚約、おめでとうございます」


 ごく普通の挨拶だったから、ベーリング大使も「ありがとうございます」と簡単に応えた。

 それは、問題ないと言えば、問題ないんだけど……ベーリング大使って、見た目がロマンスグレイの綺麗な顔をしているからか、ちょっと冷たく感じる。


 だから、コルドバ王国のジョレンテ大使との差を感じちゃったんだ。彼は、去年のショッピングデートの帰りに大使館に寄った時とかに、本当にリュミエラ王女を大切にしている感じがしたから。


 それに、この前のコルドバ王国大使館のパーティでは、リュミエラ王女がいずれはローレンス王国の王妃になるからか、友好ムードを盛り上げていこうという心遣いをしていた。

 積極的に、大使夫妻自らが出席者の貴族に声を掛けていたんだよね。愛想の良いぽんぽこ狸だ!


 でも、ベーリング大使は違うんだ。礼儀正しいけど、冷たい感じがしたんだ。こちらはシュッとした銀狐だね!

 出席者が挨拶したら、それに礼儀正しく返しているけど、自分から積極的に声を掛ける感じじゃないんだよね。


 まぁ、流石に王妃様には大使夫人が丁重に接待しているみたいだけどさ。


 何だかプライドの高そうなベーリング大使。挨拶だけして、パーシバルとダンスに戻るけど、私がもやっているのがわかったみたい。

 

「ペイシェンス、明日は誕生日パーティですね! 楽しみです」


 パーシバルに気を使わせちゃったね。


「ええ、新しい遊具を作りましたの」


 少しパーシバルが動揺しちゃった。いつも完璧なダンスリードが一瞬だけ乱れたんだ。非常識な空飛ぶ遊具だと思ったのかな?


「ヘンリーが喜ぶような身体を動かす遊具です」


「それは楽しそうですね!」


 二人で笑いながらダンスしていると、ベーリング大使の事なんか飛んでいっちゃった。


 でも、冬休みにソニア王国に行くのが、少し憂鬱になったよ。初めての外国旅行だけど、あんな尊大な感じの貴族が多いのかなって!

 そう言えば、パリス王子も最初のイメージは、花を背負った王子様ってイメージだった。でも、実際は魔物討伐にも積極的だし、意外と良い人じゃないかな? マーガレット王女の為にも、良い人だと思いたい。


 ダンスの休憩にリリアナ伯母様の所にパーシバルにエスコートして貰って行った。

 そこには、モラン伯爵夫人もいて、仲良く話していた。


「ペイシェンス、ジュースをどうぞ」

 パーシバルがジュースを渡してくれたので、少し休憩する。


 冷静に考えたら、ベーリング大使とジョレンテ大使では、立場が違うよね。


 ジョレンテ大使は、リュミエラ王女がリチャード王子と結婚して、ローレンス王国の貴族達に受け入れて貰えるように考えて行動しているんだ。


 ベーリング大使は、自国の王妃になるマーガレット王女が自国の王宮をローレンス王国の貴族に占領させないか、警戒しているのかも。


 それに、ノースコート伯爵も、第一印象は、冷たい貴族様だったからね。実際は、サミュエルも折にふれて教育しているし、愛情も持っている人なんだけど。

 ベーリング大使も、初めての相手には礼儀正しくし過ぎて冷たい印象になるのかも?


 王都ソフィアは、恋愛の都で有名だから、気取って冷たい感じだけじゃないと思おう! パーシバルがいるから、恋愛は興味ないけど、ファッションやスイーツは楽しみだよね。


 私がジュースを飲みながら、あれこれ考えている間、パーシバルが皆と話していた。


「明日は、ペイシェンスとヘンリーの誕生日パーティなのです」


「サミュエルも招待して貰っていますわ。とても楽しみにしているのよ」


 私達が話していると、王妃様の近くにいたベネッセ侯爵夫人も来て話に加わった。


「ペイシェンス様には、プリームスが迷惑を掛けているみたいです。少し耳に挟みましたが……誕生日パーティに招待されていないのに、勝手に押しかけるのではと心配で……」


 ああ、それはねぇ。多分、執事さん経由で知ったのかな? ベネッセ侯爵夫人には、亡き母親も可愛がって貰ったし、ティアラやネックレスなども貧乏のどん底で手放した時に買って貰っている。


「いえ、ゲイツ様にはいつもお世話になっています。それに、招待状など必要がないほど親密なのです」


 まぁ、突撃晩御飯とか迷惑な面もあるけどさ。


「プリームスが無茶な事をしたら、私に報告して下さいね」


 ははは、竜の谷に誘われたけど、それはお父様がキッチリと断ってくれたからね。


「ペイシェンスのお父上は、外国に行くのを許可して下さるでしょうか?」

 パーシバルが心配している。竜の谷の件が頭によぎったのかも。


「さぁ、陛下の許可があるなら多分大丈夫だと思いますわ。それに、父は、マーガレット王女の側仕えに選ばれたのをとても名誉なことだと思っていますから」


 それに、竜討伐とは違うからね。ちょっと、聖皇の妹の王妃様とか、会うのが怖い気がするけど、パリス王子やカレン王女しか面会出来ないそうだから、会う機会もないかもね。


 モラン伯爵夫人から、少しだけソニア王国の貴族について忠告された。


「あちらの方々は、少しローレンス王国の人達とは違いますの。歴史が長いのを誇りに思っていますし、プライドが高いのです。でも、知り合いになると、とても友好的で……少し、それも困惑させられるのですが……」


 つまり、一人で行動しない方が良さそう! それは、マーガレット王女にも言えそう。


「私もマーガレット王女の後見人として、ソニア王国を訪問します。プリームスも同行するので、行儀良くさせますわ」


 わぁ、ベネッセ侯爵夫人が一緒なら心強いね! ゲイツ様も行儀良くしそうだし。

 パーシバルも同じ気持ちなのか、笑って手を差し伸べる。


「さぁ、もう少し踊りましょう!」

 パーシバルにエスコートされて、ダンスフロアーに向かう。


 明日の誕生日パーティ、きっとゲイツ様も来るのだろう。でも、そんな事より、今はパーシバルと踊って楽しもう!

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― 新着の感想 ―
[一言] 竜討伐のことを話したらゲイツの身に危険が(笑) ゲイツの執事がペイシェンスの誕生会に、ベネッセ侯爵夫人が参加していることを(ゲイツに)黙っていたら面白いことになるよね。 ゲイツ「ペイシェンス…
[一言] 明日敵になるかもしれない人を、家庭空間にいれる必要はなく、貴重な食料で持て成す必要もないんだ…
[良い点] 更新ありがとうございます。 招かれざる客とは言えど、持ってくるものは国宝級のプレゼントだしね。ケーキ数ホール余分に焼いてもお釣りがきますね。
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