平日は、暇? なはず?
週末は忙しかったけど、月曜からは暇な筈だ。少なくとも一コマしか授業はないから、錬金術クラブで十月の体験コーナーの用意をしたり、水曜は料理クラブでハンナ達とマカロンを作る予定だよ。
ああ、忘れていないけど、火曜と木曜の音楽クラブもある。マーガレット王女は部長になったから、グリークラブは辞めた。それに、リュミエラ王女もコーラスクラブの部長になって、グリークラブを辞めているから、その付き添いのパリス王子も辞めたんだ。
つまり、放課後は音楽クラブで二人っきりにさせないように、側仕えとしてクラブはサボれない。まぁ、領地に行く時は……アンジェラに頼んでおこう。
その代わり、少女歌劇団に誘うからね!
私が誘ったら、ラシーヌは拒否しないだろう。
「月曜は、明明とカフェでランチしようと考えているのです」
そんな事を言いながら、マーガレット王女とリュミエラ王女の髪を整える。
「明明って、カルディナ帝国の子よね? カフェじゃなくて上級食堂に連れて来なさいよ」
ははは……経済面は回復したのに、まだ私の上級食堂の代金はマーガレット王女が払っているんだ。その上に、明明のまでは駄目だよ。
あっ、裕福なアンジェラの上級食堂代も、ジェーン王女持ちだそうだから、そんな物なんだとは割り切っているけどね。
「明明は、美麗様の侍女ですから、彼女も楽なカフェで食べた方が良いみたいです」
とはいえ、明明は王さんの姪だし、こちら風に言うと貴族の令嬢なのかな? 皇女の侍女なんて、どういう立場かわからないから……ちょっと、聞いてみたいけど、失礼なのかな?
「ああ、それと今日からはバラク王国のアイーシャ王女とハナが上級食堂で食べるとお母様から聞いたのよ。世話をして欲しいと言われたわ」
うっ、つまりゲイツ様経由で王妃様がマーガレット王女に、つまり私に世話をするようにと言っているのと同じだよね。日曜に、王宮で顔合わせしたそうだ。
「明明とは、二時間目にカフェで話をしますわ」
明明も、苦労していた薬草学も順調だ。二時間目ずっとを温室で過ごす事は無いだろう。つまり、温室に明明を捕まえに行くのだ。
カルディナ語の練習になるだけでなく、明明は大切な私の友だちになっている。それに、異文化の話をするのって楽しい。明明もこちらの文化を知るのが楽しそう!
そういう事で、二時間目が始まって、ちょっとしてから温室に行ったんだ。あれ? 学生がいない! しまった! 秋学期は、初めは座学、そして後半が温室だった。
「でも、あの座学は……」
ハッとして図書館に向かったら、明明が薬草の本を熱心に読んでいた。あの不親切な教科書を読むだけだもの。それだけでは、テストは合格にならない。
「ペイシェンス様?」
「明明様、今日のお昼はご一緒できないので、今からカフェに行きませんか?」
勉強中なのに悪いかなと思ったけど、明明も私との話を楽しみにしてくれていた。
「図書館は、また来たら良いだけですわ」
図書館は逃げないもんね!
カフェで、お茶をしながら、二人でお互いの国の結婚事情について話す。何故、この話題になったのか?
「明明様も年頃だから、お相手とか探さないですか?」
ローレンス王国では、令嬢はより良い相手を探すのが普通だからね。こっちの風習に毒されていたんだ。
「ああ、私は生涯ずっと美麗様にお仕えするつもりです」
それって、メアリーもそう言っていたけど、グレアムに出会って、恋して、結婚した。
「あのう、不躾な質問なのですが、結婚してはいけないのですか?」
明明は、笑って首を横に振る。
「私は、皇帝の後宮の女官ではありませんから、結婚を禁じられてはいませんわ」
ふぅ、後宮の女官は、結婚は駄目なんだね。
「ただ、美麗様にお仕えしたいだけなのです」
それを、明明が自分で選ぶなら、私は良いと思う。それに、いつか良い人と出会うかもしれない。
カルディナ帝国の結婚事情、少し明明から聞いたけど、親が決める事が多いそうだ。それと、身分の高い男の人は、何人かの妻を待つんだってさ。
「こちらの方には、理解しにくいかもしれませんが、皇族以外の貴族は、第一夫人は家と家の結びつきの為に親が選びますから。第二夫人からは自分で好きな相手を選ぶ感じですね」
まぁ、皇帝も第一夫人は、政治的に考えて選ばれるそうだ。他の妃は、お好みの女性って感じなのかもね。
カルディナ帝国には、社交界は無いそうだけど、年頃の娘を持つ家では、宴会を開いて婿候補を招待したりするんだって。見合いかな?
「ペイシェンス様は、パーシバル様と恋愛されたのですよね」
「ええ、でも伯母からの縁談もありました」
そんな乙女の話をしていたけど、鐘が鳴ったので、明明と別れて、上級食堂に向かう。
本当なら、同じ魔法使いコースのアイラが一緒だと良いのだけど、ルーシーも上級食堂なんかで食べるのは肩が凝ると辞退。
アルーシュ王子とザッシュが校内を案内しているけど、履修要項とかちゃんと説明できているのかな?
やはり、美少女のアイーシャ王女は目立っているね。ゴージャスなドレッドの髪型、王冠みたい。
「リュミエラ様、私の妹のアイーシャです。こちらの風習は知らないので、宜しくお願いします」
アルーシュ王子にしては、丁寧な対応だ。
マーガレット王女は、王妃様から頼まれているし、リュミエラ王女も不親切な人じゃない。
こちらのテーブルは女子席になりそう。マーガレット王女は、パリス王子と食事をしたいのだろうけど、今は我慢する事にしたみたい。
アイーシャ王女の世話をちゃんとして、王妃様にパリス王子との縁談を認めて欲しいのだろう。
アイーシャ王女は、こちらの風習を知らないと言うけど、マナーはちゃんと習得済みだし、食事を一緒にするのに問題はない。
ただ……本当に魔法の習得に熱心なんだよ! 困るくらいに!
「ペイシェンス様は、ゲイツ様のお弟子様なのですよね。兄もペイシェンス様の領地で魔法合宿に参加させて頂いたお陰で、凄く上達したみたいです」
ふぅ、誤解は解いておかなきゃね!
「私は、ゲイツ様の弟子ではありませんわ。家政コースと文官コースを選択していますし」
アイーシャ王女は不思議な顔をしたけど、何を察したのか、頷いている。誤解に誤解を重ねているような気がする。王立学園では、そう言った方が良いだけだとか? 違うからね!
それより問題は、クラブ活動! アルーシュ王子もアイーシャ王女も魔法クラブに入部するそうだ。
アイラが次の部長になると聞いているけど、この二人も入部だなんて、大丈夫かな? アンドリューが、万が一、部長になったら、国際問題になりそう!
火曜と木曜は音楽クラブ、そして水曜は料理クラブでマカロンを焼いた。
後の日は、錬金術クラブで、業務用のお湯で洗う洗濯機、乾燥機、プレス機を皆で作る事にした。やはり、錬金術クラブは良いよね!




