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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第八章 王立学園を卒業しよう

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スイートチリソース!

 ゲイツ様は、どうやら夕食まで居座る気持ちみたい。招待していないのにさ! 何とか帰って貰おう。

 昼食会でお腹いっぱいじゃないのかな? そう言えば、お代わりとかはしていなかったね。やはり、少し辛過ぎだよ!


 アルーシュ王子も辛いのは苦手だと言われていたけど、暑い南の大陸では塩や唐辛子で保存しているのかしら?


 そんな事を考えながら、ゲイツ様の相手はパーシバルに任せて、私はスイートチリソースのレシピを思い出しながら書く。


「ええっと……ビネガーと唐辛子とハチミツと塩……かしら?」


 こんな時、台所に行けないのって凄く不便!


「パーシー様、新居の錬金術部屋にはミニキッチンも欲しいですわ!」


 思わず叫んじゃった。ペイシェンスが亡くなったお母様の元に行ってから、どうも令嬢のマナーが剥がれる事が多くなったよ。

 脳内で父親は“父親”と考えるのに、母親はペイシェンスの影響か“お母様”なんだよね。

 働くようになってくれたから、父親も脳内でもお父様と呼ぼうかしら? そうしないと、ふとした時に地が出るかもしれない。


「ペイシェンス様、それが良いと思いますよ! パーシバル、そうして下さい」

 私とパーシバルの新居なのにゲイツ様が口を出す。改修費用は、モラン伯爵家持ちなんだよ!


「ペイシェンス! そうしましょう」

 パーシバルは、笑って許可してくれる。嬉しい!


「本当は、私が台所で味見をしながらエバと作りたいのですが、メアリーが許可してくれません」

 この件は、ゲイツ様も口出ししないから、貴族の常識なのか?


 ミッチャム夫人にスイートチリソースと飛竜のクレープ巻きのレシピを渡す。


「スイートチリソースは、私の思いつきで書いたから、一度味見をしたいのです。小皿に入れて持ってきて下さい」


 ああ、台所で一緒に作れば、この手間が省けるんだけどね。


 ミッチャム夫人が何か伝えたいような顔だ。お客様の前だから言わない。


「あっ、アダムとメーガンが着いたのね! 明日は、パーシー様と新居の改築の話し合いと共に特産品を売る店を下見するの。二人には、店のプランを纏めるように伝えておいてね」


 るん、るん! な気分なのに、ゲイツ様が口を挟む。


「ペイシェンス様、新居はグリーンに頼むのですか? ラドリーの方が良いのでは?」


 それは、パーシバルも言っていたけど……初めにヒューバート・グリーンに頼んだし、サリエス卿の新居も良い感じだったんだ。


「でも……」と口籠もる。


「ペイシェンス様、ラドリーが悲しみますよ。彼奴は、図々しくお友達になりたいと言っているぐらいだから。グリーンは、一緒に手伝わせたら良いのです」


 ただ、新居の改修費用をモラン伯爵家が出すのがネックなんだ。


「ラドリー様は、ハープシャー館やグレンジャー館など、ほぼ材料費のみで改修して下さったのです。これ以上は、悪いですわ……」


 それに、若い私ならラドリー様の好意に甘える、もしくは夏休みの保養地の提供をするでカバーできるけど、モラン伯爵はキチンと代金を支払わなきゃいけないと考えるだろう。


「ふぅむ、モラン伯爵の面子を考えておられるのですか? だったら、グリーンを改修の責任者にして、ラドリーはお手伝いにしたら良いのです。ペイシェンス様や馬の王(メアラス)がいるのだから、防衛面も考えて改修しないといけませんからね」


 パーシバルが横で呆れている。新進気鋭のグリーンだけど、王宮建築士のラドリー様を助手にしたくないだろう。


「それと、特産品を売る店ですか? 聞いていませんけど?」


 一々、ゲイツ様にお伺いを立てる必要は無いよね! でも、説明しよう。


「グレンジャーの海産物とハープシャーの調味料とソースと麦芽糖。そして、いずれはワインも売りたいです」


 ゲイツ様が前のめりになる。


「そうなったら、いつでもペイシェンス様のソースが手に入るのですね! 今回の新しいソースも売りますか?」

 

 それは、味見してからだね! でも、良い考えだ。


「特産品の食べ方を広めても良いですわね!」


 特に、グレンジャー海老のテルミドールとか……うん、エバに料理して貰ったのを冷凍して売っても良い。

 でも、エバの負担が大きくなるのは困る。少し考えよう!


「ペイシェンス、また何か考えついたのですね」


 パーシバルに笑われた。でも、ゲイツ様は真剣な顔だ。食べ物関係は、見逃さないね。


 ミッチャム夫人が、小皿にスイートチリソースを少し持ってきてくれた。


「これはオレンジ色ですね。辛いのでは?」


 見た目はオレンジ色で辛そうだけど、酢とハチミツでマイルドにしてある筈。


 小さなスプーンで一口。

「ああ、やはりエバは私のレシピを理解してくれているわ! 少しピリッとするけど、甘酸っぱいの」

 ふふふ、これなら飛竜のクレープ巻きも美味しく食べられる。元々、飛竜の肉は美味しいからね!


「ペイシェンス様、私も味見がしたいです!」

 まぁ、これで満足して帰ってくれたら嬉しいから、もう一皿持って来させよう。


「ペイシェンス……私も!」

 パーシバルも興味があるみたい。二皿持って来させる。


「うううん! これ、これですよ! 辛いけど、辛すぎない! これ、アルーシュ王子に送ってあげたら如何ですか?」


 いや、他国の大使館の昼食会に喧嘩を売るような真似はしないよ。でも、ゲイツ様だけでなく、パーシバルまで勧めるんだ。


「今夜頂く、ペイシェンス様の飛竜の料理への期待が高まります!」


 えええっ、やはり夕食までいる気なんだ。招待なんかしていないのに!


「それより、その特産品店をラドリーに作らせたら良いと思います。新居は、グリーンの助手で我慢させて、こちらを任せたら喜ぶでしょう。あっ、彼にも飛竜を食べさせてあげた方が良いですね」


 それって、ゲイツ様を夕食に招待したくないって私が考えているのがバレたのかな? だから、ラドリー様を巻き込む作戦なんだ。


「ペイシェンス、こうなったらサミュエルやお世話になったノースコート伯爵夫妻も招待したら如何ですか?」


 いきなりの招待だなんて……と戸惑うけど、飛竜なんて食べる機会は無いからね。予定があるなら断っても良いって感じで、ラドリー様とノースコート伯爵家に招待状を送る。


「ハッ、モラン伯爵夫妻も……」

 パーシバルの顔を見たら、苦笑された。


「父や母は、忙しそうです。ソースと肉とレシピを分けたら、喜ぶと思います」


 そうか、王族の縁談だらけで領地にも帰れていないんだもんね。


「いえ、エバに余分に作らせて、配達させますわ。一品、多くなっても大丈夫でしょう」


 ゲイツ様が「そんな事ができるなら、毎日、料理を!」とか凄く我儘な事を叫んでいるけど無視しよう。


 その日の夕食は、ノースコート伯爵夫妻とラドリー様を招待して、飛竜の試食会をした。


 細かく切ったきゅうりやパプリカなどと一緒に塩漬けされた飛竜の肉も裂いて、クレープで巻いてある。それを、スイートチリソースで食べるんだけど、美味しい! 


「パーシー様、今度、カルディナ街でライスペーパーを探したいですわ」

 あるかどうかはわからない。美麗様の屋敷でも生春巻きは出なかったからね。

 でも、無ければ作れば良いんだよ! 


「ああ、またペイシェンス様が新しい料理を考えておられる!」

 クレープ巻も大好評だったけど、私的には中身が透けて見える生春巻の方がスイートチリソースには合うと思うんだ。


「飛竜の肉も美味しいですが、このソース、絶品です!」

 スイートチリソースに嵌ったラドリー様は、特産品店の改修を引き受けてくれたし、新居の助手も「絶対にしたいです!」と言ってくれた。


「餌付けを禁止しましたが、もう諦めた方が良さそうです」

 パーシバルがコソッと耳元で囁いた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ペイシェンスとエバの苦労は絶えないけれど、貴重な人材と戦力を格安でかつ士気が上がった状態で手に入れられるのは最高ですね。
[良い点] 更新お疲れ様です。 スイートチリソース、美味しいですよね。今回はライスペーパーで巻く時に使う感じですが、個人的には揚げ物にかけてもわりかし美味しいと思います。 それでは今日はこの辺りで…
[一言] 外交とか国防が絡むと上位者の意思に従わざるをえないけれど、料理方面はペイシェンスが唯一他の追随を許さないジャンルですからこれはもう仕方ないね……。 友好的な有力者の接待は義務と割り切って、グ…
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