バーンズ公爵家にお礼を言いに行かなきゃ!
カエサルは、七月の終わりには王都に戻ると夏休み前の錬金術クラブで言っていたけど、公爵夫妻はそろそろ戻っておられるかな?
バーンズ公爵には、騎士二人、それに個人護衛のベリンダ、そして領地管理人見習いの二人を紹介して貰ったのだ。勿論、礼状は書いたけど、訪問してお礼を言わなきゃね。
今日もパーシバルが馬の王の運動に来てくれるから、これからの予定を調整しよう。
「丁度良かったです。両親も一度ペイシェンスと話し合いたいと言っているのです」
それって、社交界デビューの件だよね。
「そろそろ、パーティの予定が組まれる頃です。大きなパーティは、日程が重ならないようになっていますが、全て出るのは無理ですし、嫌です」
パーシバルもパーティはあまり好きじゃないみたい。そつなくこなしそうだけどさ。
「私もなるべく少なくしたいと思っています」
二人がそう思っていても、親の付き合いとか考慮しなくてはいけない。まぁ、グレンジャー家は、サリエス卿の婚約パーティだけだよ。
後は、ゲイツ様に言われている秋の食事会。
婚約者がいなかったら、やはりパーティとか開いて独身の貴族を招いたりしなくてはいけなかったのかも?
「私は、バーンズ公爵家にもお礼に行かなくてはいけませんの」
それは、パーシバルも同意する。
「ただ、夏休み中に作った物の殆どは、機密ですから……」
パーシバルに笑われた。
「それは、あの盾や指輪やペンダントは機密ですからね。それに、空飛ぶスケボーも!」
「でも、手持ち冷蔵庫や冷やし飴は、バーンズ商会でも売れると思いますわ」
パーシバルが非常識な物ばかりと笑うから、少し抗議しておく。
「あっ、それとナシウスが使っていた冷え冷えマフラーは、良いですね!」
夏休み前に見本を持って行ったけど、売り出せたのかな? 来年になるのかもね。
「ペイシェンスは、秋学期もクラブ活動をするのですか?」
普通の学生は、中等科三年の秋学期はクラブ活動どころではないから、引退するんだ。男子学生は、ロマノ大学の受験。女子学生は、社交界デビューして婚活!
まぁ、例外もあるよ! アルバートとかカエサルとか引退する気は無さそう。
「マーガレット様が部長ですから、音楽クラブは引退できそうにありませんわ。錬金術クラブもナシウスがいるから、続けたいのですが……」
そう、錬金術クラブは楽しい! それに、私は機械関係は弱いので、ミハエルに頼りたい気持ちもある。ただ、エクセルシウス・ファブリカ関係のがねぇ。
人数が増えたのは嬉しいけど、機密な物は錬金術クラブでは作れないのだ。
「あの盾や指輪や空飛ぶスケボーとかは、錬金術クラブでは無理ですからね。でも、体験コーナーは手伝ったら良いのでは?」
パーシバルは、私が錬金術クラブでわちゃわちゃ楽しんでいるのに理解があるね。男子学生が多いから、嫌がるかなと心配していたんだ。
「そうですね! 授業は殆どありませんから、錬金術クラブも行ける日は行こうと思います」
秋学期は、社交界デビューもあるし、領地にも月に一回は行きたいから、クラブ活動どころではないのかもしれない。
「それと、ハンナ様達との繋がりが切れるのが辛いから、料理クラブも続けたいのです」
パーシバルに笑われた。
「領地に行かない時は、クラブ三昧ですね。でも、パーティで疲れるから、無理をしないように」
少しパーシバルといちゃいちゃタイムになったけど、バーンズ公爵家に訪問しても良いかとお伺いの手紙を書く。
それと、いつもお世話になっているノースコート伯爵夫妻や、少し苦手なアマリア伯母様にもご機嫌伺いの手紙を書いた。
「ペイシェンスの字は、本当に綺麗で読みやすいですね」
パーシバルに褒めて貰えたよ。飾り文字は格好良いけど、多用しすぎると読み難いから、文章の最初だけにしているんだ。
「習字を習わない方が多かったのですが、困らないのかしら?」
パーシバルは、家政コースの事情に疎い。でも、金持ちの貴族の事情には詳しい。
「字の綺麗な祐筆を雇っているのかもしれませんが、仕事関係ならいざ知らず、私的な手紙は……考え方が古いのでしょうか?」
それと、大きなパーティの招待状とかは、専門家がいるみたい。印刷もある世界だからね。
ただ、宛名は夫人が書く場合も多い。誰を招待するか、把握する為にね。
「でも、家政婦に任せる貴婦人もいると母が言っていました。だから、私的な手紙以外は人任せなのかもしれませんね」
それすら、人任せにした方が良さそうな悪筆の人もいそう。
そんなことを話している間に、キャリーはバーンズ公爵家に手紙を届け、返事を貰って来た。
上級貴族の家にもお使いができるようになったんだね! まぁ、メアリーが私とパーシバルを二人っきりにしたくないからかもね。それに、バーンズ公爵家は未熟なメイドが失敗しても許してくれそうだからかしら?
「あら、午後からなら時間が取れるそうですわ。パーシー様、どうしますか?」
これまでは、私だけで訪問していたけど、夏休み前は二人で行った。ゲイツ様やサリンジャーさんも一緒だったしね。
「バーンズ公爵は、魔法合宿や騎士合宿の成果も知りたいのでしょう。竜の件を真剣に受け止めておられますから」
本当にバーンズ公爵やブロッサム公爵は、ローレンス王国に尽くそうとしているね。
ラフォーレ公爵は……文化面で尽くして貰おう! 嫡男のチャールズ様、貴方は防衛面も頑張ってね!
私は、今でもマーガレット王女は、チャールズ様と結婚した方が楽な生活ができるのではないかと、心の奥底では考えているんだ。
弟のアルバート様と一緒に音楽サロンを開いたりもできるしね。
ただ、パリス王子に恋しちゃっているし、国益的には仕方ないのかも。
「ペイシェンス、また夜で悪いのですが、夕食後にゆっくりと話したいと両親は考えているみたいです」
外務省は、王女や王子達の婚姻で、凄く忙しそうだ。外務大臣のパーシバルの父親は、領地にも帰っていない。
「ええ、それで良いです」
それに、夜に馬車でデートできるよ!




