ドレスメーカー
エバは、美麗様の御屋敷で、料理人からカルディナ帝国料理を詳しく教えてもらったみたい。
「こちらに美麗様を招待しようと考えています。料理人も呼んでも良いかしら?」
帰ったらすぐに、メロンと礼状を美麗様に送り、王 芳 さんに屋敷に招待しても良いかとお伺いを立てたのだ。
王 芳 さんからは、すぐに「美麗様はお喜びでしょう!」と返事がきたから、招待状を送ろうと思っているのだ。
こんな時、父親は文句を言わずに了解してくれるから、楽だよね! 後は、エバの都合だよ。
「凄く丁寧に教えてもらったから、私もローレンス風の料理を教えたいです」
本当にエバは律儀者だから、そう言うと思っていたよ。
「では、王 芳 さんに料理人は、朝から来るように伝えておくわ」
美麗様にカルディナ帝国語で招待状を書けたら良いのだけど、まだ自信がないからローレンス語で書いた。
これまたすぐに王 芳 さんから返事がきて、美麗様を招いての食事会の日が決まった。明々後日にするよ。
食事会の支度は、ミッチャム夫人とエバに任せておけば大丈夫だから、私は友だちと会う。
今日は、ハンナ達が午前中に来る予定だ。
仮縫いまでした新作のドレスと、彼女達の姉上達のお古のドレスのリメイクを持ってきた。
「とても綺麗に縫えていますわ」
本縫いを自分ですると言った時は、大丈夫かしらと少し案じていたけど、彼女達は縫い物に慣れているみたいだね。
それと、夏休みのお土産の交換会になったよ。私は、サティスフォードのファンシーな店で買った半貴石のアクセサリーを渡す。
「まぁ、こんな可愛いアクセサリーを! 高価ではないのですか?」
ハンナが驚くけど、半貴石だから、そんなに高くない。
今回も、レースや綺麗な色の毛糸など、手芸の材料を貰ったよ。
昼からは、エリザベスとアビゲイル。
「夏休みに作って貰ったドレスを着たのだけど、凄く好評だったの」
エリザベスは、自分のデザインが好評で嬉しそうだ。
「ええ、私たちって中途半端な年頃だから、お子様ドレスじゃないのが良かったの。これからは、社交界デビューになるから、大人用のドレスになるけど、既婚の夫人より若々しいのにしたいわ」
エリザベスとアビゲイルから、使っているドレスメーカーの事情を聞く。
「お母様と同じドレスメーカーだから、子ども服といきなり大人用のドレスしかないのよ。正式な社交界パーティドレスは、それでも良いけど、気軽なドレスはちょっと年寄りっぽくて!」
ああ、それは分かる気がする。正式なパーティドレスなら大人びたのでも良いけど、まだ若いんだもの。母親世代と同じデザインは嫌だよね!
うちには母親がいないから、参考にできないけど、伯母様方と同じようなデザインのドレスを着るのは嫌だな。
「アップタウンのドレスメーカーで良い人がいると良いのだけど……」
ファッション感覚が鋭いエリザベスだけなく、アビゲイルも不満を持っているみたい。
「ドレスメーカーのショーウィンドウ、あまりパッとしませんものね」
バーンズ商会で収穫祭の時に、ディスプレイを頑張ったんだ。でも、その後は元に戻っている感じなんだよね。
商品をただ陳列しているだけなの。つまんないけど、あのディスプレイは収穫祭だから特別って感覚なのかも?
「それに、ドレスメーカーに行く人より、屋敷に呼ぶ方が多いからかも? だから、お母様もドレスメーカーを変える時は、他の方から紹介してもらう感じなのよ」
そうか、エリザベスもアビゲイルも伯爵令嬢だものね。自分で買い物に行ったりしないで、来させるのだ。
まぁ、メアリーはそうしたら良いって考えみたい。二人に、使っているドレスメーカーを教えてもらう。
エリザベスのお母様が使っているドレスメーカー、モラン伯爵夫人と同じマダム・トレメインだった。高級そうだね。
アビゲイルのお母様のドレス・メーカーは、少しお年を召しているみたい。アビゲイルも、もう少し若いドレスメーカーを探しているんだって。
私は社交界デビューするけど、年齢はまだ若いんだよね。だから、母親世代と同じデザインのドレスは、着こなすのが難しいかも?
でも、お子様ドレスは嫌だし……私の前世の記憶だけでデザインするのも限度がある。
「難しいですわね。モリーとマリーは、まだ新しいデザインを考える程のキャリアは無いのです。新しい感覚のデザイナーがいると良いのですが……」
結局、エリザベスとアビゲイルは、気軽に着れる秋冬物を注文して帰った。
こちらには、メロンをお土産に渡した。
私は、ラシーヌに手紙を書いて、新しい感覚のドレス・メーカーを知っていないか尋ねる。知っているなら、紹介して貰えないか頼む。
ラシーヌに使いに出したキャリーがすぐに返事を持ってきた。
「ふむ、ふむ、お茶会に招待されたわ。この前のグレンジャー館でのお茶会のお礼みたい」
それと、ラシーヌが使っているドレス・メーカーも教えてくれた。ただ、ラシーヌも少し年配っぽいと不満を持っているそうだ。
今日は、あちこちから情報が集まる日だね。
シャーロッテ伯母様も王都に来たみたいで、同行させた家政婦見習いを紹介したいと手紙がきた。
「嬉しいわ!」私が結婚する前に、グレンジャー家の家政婦を育てておかないといけないのだ。
ミッチャム夫人が来る前にどうやって生活していたのか、自分でも不思議だよ。
グレンジャー家には、執事のワイヤットがいるけど、細々とした家事の差配は、やはり家政婦がいないと困る。
すぐに、礼状を書いて、届けさせる。
シャーロッテ伯母様からの返事は、すぐに戻ってきた。
「ミッチャム夫人、家政婦見習いのローザさんが、明日面接に来るそうです。一緒に会って下さい」
シャーロッテ伯母様のお眼鏡に適った人だから、大丈夫だと思う。やっと、グレンジャー家にも家政婦が残ってくれそう。




