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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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サリンジャーさんの夏休み?

 ノースコートに行かれたゲイツ様が、夕方にサリンジャーさんを伴って、ハープシャー館に帰ってきた。モンタギュー司教はどうなったのか、聞きたいけど、きっと追い返して下さったのだろう。


「ペイシェンス様、サリンジャーを泊めてやって下さい」


 それは良いけど、何故サリンジャーさんがいるのかしら?


「ペイシェンス様、図々しいお願いですが、泊めて頂けるでしょうか? ゲイツ様を王都まで連れて帰れと国王陛下から命じられています」


 横で聞いていたゲイツ様が騒ぐ。


「お前も夏休みを取ると言っていたではないか! それに、あと五日あるのだ」


 ふぅ、夏休みの件は、二人で話し合ってもらおう。


「サリンジャー様、どうかゆっくりとお過ごし下さい」


 見つかって拙い物は隠しておこう! 隠蔽の魔法陣は、王都に帰ってから考えて貰ったら良いよね。


「あのう、五日間だとご褒美はチョコレートだけですが、オルゴール体操されますか?」

 

 サリンジャーさんは、魔力量を増やすよりも、睡眠時間を優先したいそうだ。


 食い意地の張っているゲイツ様は、オルゴール体操に参加しているけど、お疲れのサリンジャーさんの態度の方が大人として普通なのかも? 


 その夜は、お疲れのサリンジャーさんと、バーベキューの途中で呼び出されたゲイツ様の為に、マッドクラブ尽しにしたよ。


 マッドクラブ、討伐しても、どんどん湧いてくるから、騎士達に定期的に討伐して貰っている。ローラン卿は、特に熱心に討伐しているみたい。蟹が大好きなのかも? 

 冒険者ギルドにも常設依頼を出しているけど、数人がかりでやっと討伐するみたいなのだ。こちらでは、巨大毒蛙の粘液、巨大毒蜘蛛の糸、ナメクジの粘液などを頑張って集めて貰おう。


「やはり現地で食べる方が美味しいですね」

 サリンジャーさんには、いつもお世話になっているから、エバの美味しい料理を堪能してもらいたい。


「それより、ペイシェンス様! 秋の食事会を忘れないで下さいね」


 それは、良いけど……他の人の圧も凄いんだ。


「秋は社交界デビューもありますから、簡単なお食事会になりますわ」


 つまり、大人数の食事会を開きたくないと遠回しに言う。


「マッドクラブのパエリアです」


 ああ、これは見ただけで美味しいとわかるよ。皆も食事会の事を忘れて、食べてくれたら良いのにね。


「ペイシェンス様、私も絶対に食事会に招待して下さい」


 ラドリー様には、本当にお世話になったからね。招待しないといけない。


「ユージーヌ卿との婚約パーティには来て欲しい」

 サリエス卿に招待された。これは、お返しに食事会に招待するべきだろう。


 心を鬼にして、学生達は招待しないよ。それに、食材はゲイツ様持ちだから、人数をあまり増やすのも良くないだろう。


「ペイシェンス様、サリンジャーも招待してやって下さい」

 黙ってマッドクラブのパエリアを食べていたサリンジャーさんが、手を止めた。


「ゲイツ様! 何をやらかしたのですか?」


 親切に食事会に招待させるだなんて怪しいとサリンジャーさんは、ゲイツ様を問い詰める。


「いや、秋の美味しいきのこや魔物の肉を、ペイシェンス様に料理してもらうから、お前も一緒に食べたら良いと思っただけだ」


 ゲイツ様の面の皮は厚い。全く、表情は変わっていないが、サリンジャーさんは何年も苦労しているから騙されない。


「絶対に問題が起こっていますね。でも、私も夏休み中ですから、わからないようにして下さい」


 おお、ワーカホリックのサリンジャーさんが、夏休みを本気で取るつもりだ。拍手したい気分だよ。


 ヘンリーの空飛ぶスケボーは、可哀想だけど禁止にしよう。それに、パーシバルとデートをしなくちゃいけないから、錬金術関係はしない。大丈夫だよね?


 次の日の朝、サリンジャーさんはゆっくりと寝る方を選択した。

 朝食もゆっくりと起きてきたし、その後は、散歩をして過ごすそうだ。


「海水浴に行かれても良いのですよ。昼からは、弟達は海水浴に行くそうですから」


 散歩と言っても、ハープシャーは田舎で楽しくないのでは? と海水浴を勧める。


「いえ、無為に過ごしたいのです」


 ふうむ、それなら放置しておこう。

 それに、今日はパーシバルとデートする予定なんだ。


 昼は、モラン伯爵領に遠乗りする。パーシバルの用事があるからだけど、私も湖に用事があるんだ。


 でも、デートを楽しみたいから、そちらは後にしても良いかもね。

 モラン伯爵領までは、馬の王(メアラス)でパーシバルと二人乗りで行く。

 護衛のベリンダ、そしてカミュ先生が付き添いだ。

 後は、エルビス卿が数人の領兵を率いている。


「そんな大袈裟にしなくても?」と私が言ったら、ローラン卿に叱られた。


「子爵様なのですから、騎士や領兵が護衛に付くのは当たり前です。それに、領兵の訓練になりますから」

 

 どちらかと言うと後ろの方が本音かもね。


 モラン領で、パーシバルが管理人と話している間、私は湖を見ていた。

 本当に綺麗な湖で、心が洗われる気がするよ。


「ペイシェンス、お待たせしました」

 打ち合わせを済ませたパーシバルと湖でボートに乗る。


 今日は、弟達は海水浴をするそうなので、パーシバルと二人っきりだよ。

 夏休み、本当にデートする暇がなかったから、湖でボート遊びをするのも楽しい。


「ペイシェンス様、何か考えがあってモラン領に来られたのではないですか?」


 パーシバルは、私をよく理解している。それに、初めに港、ダム、発電所などを話していたからね。


「ええ、でも実際に領地を拝領して、ダムは無理だと思うようになりました。ダムに沈む土地に住んでいる人々の暮らしを考えると……」


 ダムを作って水力発電は無理でも、カザリア帝国の蓄魔システムが代用できそうなんだ。


「そうですね。机上の考えと実際とは違いますから」


 港は、まだ考え中だよ。遠浅の海岸を残す所と、埋め立てる所をよく視察して考えてからじゃないとね。


「では、ここに来られたのは?」


「パーシー様とデートしたいからですわ」


 これも本当だよ! でも、パーシバルは笑っている。


「前に真珠の養殖の話をしたのを覚えていらっしゃるでしょうか?」


 まずは、私だけで実験している。海老の養殖は、生簀を使った方が効率的みたいなので、その網を利用したんだ。


 真珠ができる貝に骨で出来た核を埋めて、筏に吊るした。その周りをあの電撃網で囲んでいるのだ。


「ええ、上手くいくか実験をされているのですよね?」

 ふふふ、パーシバルは宝飾関係は疎いみたい。


「今、私がしているネックレスは、リリアナ伯母様に頂いた淡水真珠なのです」


 パーシバルがボートを漕ぐのをやめて、しげしげと淡水真珠を見ている。


「海で取れる真珠より、小粒ですが、これも養殖できるのでは? と思っているのです」


 パンと手を叩いて、パーシバルが笑う。


「素晴らしいです! モラン伯爵領には、これと言った特産品がなかったのです」


 ふふふ、上手くいくと良いな!


 二人で浮き浮きとハープシャーに戻ったら、サリンジャーさんが待ち構えていた。

 無為に過ごす夏休みの筈だったのに、有能過ぎるから、あれこれ気づいちゃったみたい。


「夕方からは、グレンジャーでデートする筈なのに……」

 パーシバルは、今日は無理でしょうと肩をすくめた。

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― 新着の感想 ―
水力はダム式でなくても発電量や効率は悪いですが自流式の発電もありますよ。管営(自治体)がやっています。 穀物系なら米の籾殻から精米した後の殻からガス化して発電して炭化させるのを350℃程にすれば燻灰に…
[一言] グレンジャーの司祭、このまま「であれば」独身だろうな、後任として優秀なのが派遣されたら困るから。対策を講じておきたいところだな モンテス氏や、独身の上級使用人の、結婚相手、領内で住んでくれ…
[一言] 値下がりしないよう、作りすぎず、売りすぎず 値段や売る人は、選んでブランド化だね 既製品でなく、オンリーワン商品の方が、金(と権力)で何でも手に入れられる貴族にはいいだろう サリンジャーさ…
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