グレンジャー館でお茶会
家族やゲイツ様、ラドリー様、サリエス卿とユージーヌ卿を招待したプレオープンは大成功だったので、ノースコート伯爵夫妻を招いて、お茶会を開くことにした。
今回は、残念ながら弟達は参加させないつもりだったけど、サティスフォード子爵夫妻と共にアンジェラも来るみたい。
サミュエルは、久しぶりにノースコート伯爵夫妻と会うのに参加する予定だったから、ナシウスをどうするか悩んじゃう。
でも、参加するのは、父親とパーシバルと私とサミュエルだけになった。
何故なら、皆、飛ぶ練習に夢中だから。
「ナシウス、良いなぁ! 私もお茶会より、飛ぶ練習をしたい」なんて、サミュエルは文句を言ったけど、アンジェラが来ると知ってからは、黙った。
飛行訓練、雇った騎士達も参加している。勿論、パトロールはしているよ!
今のところ、飛べる? のは、ルーシーぐらいかな? 勉強は、もうちょっと頑張らないと駄目だけど、彼女は兎に角、魔法が大好きだし、風の魔法は得意だからね。
そして、ナシウス! 後一歩! パーシバルも頑張っているよ。
ヘンリーは、スケボーで自由自在に飛んでいる気がするけど、スケボー無しでは駄目なのかな? いける気がするんだけど。
今回は、ゲイツ様もラドリー様も参加しない。何故なら、あれこれ貴族から依頼されたり、縁談を持ち込まれるのが嫌だからだ。
それと、今回はエバはハープシャー館にいる。これが大きいのかも? 本来なら、領地の料理人だけで、接待できるようにしなくちゃいけないのだけど、グレンジャー館にいるゲイツ家の使用人にほぼ助けて貰っている。
ハープシャー館の料理人見習いにも、手伝わせるけどね。早く、覚えて貰わないといけないな。
私達は、グレンジャー館で昼食の予定。ついでに、教授達と打ち合わせをしたい。
退屈そうなサミュエルは、馬の王で遠乗りをして貰っている。
海辺を走るのが、馬の王は気に入ったみたい。必要なさそうだけど、足腰強化になりそう。
ライトマン教授は、ラドリー様と一緒に色々と建物を建てたり、改築して貰っているから、打ち合わせはパス。
リンネル教授、凄く日焼けしているけど、大丈夫かしら?
「ペイシェンス様! あのさつまいもは、素晴らしいですよ! 種芋ではなく、茎で増やす事ができるのですね。これは、北部でも作れたら、寒害も防げるのですが……」
どうだろう? さつまいもって、暖かい地方のイメージだ。
「それは、やってみないとわからないですわね。元々、南の大陸で栽培されているみたいですから」
さつまいもと呼んでいるけど、これは脳内変換されているのだろうか? なんて考えちゃうよ。
「オリーブは、かなり植え付けが進んでいます」
空き地が多いから、使える土地は多いんだ。それに、海岸近くの土地は、塩害があるから元々空き地なんだよね。
リンネル教授には、ハーブのポット苗も作って貰っている。これは、グレンジャーとハープシャーの市で売るつもりなんだ。
市っていうほどのものではないけど、モンテス氏が管理人になってから、週に一度、市を立てている。
現状、ハープシャーが火曜日、グレンジャーが木曜日。まぁ、農家の人や漁師が物々交換している感じ。
これをもっと強化したい。
「麦芽糖で甘い飲み物を作って、市で売ったらどうでしょう?」
見本を、教授に渡す。少し生姜を使っているよ。
「これは、美味しいですね」
夏場は冷やし飴、冬場は生姜湯として売れば良い。
「ただ、私達が売るのはどうかしら? 地元の人に売って欲しいのですが」
これが問題なんだよね。私が作って売るのは簡単だけど、それでは領地は繁栄しない。
「先ずは、味を知ってもらう必要がありますよ」
それも一理ある。誰か、商売気のある人がやってくれたら良いのだけど。
「今週の市から売ってみようと思っています」
リンネル教授は、それまでにハーブのポット苗を用意してくれると請け負ってくれた。
「それと、さつまいもも領地に増やしたら良いと思います。こちらも、配れるように増産しておきますが、味を広めるのも良いですよ」
そうだね! 簡単にできる蒸し芋とか、焼き芋を市で売るのも良い。
ベッカム教授は、グレンジャー海老も養殖したいと乗り気だ。きっと、グレンジャー海老のテルミドールが気に入ったのだろう。
「ケイレブ海老の養殖は初めて行いますが、やはり、マッドクラブが餌場にしそうです。網で養殖より、海岸近くに水槽を作った方が良いかもしれません」
これは、またライトマン教授に依頼しないといけないな。それと、海水を循環させるポンプを作らないと!
「鮭の養殖についても研究しています。これも、水槽である程度、稚魚を大きくしてから放流した方が良いと思います」
やる事が山積みだよ! 昼食は、ランチミーティングになった。学生達からも、意見を聞きたいからね。
「あのう、夏休みが終わっても、私達はここで研究を続けたいのですが……」
遠慮がちに言われたけど、こちらがお願いしているほうなんだよ。
「ええ、勿論ですわ! それに、グレンジャー館の横に研修施設を作ろうと考えているのです」
学生達から、安堵した溜息が漏れた。
「ははは、学生達には、グレンジャー館は贅沢過ぎるみたいなのです。それに、ホテルにすると聞いて、滞在できなくなるのではないかと心配していたのです」
リンネル教授が笑う。それは、連絡ミスだったね。
「来年からホテルにしたいと考えていますが、それまでに研修施設も建てますわ」
ベッカム教授も笑う。
「あのプールやテラスが素晴らし過ぎて、学生達はここにいても良いのか不安に思ったようです」
確かにね! あの浅いプール、空を写して真っ青で綺麗なんだ。
グレンジャー館のお茶会! 大成功だったよ。
「まぁ! 噂には聞いていましたが、グレンジャー館がこんなに素晴らしくなっているなんて!」
ラドリー様のお陰だよ。リリアナ伯母様は、ここに住みたいと愚痴る。本当にお客様が多くて、大変みたい。
「夕方も素敵なのですよ」
夕日にプールがオレンジ色に染まって、魔導灯や松明の火がゆらめいて、なかなかロマンチック! パーシバルとのデートは未だだけど、夏休み中には絶対にね!
アンジェラはメロンパフェに夢中で、サミュエルが目に入っていなかったけど、お茶の途中で庭を案内させたよ。
サティスフォード子爵は、冷凍馬車の代金とお礼を言ってくれた。
アフターヌーンティースタンドは、リリアナ伯母様がちょっと考え込んでいた。
「気のおけない方とのお茶会では使いたいけど、話を変えるタイミングにもなるから、前のままのスタイルの方が良い方もいると思いますよ」
つまり、嫌な人とのお茶会には向いていないみたい。




