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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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ヘンリー、空を飛ぶ!

 次の日は、雨もあがって快晴だった。オルゴール体操も、やはり太陽の下が良いよね。

 魔素を多く吸収できるし、やはり夏休みの早朝らしいから。


 今日も、モンテス氏と打ち合わせをする。いつも一緒のパーシバルは、馬の王(メアラス)と遠乗りに行った。

 昨日は一日中、雨だったから、少ししか走っていないのが不満みたいだったからね。


「リリアナ伯母様から、早くグレンジャー館でお茶をしたいと手紙がきましたの」

 これは、アダムに任せる案件だけど、グレンジャー館の料理人にメロンパフェを覚えて貰わなきゃね。


「アダムが張り切ってラドリー様とテラスなどの改修を致しました。一度、子爵様に見て頂きたいと言っています」


 それは、是非見たいね!


「ノースコートからお客様をお呼びする前に、プレオープンしたら良いと思います」


 エバにグレンジャー館に行ってもらって、ファビやサングに直接指導して貰っても良い。


「いきなり、大勢ですと困るのでは?」


 ああ、今はハープシャー館に滞在している人が多いからね。


「ええ、そうですわね。家族だけに絞っても……ゲイツ様とラドリー様は、絶対に参加されそうですわ」


 あの二人、才能はピカイチなのだけど、食い意地が張っているのが欠点だ。

  

 でも、ラドリー様には領地の建物を建てて貰ったり、改築して貰っている。これは、絶対に招待しないといけない。


 ゲイツ様は、招待しなくても参加するのは分かっている。


「後は……学生達は、今回は我慢して貰いましょう!」


 ルーシーやアイラ、それにジェニーとリンダ、クラリッサもお留守番だ。


 学生組だけど、弟達やサミュエル、そしてアルーシュ王子とザッシュは参加だね。

 後は、サリエス卿とユージーヌ卿も招待したい。


 グレンジャー館に行く人数をミッチャム夫人に伝えて、アダムとエバに手配してもらう。任せる人ができて、少し楽になったよ。


 さて、今日はヘンリーと空を飛ぶ練習だ。

 メアリーを説得して、ズボンを穿いている。何回も空を飛ぶ予定だからね。


「今日は、自分で空を飛んで貰いますよ!」


 つまりゲイツ様は、空に打ち上げるつもりは無いみたい。


「多少、失敗しても、私が何とかしてあげますから、思いっきり飛んでみたら良いのです」


 ふうん、まぁ、そちらの指導はゲイツ様に任せて、私はヘンリーに飛び方を教える。


「お姉様、私は飛べるようになるのでしょうか?」


 ああ、可哀想に! 昨日の雨で空を飛ぶ練習は無かったけど、ヘンリーはずっと考えていたんだね。


「ヘンリーは、生活魔法が使えるでしょう?」


 それには「はい!」と頷く。


「私は、生活魔法で空を飛んでいるのです。だから、ヘンリーも覚える事ができると思いますよ」


 ヘンリーは、元々、前向きな考え方の子だし、空を飛びたいという熱意に溢れている。


「さぁ、何回も空を飛んで、飛び方を身につけましょう!」


 ゲイツ様が、どうなることやらと肩を竦めている。

 私の弟愛を舐めて貰っては困るよ! 絶対にヘンリーを飛べるようにするからね。


「手を繋いで、空を飛びましょう!」


 前にナシウスに言われた点を注意しなくては! 囲んで、空に上がるのではなく、風を捉えて上がるのだ。


「お姉様、前に空に打ち上げて貰った時と同じ感じです!」

 ヘンリーは、よく覚えているね。


「ええ、この感覚を覚えて、自分で使えるようにならないといけないのですよ」


 ある程度の高さに来たら、ホバリングを教える。


「こうして、風を使って、空中に留まるのです」


 ヘンリーは、まだこれはわからないみたい。


「何回もすれば、わかりますよ!」


 ここからは、ヘンリーが自分で下りたいと言うので、手を放す。


 私は、何故か下りるのが苦手だけど、何とか下りた。

 前世の傘を持ったナニーみたいには、優雅には下りれなかったよ。着地は減点だ。


 午前中は、何度もヘンリーと空を飛んだ。


「一人でやってみます!」

 ヘンリーが一人で挑戦したけど、サリエス卿じゃないけど、身体強化のジャンプになっている。凄く高いけどね。


 うん? 身体強化で空は飛べないのかな? 


 あの浮かぶボードに片足を固定して、地面を蹴って、空を飛ぶ。私には無理だけど、ヘンリーならできるのかも?


 昼の休憩の間に、私はスケボーに足を固定できる装置が付いたのを作った。

 

「ペイシェンス、何を作ったのですか?」


 パーシバルは、一昨日、失敗したのにと不思議そうだ。


「これは、空に浮かぶスケボーですの。私は、無理でも、ヘンリーなら使いこなせそうですわ」


 それと、ヘルメットと肘当て、膝当ても作ったよ。ヘルメットには、守護魔法陣を描いて、魔石を嵌め込めるようにしてある。


 午後からの練習で、ヘンリーにヘルメット、肘当て、膝当てを装着させる。こんな時は、従者見習いのルッツにさせる。これも練習だからね。


「ヘンリー、右足をここに固定して、左足で地面を蹴ってみて!」


 ヘンリーは、運動神経が抜群に良い。


「初めは、少しずつですよ!」


 注意したけど、私から見たら、思いっきり蹴っているようだ。


「わぁぁ! これ、面白いです」


 グレンジャー館の訓練所の中をヘンリーがすっ飛んでいく。


「ペイシェンス様、また厄介な物を!」


 ああ、そう言えばストップを掛けられていたかも?


「ゲイツ様、これはスケボーですわ」

 ちょっと浮いているだけだよね。


「ヘンリー、こちらにいらっしゃい」


 ヘンリーが嬉しそうに、私の所にくる。もう、カーブもできるんだね。お姉ちゃん、驚くよ!


「お姉様、とても楽しいです!」


 ううん、これは楽しそうだけど、空を飛ぶとは言えないよね。


「ええ、でももっと活用できるのですよ」


 ここで私が見本を見せてあげられたら良いのだけど、運動神経が微妙なんだよ。身体的も下手だしね。


「ペイシェンス様、私がやってみます!」


 横で見ていたゲイツ様は、私が考えていた事がわかるの? また考えが漏れているのかしら?


「ふふふ、精神防衛はちゃんと起動していますが、このくらい誰でもわかりますよ」


 チェッ! 単純だと馬鹿にされた気分。


「ヘンリー君、よく見て覚えなさい」


 偉そうなゲイツ様だけど、怪我とかしたら困る。


「ヘルメットと肘当てと膝当てを!」

 ヘンリーのを渡させようとするけど、笑われた。


「そんなの必要ありません!」


 ヘンリーが渡した浮くスケボーに片足を固定すると、角度を空に向けて、片足で地面を蹴った。


 ビュン! と空に上がったゲイツ様がくるりんと円を描いて、下に下りてきた。


「これは、空を飛ぶ練習に良いですね。ヘンリー君、やってみなさい」


 ヘンリーは、喜んで浮くスケボーを地面に降ろすと、ゲイツ様の見本を真似て、角度をつけて空を飛んだ。


「本当に、ヘンリー君の身体強化は天才級です! それに、ペイシェンス様の生活魔法での飛び方も少し使っていますね」


 えっ、それは分からなかったよ。お姉ちゃんなのに!


 空を一周して、緩やかにヘンリーは下りてきた。


「お姉様、これで練習したら、空を飛べるようになりますか?」


 キラキラの目が眩しい。私は、練習になればと思って作ったけど、飛べるようになるかは自信がないんだ。


「ええ、なれますよ!」

 ゲイツ様は、自信があるみたい。何だか負けた気分だよ。


 それを聞いていた他の人達が、羨ましそうに浮かぶスケボーを見ている。

 

「これは、ヘンリー君専用ですからね! 貴方達は、自分で飛べる筈です!」


 がっかりしたけど、やる気にも火がついたみたい。王宮魔法師が飛べると言うなら、飛べるのだろうと信じているのだ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 傘をさしたナニーが空から降りてくる…。古すぎて誰も突っ込んでないけど、元ネタを知ってる自分って歳なんだなぁと実感してしまった(笑)
[一言] モラン家から来る騎士2人、合宿に参加できず、かな 土地ほしい騎士が多すぎる気がするけど、大丈夫?
[気になる点] ペイシェンスが、生活魔法を暴走させる時は「誰かのために祈った時」? 元祖ペイシェンスも、死に際に変な生活魔法を暴走させたと思われるし、自分のために使うより、他人のために使う方が威力が増…
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