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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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雨の日は……

 次の日、飛行訓練に熱意を持つ皆には生憎の空模様だ。雨がしとしと降っている。

 私は、ヘンリーへの回答がまだ準備できていないので、一日延びてホッとしている。


 一日で、何とかできるとは思わないけど、それでも皆が空を飛ぶ練習をしているのをヘンリーが見ているより、マシだよ。


 今日の予定を朝食後にモンテス氏と話し合う。

「午後から、ミリアム様がいらっしゃいます」

 それも、重要な予定だ。今は、館に雇った下男や下女に他の使用人が空いた時間に文字や計算を教えているけど、効率が悪いんだ。


 手紙を書いたら両親が許可を出して、ミリアムがハープシャー館に来ることになった。


「ミリアムには、先ずは屋敷の下働き達に文字と計算を教えて欲しいわ。それから、ハープシャーとグレンジャーで週に二日ずつで良いから勉強を教えて欲しいと思っています」


 ただ、場所が問題なのだ。庶民は、領主の館には出入りし難いみたい。

 教会で教える場合が多いみたいだけど、できたら別にしたい。特に、グレンジャーの司祭は、何を考えているか未だよくわからないからね。


「空き家の一つを学校にしても良いのでは?」


 空き家は、何軒かあるからそれでも良い。


「それは、ライトマン教授の助手に大工を使ってやってもらいましょう。ああ、食事をご褒美に子どもを集めたいから、簡単な台所も必要ですわ」


 本当なら、親が子どもの教育の必要性を認めて学校に通わせるのが理想的だ。でも、この世界では、子どもも働き手の一人だから、何かで釣らないといけない。


「ミリアム様と話し合って決めた方が良いですね」

 そうなんだよね。館で下男や下女に教えるのは、未婚の令嬢でも問題ない。

 でも、一人で学校で教えるのは? 私は、大丈夫だと思うけど、こちらの慣例的には問題があるのかも。


「誰か助手をつけても良いのですよ」

 ふぅ、これは未だ町だけの話なのだ。小さな村は、手付かずのままだ。


 ハープシャーとグレンジャーの間の道は、整備されているけど、他の村への道も手付かずだ。

 ライトマン教授は、農閑期に住民を使って整備したら良いと言われた。

 つい、焦ってしまうけど、領民にお金が落ちるし、その方が良いのかも。


 午前中は、合宿組は学習だ。パーシバルやアルーシュ王子やザッシュなど、学習が必要ではない人達は、室内訓練所でサリエス卿とユージーヌ卿と剣術の訓練をするみたい。


 私は、ゲイツ様と錬金術部屋だ。守護魔法陣のベスト、指輪、ネックレスは後回しにして、ヘンリーに空を飛べる魔法を教えるか、何か魔道具を作らないといけない。これを最優先したい。


 ゲイツ様に輸送革命になると言われたけど、浮く魔法陣はゲイツ様のお祖父様が本に載せていたんだよ。


 ただ、飛ぶ方は、やはり魔法を教えた方が良いのかも?

 

 浮かんだ板に風を送る魔法陣を重ね描きしたら、空にすっ飛んでいってしまった。

 危険すぎるよ! ヘンリーがぶっ飛んだら、大変だもの。


 こういった機械関係の調整は、ミハイルが上手いんだけど、領地に行っているんだよね。去年の錬金術クラブの合宿が懐かしい。


 空飛ぶスケボーは、私だけでは無理かも? だから、何とか魔法で解決したい。


「ヘンリーは身体強化だけだと教会では言われましたが、生活魔法も使えるようになったのです」


 ここしか、攻める箇所はなさそう。私も、生活魔法で空を飛んでいるのだから! ゲイツ様は、私が悩んでいるのを楽しんでいるみたい。腹立つ!


「ペイシェンス様の生活魔法は、かなり風変わりですし、ヘンリー君はそれを習っているのですから、ワンチャンスはありますね」


 それ、褒めているようで貶しているのでは? 


「私が空を飛ぶのも生活魔法なのでしょうか? よくわからなくなってきましたわ」


 ゲイツ様も考え込む。


「生活魔法、そのものが、研究不足ですからね。大叔母のジェファーソン様に教えてもらう必要があるのかもしれません」


「ジェファーソン先生は、生活魔法を極めれば、何でもできると言われましたわ。その意味をもっと真剣に考えないといけないのですね」


 前にも反省したけど、領地の改革や学園生活の忙しさに紛れて、つい後回しにしてしまっている。


「夏休みなのだから、本気で生活魔法について考えてみては如何ですか? 一見、遠回りに思いますが、その方がペイシェンス様の魔法の強化に繋がると思います」


 珍しく、ゲイツ様の真面目な指摘だ。


「そうですね! ヘンリーに生活魔法で空を飛べる遣り方を教える事ができるかもしれませんもの」


 ゲイツ様がガックリきている。


「その弟愛から離れる事は無理なのでしょうか。まぁ、それが探究心を押し進めるなら、それも良いのかも?」


 何かぶつぶつ言っているけど、私は午前中ずっとヘンリーが生活魔法で飛べるようにする為には、どうしたら良いのかを考えていた。


 ゲイツ様は、マグナム様の浮く魔法陣や私が盾に描いた反射する魔法陣を研究していた。


「ふふふ、これなら魔石の消耗も減らせますね!」


 うっ、悔しい! 反射の魔法陣、かなり描き変えられている。


「私は、魔法陣の勉強を、もっとしないといけませんわ」

 ただ、ロマノ大学の錬金術学科には、グース教授がいるから、近づきたくないんだよね。


「だから、それは私が教えてあげますよ。言っておきますが、グースより錬金術も上手ですからね」


 うっ、それってゲイツ様の魔法指導が続くって感じなの? 確かに、王宮魔法師の指導なんて、贅沢な話なのだけど、魔法省に入れたいという下心が透けて見えるどころか、あからさまだからね。遠慮したい!


「ロマノ大学の錬金術学科には、他の教授もいらっしゃるのでは?」

 グース教授だけって事はないよね?


「いるでしょうが、学科長はグースだから、言いなりですよ。彼は押しが強そうですからね」

 ううう、確かに強引な感じがする。


 午前中、ずっと考えた結果、一緒に空を飛んで、飛び方をヘンリーに覚えさせる! しか思いつかなかった。


「それで、清潔や浄水も覚えさせたのですから、できるのかもしれませんね。明日からやってみたら良いですよ!」


 笑いながらだけど、ゲイツ様も賛成してくれたので、やってみよう! 

 明日は、晴れると良いな!


 

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