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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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空を飛ぶのは難しい?

 私は、それからもユージーヌ卿やナシウスやサミュエルと空の散歩を楽しんだ。


「お姉様と空を飛ぶのは楽しいですが、自分で飛べるようになるには、ゲイツ様の遣り方が良いのかも?」

 ナシウスに、そんな事を言われた。ショック!


「当たり前です。自分で風を捉えて、空を飛ぶ。私は、風をナシウス君に集めて、空に飛ばしているのですから、近いのはそちらですよ」

 ゲイツ様が得意そうに言う。


「私も同じですわ!」と反論したけど、チッチッチッと指を立てて振る。


「ペイシェンス様のは、ナシウス君を連れて空を飛んでいるだけです」

 違いがわからないんだけど?


「ああ、そうかもしれません! ゲイツ様に空に打ち上げられている時は、私に風が集まって上へ、上へと向かう感覚なのです。お姉様と一緒の時は、囲われている感じかな?」

 

 そうなの? ナシウスを空に打ち上げたら練習になるの? 


「でも、危険そうで、見ていられませんわ」

 そんな事を話していたら、ルーシーとアイラに身体強化を教えていたヘンリーに泣きつかれた。


「お姉様、二人に身体強化を教えようと頑張ったのですが、私には無理みたいです。それに……それに私も空を飛びたいです!」


 ああ、大失敗だよ。お姉ちゃん失格だ。ヘンリーに二人を押し付けて、パーシバルとお空のデートしていただなんて!


「ゲイツ様、ルーシーとアイラに身体強化を教えてあげて下さい」


 ルーシーもアイラも、ヘンリーに習うより嬉しそう。私とは別な考え方だね。


 ゲイツ様が二人を指導している間、他の人は、自主練習だけど、上手く飛べていない。サリエス卿、それは身体強化でジャンプしているだけだよ。


「ヘンリー、ゲイツ様は今は忙しそうだから、私と一緒に空を飛んでみましょう」


「はい!」

 ああ、良い返事だよ。ヘンリーの手を取って、二人でお空の散歩だ。


「お姉様、手を放してみて下さい」


 えっ、落ちてしまうよ。


「大丈夫です。着地してみたいのです」


 本人のやる気を削いではいけない。でも、心配!


「ヘンリー、手を放しますよ」

 こちらがドキドキしちゃう。


 先に下りて、ヘンリーがもし着地に失敗したら、エアクッションを掛けよう。


 ヘンリーの落下速度より、早く地面に下りなきゃ! 頑張って、猛スピードで下りる。


 エアクッションでは、転けてしまう。エアブレーキを掛けて、なんとか転ばずに着地した。


「ヘンリー!」

 心配したけど、ヘンリーの身体強化は、私より上手だ。


 ピタッと着地は、私が審査員なら百点満点だよ! 何点が満点かも知らないけどさ。


「お姉様、今度は私を空に打ち上げて下さい!」

 うう、キラキラ目で頼まれると、断れない。それに、地上で待機している方が、何かあった時に助けやすい。


「ヘンリー、いきますよ!」


 ヘンリーをちょっとだけ打ち上げる。


「もっと高くが良いです!」

 

 ううう、そうだよね。あれは、ヘンリーが身体強化でジャンプできる高さぐらいだもん。


「では、もっと高く!」

 何かあっても、絶対にヘンリーに怪我なんかさせない。その気合いを入れて、ヘンリーを高く空に打ち上げる。


「わぁ!」と喜んで、ヘンリーは高く舞い上がり、クルクル回りながら下りて着地した。本当に、前世ならチャンピオンになれそうだよ。


「お姉様、ありがとうございます」

 でも、ヘンリーは少し悲しそう。

「どうしたのですか?」

 あっ、もしかして! 

「私は、風の魔法は使えませんから、自分では空を飛べるようにはなれないと思うと……」

 

 思わずヘンリーを抱きしめた。


「お姉様がなんとかしてあげます!」

 

 周りの全員が、ドン引きしている気がするけど、生活魔法も教えたのだ。空を飛びたいとヘンリーが望むなら、何とかするよ!


「ペイシェンス様、何を考えておられるのやら。でも、それがペイシェンス様なのです!」

 ゲイツ様に非常識と言われた気がする。


 ヘンリーが空を飛ぶには? 身体強化では、サリエス卿のジャンプになってしまう。

 ううんと、他の人も、空中に留まるのができていないんだよね。

 

「ゲイツ様、空中に何故留まれないのですか?」


 ゲイツ様や私が空に打ち上げても、上がって、下りるだけだ。


「それは、自分で風を操っていないからですよ」

 当たり前の事を聞かないで欲しいと、肩を竦める。


「ええっと……」

 考えながら、空へと上がる。確かに風を使っているのかも?


「これではなくて、重力を使えば?」

 空中でホバリングしながら、考える。私って、今は風を使っているけど、それって生活魔法なの? いや、この方法でヘンリーは飛べないかも? 


 空中を自由に飛ぶスーツ、前世にはあったよね。エアジェットを背負って、空を飛んでいたような?


 駄目! その知識はない。魔法の世界だから、違うアプローチをしなきゃ。


「そうだ!」

 急いで、地面に下りる。


「ゲイツ様、空飛ぶ絨毯とかは持っておられませんか?」

 

 ゲイツ様に爆笑された。そんなに笑わなくても良いじゃん。


「それがあれば馬車の旅なんかしませんよ。それに、美味しい料理を二週間もお預けされなくてすんだと思います」


 うっ、しつこい! 今夜はリュウグウノツカイレガレクス・ルッセリイの料理を出すから良いじゃん!


「ゲイツ様、身体強化は私たちが教えますから、空の飛び方を教えて下さい」


 騎士合宿のジェニーとリンダが申し出てくれた。二人も、身体強化だけなのかな?

 いや、マッドクラブを討伐した時、剣から風の刃が飛んでいたよね。


「いえ、騎士合宿でもあるのだから、二人も空を飛ぶ練習をしなくてはいけないわ。ルーシーとアイラには、私が身体強化を教えます」


 ルーシーとアイラ、ちょっと失礼なんじゃない? 露骨にガッカリしている。

 まぁ、アイラはゲイツ様に憧れているから、少しは理解できるけどね。面食いなのか、才能に憧れているのかはわからないけどさ。


「ペイシェンス様、大丈夫ですか?」

 うん、身体強化に良い魔法を知っているんだ。

「ええ、あの拘束魔法で体幹を維持できれば、身体強化がマスターできると思います」


 二人が文句を言っているような気がしたけど、空気の球の中でクルクル回す。普段よりは、かなり回転速度を遅くしているよ。


「お姉様、私も!」

 そう、ヘンリーの身体強化は優れているから、高速回転でも平気なんだよね。


「ペイシェンス様、酷い!」

 何とか身体強化をマスターした二人に、文句を言われた。


「ゲイツ様、ルーシーとアイラも空に打ち上げて下さい」


 ジェニーとリンダも自分では空を飛べないみたい。騎士組、アルーシュ王子とザッシュも全滅だ。


 ルーシーとアイラはどうかな? 

「危ない!」

 着地を失敗しそうなルーシーにエアクッションを掛けた。


「身体強化がまだまだですね。もう少し回転した方が良さそうです」

 ゲイツ様の叱責に、ゲェって顔のルーシー! 


「アイラはやめておきますか?」

 アイラも空を飛んだけど、着地は……。


「ふぅ、騎士組は自分で空を飛べそうにないし、魔法組の身体強化はいい加減。これは、難しすぎましたか?」


 空を飛ぶのは、難しそうだよ。でも、全員がやる気満々だ。



 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 空をかけるは夢ですよね! ペイシェンスの弟愛 すごすぎ! お久しぶりになってしまいましたが 1話から読み返して やっと 最新話まで追いつきました。 1話から 弟愛 ぶれていませんでした(^…
[良い点] 更新お疲れ様です。 まぁ普通に生活してたら空を飛ぶ機会なんてほぼ訪れないですし、飛行魔法を学ぶ機会もそう無いでしょうから、騎士組の飛びたい気持ちは良く解りますね。何より便利ですしな! […
[一言] ペイシェンス嬢が馬の王(メアラス)に乗る時に使っている「エア階段」が生活魔法なら、 空を飛ぶとはちょっと違いますが、「綺麗になれ」が使えるヘンリーくんも空中に留まれると思います。 空を飛ぶ…
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