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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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空を飛んでみよう!

 ゲイツ様の指導って、凄く乱暴なんじゃないかな? 少なくとも、パーシバルやナシウスやサミュエルには、やって欲しくない。


「次は、パーシバルですね!」

 えっ、駄目だよ!


「ゲイツ様、危険では?」と止めようとしたが、パーシバルも空に打ち上げられた。


「えっ、何が危険なのですか?」


 だって、かなり高くまで上がっている。降りる時に、失敗したら、怪我をしそう。


 そんな事を言っている間に、パーシバルはシュタ! と着地した。


「パーシー様! 大丈夫ですか?」

 駆け寄った私に、パーシバルが笑う。ああ、ハンサムだねぇ! アンジェラに面食いと言われた通りなのかも?


「とても素晴らしい体験でした。ただ、自分で飛べるようになるのか? それは、かなり難しそうです」


 ゲイツ様が、それを聞いて怒る。


「一度、体験したらできるのが普通だと思います。ペイシェンス様も、ヘンリー君から身体強化を習ったのですからね!」


 パーシバルが驚いている。

「ペイシェンス、本当に?」


 ううん、ちょっと普通の身体強化とは違う方を先に覚えたけど、何とかなった気がする。


「ペイシェンス様も、空を飛んでみますか?」

 ちょっとビビっているけど、ゲイツ様の手を取る。


 うん? 他の人は、空に打ち上げられたような?


「ペイシェンス様が怪我をしたら、大変ですからね」

 この気遣い、他の人にもして欲しいよ。


 ゲイツ様の手を取ると、空へと上がっていく。

「キャァ!」

 思わず抱きついてしまった。

「大丈夫です! 絶対に落としたりしませんから」

 そう言われて、抱きつくのをやめた。


「ほら、風の魔法をコントロールして飛んでいるのです」

 風の魔法? ジェット機が何故飛んでいるのかも理解不能だったんだよ。


 でも、鳥が飛ぶのは何となく理解できる。ジェット機より、鳥の方が安全そうだ。


「さぁ、手を放しますよ!」


 えええ! それ困る!


「ギァァァ!」と落ちそうになる。


「パニックにならないで、風を使うのです」

 落ちかけた私の手を取るゲイツ様に、思いっきり抱きついてしまった。


「私は、嬉しいですが、下のパーシバルが嫉妬するのでは?」


 ハッ、そうだよね! これは拙い。抱きつくのをやめて、両手を繋ぐ。


「風を感じませんか?」

 今、空の上で停止している。ヘリコプターみたい。


 ハチドリのホバリングをイメージしてみよう。


「おっ、できそうですね。手を放しますよ」


 ハチドリの空中停止をイメージして、空に留まるけど……下りれる気がしない。


「ゲイツ様、どうやって下りたら良いのでしょう?」


 呆気に取られたゲイツ様に再び手を繋いでもらって、やっと地面に下りた。


「人間は、やはり地面にいる方が良いと思います!」

 実感したよ!


「ペイシェンス様は、もうできるでしょう!」

 パーシバルが驚いている。

「ペイシェンス、凄いじゃないか!」

 そうなのかな? 空を飛べるかも。


「ええっと、空を飛ぶのは出来ても、着地が無理ですわ」

 そう、浮き上がるのはできそう。それに空中に留まるのもね。


「普通の人と違いますね! 着地は、落ちたらできるのですよ。その時に、身体強化でちゃんと立つだけです」


 ううん? 身体強化が上手じゃないのかも? 運動神経が悪いから? それも身体強化で何とか出来るのが普通なのに、私はどうも下手だ。


「ペイシェンス様は、着地の練習ですね。そんなに高く飛ばなくても良いから、着地を繰り返して下さい」


 うっ、ゲイツ様って厳しくない?


「お姉様、飛べるのですか?」

 ナシウスの目がキラキラだ。


「ええ、勿論ですよ!」

 弟の前で格好を付けたい! 思いっきり、風を捉えて、空高く飛び上がった。


「しまった! 下りる練習には高過ぎたわ」


 下りるのを戸惑う程の高さなので、ホバリングしていると、ゲイツ様が助けに来てくれた。


「下りる練習をするようにと言った筈ですが……仕方ないですね」

 差し出された手を取って、少しずつ下りる練習をする。


「今夜は、リュウグウノツカイレガレクス・ルッセリイの料理にしますわ」

  

 弟の前で格好を付けて、下りられなくなった。馬鹿な事をして、手間を掛けさせたので、忘れていたリュウグウノツカイレガレクス・ルッセリイの料理をエバにさせよう。


「ええっ! リュウグウノツカイレガレクス・ルッセリイ! 食べた事がありません!」


 大騒ぎするゲイツ様、これがなければ尊敬できるんだけどなぁ。


「どんな味なのでしょう?」

 指導は、そっちのけでリュウグウノツカイレガレクス・ルッセリイの味に注目している。


「リヴァイアサンよりは淡白ですが、よく似た味でしたわ」

 

 ゲイツ様が叫ぶ!

「私が居ない間に、そんな美味しい物を食べていたのですね! 王都に知らせて下さったら、すぐに駆けつけたのに!」

 

 それ、駄目なんじゃないの? サリンジャーさんに連れ戻されるのが確定だよ。


「夕食は豪華にしますから、弟やサミュエルは、打ち上げるのではなく、手を繋いで指導して下さい」


 これ、重要だからね! ちゃんと言わなきゃ。


「そんなのは、ペイシェンス様がやれば良いじゃないですか? 自分で風を捉えて、空を飛ぶ練習なのだから、私の遣り方の方が手っ取り早いのです」


 ふぅ、口では勝てない。でも、ナシウスの安全は守るよ。


「ナシウス、私と一緒に練習しましょう」

 絶対に、こちらの遣り方の方が安全だよね。自信を持っていたのに、ナシウスもサミュエルもゲイツ様の乱暴な遣り方に挑戦したいみたい。


 ガァン! ショック!


 私がショックを受けている間にナシウスが空に打ち上げられた。


「ナシウス!」思わず横まで飛んで行ったよ。


「お姉様!」驚いた顔のナシウスだけど、すぐに下にと落ちていく。


「キャァ! ナシウス!」

 地面に向かうナシウスの後を追う。


 ナシウスは、ちゃんと着地したけど、私はゲイツ様のエアクッションに助けられた。


「ペイシェンス様は、エアクッションも自分でできるでしょう! 兎に角、もっと冷静にならないといけません」


 正論で叱られて、しょんぼりだよ。


「ペイシェンス、凄いぞ!」とサリエス卿は褒めてくれたけどね。


 次に、サミュエル、アルーシュ王子、ザッシュ! 次々と打ち上げられていく。


「ペイシェンス様、私と手を繋いで空を飛んでくれませんか?」

 ユージーヌ卿は、ゲイツ様の順番が回ってくるまで、私と練習しようと思ったみたい。


「ええ、でも着地が下手なのですが……」

 ユージーヌ卿と手を繋ぎ、空へと上がる。


「おお、凄い! なるほど、このように風を捉えるのだな? 少し手を放して下さい」


 空で手を放す。ユージーヌ卿、下に落ちていくんだけど?


「うん、まだちゃんとは風を捉えきれていなかった」

 スッと着地して、ユージーヌ卿は平気な顔だけど、私は慌てて後を追いかけ、エアクッションで軟着陸したよ。


「ペイシェンス、大丈夫ですか?」

 エアクッションで怪我はしなかったけど、他の人みたいに立てていない。格好悪いよ。

 パーシバルに手を取って貰って立ち上がる。


「ええ、大丈夫ですわ」

 えっ、パーシバルの目もキラキラなんだけど、もしかして?


「一緒に空を飛びたいですね!」

 パーシバル、それは良いけど、下りる時も一緒だと嬉しいのだけど。


 パーシバルとの空の散歩は楽しかった。メアリーは地上だし、一瞬だけだけど、キスしちゃったよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 宿の支配人や料理人を雇ったら、万屋や商店や工房から、食器や(テーブルクロス)、テーブル、椅子などを取り寄せ、食材を買わねば。 カフェで出す料理、軽食や、ランチ、を考えないといけませんし、 料…
[気になる点] ゲイツ「ペイシェンス様が怪我をしたら、(美味しい料理を食べられなくなったり、もし領地開発が遅れたらおばさまから小言を言われた挙句、残業地獄になって)大変ですからね。」 [一言] まあ、…
[気になる点] どうでもいい事ですが、この訓練中ペイシエンスはどんな服着ているのでしょうか? 完全に紳士物のズボンと同じならいいんだけど、スカートに見えるキュロットみたいな裾が広いの着てたら、飛行訓練…
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