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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科

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夏の離宮 裁縫教室

 次の日、普段は子供部屋で子守や家庭教師に世話されているジェーン王女がサロンに連れて来られた。あの活発なジェーン王女がとてもお淑やかにしている。ジェーン王女にはビクトリア様は母親である前に王妃様なんだね。

「ジェーン、今日はマーガレットと一緒にペイシェンスから裁縫を習いなさい。学園では家政の時間があるのです。そして、その作品は展示されるのですよ」

 マーガレット王女とジェーン王女は「はい、お母様」と素直に返事をするが、私が教えるんですか。できるかな?

 針なんか持った事が無いだろうジェーン王女に糸の通し方から教える。

「糸の先を尖らせて、針の穴に集中すればスッと通りますよ」

 初心者には難しいよね。前世の糸通し機、作ったら売れるかな? 細い細いはり金作れるかな?

「無理だわ。針の穴が小さ過ぎるのよ」

 初心者には小さいかな? 刺繍針でしよう。

「では、こちらの針に刺繍糸を通して下さい」

 刺繍糸は何本かを通さなくてはいけないが、なんとか通せた。

「できたわ!」おお、第一歩は合格ですね。

「とても上手ですね。では、その糸の端に止め玉を作りましょう。そうしないと、せっかく縫ってもほどけてしまいますからね」

 私も刺繍糸を針に通して、止め玉を作って見せる。ジェーン王女は身体強化魔法だね。私のしていることを無意識に身体強化を使って真似をする。

「ほら、出来たわ」

「お上手ですわ。では、布を持って針で1目縫ってみましょう」

 前世の『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』の心境でジェーン王女に裁縫を教える。

「真っ直ぐに縫えましたね。細い糸で、このくらい縫えたら1年生の課題は合格ですよ」

 春学期の家政の課題はこんな程度だったからね。ジェーン王女は身体強化でどうにかするだろう。

「まぁ、ペイシェンスは教えるの上手ね。マーガレットにも教えなさい」

 マーガレット王女は、手先は不器用ではない。だってハノンのアルバート先輩の超越技巧曲だって易々と弾いているのだ。要するに興味も無ければやる気も無いのだ。

 馬に人参作戦だ! 昨日、馬に乗ったから思いついた訳じゃないよ。

「マーガレット様、縫い方の練習ばかりでは飽きてしまわれるでしょう。髪飾りを作りませんか?」

 王妃様の許可を貰って女官に綺麗な色の絹やレースを持ってきて貰う。

「どの色が良いかしら?」

 嫌々、縫い物の練習をしていたマーガレット王女も色とりどりの布を楽しそうに選ぶ。

「お母様、私も髪飾りを作りたいわ」

 ジェーン王女も一緒に作ることになった。

「リボンを作るのは簡単ですよ。こう裏を表にして重ねて、ぐるりと縫うだけです。あっ、真ん中は縫わずに開けておいて下さいね。ひっくり返す時に使いますから」

 私は説明しながら、素早く縫う。そしてひっくり返して、そこを縫い縮めればリボンが出来上った。

「あら、簡単に作れるのね」

 やっとマーガレット王女が興味を持って縫い始める。

「縫い上がったら、2人でお揃いの髪飾りをつけて『2台のハノンの為のソナタ』を合奏しましょう」

 ぶら下げられた人参で、マーガレット王女は真剣に縫った。お陰で髪飾りが出来上がった。

「音楽クラブでもお揃いの髪飾りで、合奏しましょう」

 音楽愛が止まらないね。

「私もできたわ」

 ジェーン王女も慣れない細い針に苦労していたが、作り上げて満足そうだ。

「ペイシェンス、貴女は本当にユリアンヌにそっくりだわ。彼女も人に教えるのが上手かったの」

 ビクトリア王妃様もマーガレット王女が不器用では無いと知り、縫い物から解放してくれた。そのせいで、私はキース王子とマーガレット王女の板挟みになったけどね。

「ペイシェンスは体力がない。だから、姉上がダンスの修了証書を取らそうと頑張られても無理です。夏休み中に体力をつけなくてはいけないのです」

 キース王子の正論に、マーガレット王女も時々は海水浴や乗馬をして良いと許可する。いや、乗馬はいらないよ。

 キース王子にしごかれて、ポニーを卒業して馬を歩かせるようにはなったよ。海水浴は楽しんだ。泳いだり、マーカス王子と砂遊びしたりしてね。

 午後からはリュートの練習やハノンの演奏をして過ごす。それと、時々は台所へお邪魔してスイーツも作ったよ。

「紅茶の茶葉を砕いてパウンドケーキに入れても美味しいですよ。でも、お子様には向かないかもしれませんから、果物をシロップ漬けしたのを刻んで入れても良いですね。あっ、シロップ漬けはあまり甘くしないで下さい」

 美味しいスイーツと香り高い紅茶、とても優雅な時間だ。

 でも、私はナシウスとヘンリーがちゃんと世話されているだろうか? ジョージ1人で庭や畑の手入れは大丈夫なのか? 内職したい! なんて事を考えていたんだ。やはり、貧乏だと優雅になれないね。

 そんな事をぼんやり考えているとマーガレット王女に、新曲を書きなさいとか言われる。トホホ

 こうして、夏の離宮での夏休みは過ぎていった。

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[気になる点] 貴族家の稼ぎ頭を奴隷の様に無給でこき使いまくる なぜこの様なクソ王家が貴族達の反乱に合わないのか不思議すぎる 他の貴族への扱いがまともだとしたらなぜ主人公の家だけターゲットにされている…
[良い点] 自宅にいるときより、たっぷり?食べて、運動させられて?良かったかもですね。ちょっぴり安心します。(読者にも王家にもハラハラさせる主人公…) 王家の皆様、ペイシェンスを振り回そうとして、体力…
[良い点] こんばんは。 ヤベェ、ペイシェンスちゃん(もとい中の主人公)が苦労人過ぎて全俺が泣きそうです。今すぐ食糧と日用品をAma○onで彼女の実家に配送したい···!! [一言] 読んでいると「…
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