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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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夢の国

 少女歌劇団、夢の国にいるみたいで、素敵だった。

 カルメン・シータは、劇の中でも歌姫(ディーバ)で、恋人の兵士との仲を、貴族に引き裂かれそうになる役を上手く演じていた。

 そして、その恋人役の兵士、これ絶対にユージーヌ卿をモデルにしているよね! 格好良いんだ。

 

 劇って、悪役が上手くないと駄目だよね。今回の悪役貴族、顔がめちゃくちゃクールビューティ! 意地悪な台詞すら口説き文句に聞こえるほど! 


 兵士に恋する娘役も、可愛くて、私ならカルメンよりこちらを選ぶと思っちゃった! 可憐な花みたいな娘役だったんだ。

 

 悪役貴族に騙されて、兵士と歌姫の仲を裂こうとしたりするのに、憎めない。それどころか、悪役貴族に惚れるのではとヒヤヒヤしながら観ていた。


 最後は、ハッピーエンドで、歌姫と兵士が結婚して終わる。悪役貴族は、婚約者が来てかなり慌ててご機嫌を取っていたね。コミカルな演技も笑えて良かったよ。

 娘役は、他の兵士と良い感じになり、花嫁のブーケを受け取っていた。次の結婚式も近そう!


 夢中で観劇して、フィナーレではペンライトを振っていた。


「これは人気が出そうだな」

 国王陛下の言葉に、王妃様も満足そうだ。


「私は恋人役よりも悪役貴族の方が気に入りましたわ」

 マーガレット王女は、見る目があると思う。私も同感だよ!


「あら、私は恋人役の方が素敵だと思いましたわ」

 リュミエラ王女の目がハートだよ。横のリチャード王子が少し呆れているかも?


「これは大流行しそうですね! ソフィアにも巡業に来て欲しいです」

 パリス王子は、自国こそ文化の都だと自負しているみたい。


 お茶会の間も、少女歌劇団の話題が絶えなかった。

 アルバートも好評だったので、機嫌がよさそうだ。近づかないようにしていたけどさ。


 私は、アルーシュ王子が本当に領地に来るのか聞きたいけど、藪を突きそうで、怖くて聞けない。


「ペイシェンス、尋ねなくて良いのですか?」

 コソッとパーシバルに注意された。

「ええ、来られるか聞かなくてはいけませんね」


 ミッチャム夫人に告げて、準備して貰わないといけないからね。


 パーシバルがアルーシュ王子をテラスに誘い出してくれたので、私は後から行く。


「アルーシュ様、本当に魔法合宿に参加されるのですか? 今、来ている女学生達は、午前中は学習、昼から領地の開発をお手伝いして貰っているレベルなのですが」


 つまり、竜を討伐するレベルの合宿ではないと告げる。


「それは、ゲイツ様が参加されていないからでしょう。一旦、王都に戻り、ゲイツ様と共にお邪魔させていただきます」


 うっ、王族の接待なんて、できるかな? うちの使用人、まだ修業中なんだ。


「それと、ザッシュも同行したいのです。私を王族扱いしてくれなくても結構ですが、彼もレベルアップさせたいので、是非ともお願いします」


 そんな風に言われると断れない。ペイシェンスのマナーが染み付いているからね。


「ええ、行き届かないことが多いとは思いますが、お待ちしております」


 うう、自分の口から出た言葉が憎い! パーシバルや弟達との夏休みが、どんどん無くなっていく!


 お茶会が終わったら、夏の離宮からお暇する。

 馬車の中で、アンジェラはまだ夢の国にいた。


「ああ、とても素敵で、ファンになりましたわ! なんて素敵な恋人役なのでしょう! ああ、ペイシェンス様、お母様が行くなと言われたらどうしましょう?」


 これは、難しいね! ラシーヌは、ファッションとかは進歩的だけど、教育熱心だからさ。少女歌劇団をどう考えるかは、わからない。


「ラシーヌ様が反対されたら、行くのは無理ですわ。でも、私やリリアナ伯母様が誘えば、多分、許可して下さると思うの。だから、あまり騒ぎ立てないで『流石、王妃様がパトロンされているだけあって、素敵でしたわ』ぐらいの反応で留めておいた方が良いわよ」


 あまりにもアンジェラが夢中になりすぎていると、ラシーヌが判断したら、禁止するかもしれないからね。


「そうかも知れませんわ。ペイシェンス様、ありがとうございます!」

 

 馬車がサティスフォードに着くまでに、浮かれていたアンジェラも冷静さを取り戻した。


「弟達も、少女歌劇団を観に行きたいと言っていますから、アンジェラも誘いますわ」

 

 パーシバルも母上がパトロンをしているから、チケットを手配すると約束したので、アンジェラは大人しく待っていると笑った。


「お帰りなさい!」

 ラシーヌは、心配していたみたいだけど、アンジェラは失敗なんかしなかったよ。

 まぁ、少女歌劇団に夢中になっていたけどね。


 ちょっとだけ、サティスフォード子爵館で休憩して、領地に帰る。


「パーシー様、やはりゲイツ様は魔法合宿をされるつもりなのですね」

 何となく、このままの夏休みを過ごせる気分になっていたんだ。

 ルーシーの数学も、カミュ先生のお陰で、ギリギリ合格できそうなレベルになった。アイラは、苦手な風魔法を頑張っているし、生活魔法は二人とも使えるようになったんだ。やはり、魔法関係は飲み込みが早い。

 騎士クラブの二人も、順調に体力をつけて、生活魔法でなんとか清潔にできるようになった。


「初めから、その予定でしたからね。国王陛下は、明日には王都に戻られるでしょう。他国の王族達も一緒でしょうね」


 警備的に、纏まった方が楽なのか、大変なのかはわからないけどね。


「ああ、明後日には引き継ぎをして、明々後日には来られるのかしら?」


 自由時間が無くなる気がする。

「パーシー様、デートしましょう!」

「パティ、良いですね!」


 二人でいちゃいちゃモードだけど、メアリーの監視が厳しい。

 それに、寂れた領地が待っているのだ。問題は山積みだし、やりたい事もいっぱいだ。



 


 


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― 新着の感想 ―
[一言] 警備的には、まとまっていた方が動線確保や誘導には人員配置しやすいですね。 敵性人物の侵入経路を制限するという意味では。 複数の警備対象同士が不仲であったりすると時間で区切るしか無く、送る順番…
[一言] 竜も討伐できない王宮魔法使いと、王など、クビだな! 領地を守って貰える見込みがないなら、いらない! カルメン、何歳なんだろ? カルメン視点気になる パトロンを捕まえたはずが、劇団の一員にな…
[一言] 離宮での観劇、恙なく終わったようで何よりです。 ラフォーレ公爵家の音楽狂の親子に絡まれたり、新曲の作成依頼などの無茶振りをされずに済んで良かった……さすがに国王夫妻の前では大人しくしているか…
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