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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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スライム狩り

 ローラン卿が先頭で、森に向かう。

「私が乗れる程度のスピードで走ってね」

 馬の王(メアラス)に言い聞かせて、後ろについていく。


 横にはパーシバル、後ろにはベリンダ。弟達やサミュエルには、騎士クラブの二人が付き添ってくれている。


「スライムの素材をよく使うけど、見た事がなかったから楽しみです」


「楽しみ?」

 パーシバルが微妙な顔だ。どうやら、前世のゲームのような水滴型の可愛い姿ではなさそう。


「まぁ、一度ぐらいは見ても良いのかもしれませんね」


 ローラン卿とベリンダは、スライムを見た事がないと知って驚いている。


「王都育ちなのです」

 近頃は、領地との行き来も多いけど、夏の離宮に招待されるまで、王都の外に出た事がなかったよ。


「あの森なら、スライムがいそうです。ついでに魔物がいたら、討伐しましょう」


 領兵達は遅れてやってきたが、ローラン卿の指示で私たちの周りに配置された。


「お姉様、あそこにいるのがスライムですか?」

 ヘンリーが言う方向を見ると、べらんべらんとした生き物がいた。

「可愛くないのね……どうやって魔石を取るのかしら?」


 ローラン卿とベリンダとパーシバルが森の細い枝を剣で切ってくれた。


「これでスライムの魔石を取るのだ」

 

 サミュエルは経験者だから、貰った枝をスライムに突き刺して、魔石を穿り出す。

 

 魔石を取られたスライムは、ぐしゅしゅしゅと平たくなった。


「ナシウスとヘンリーもやってみたら良い」


 ナシウスは、慎重にしすぎて、上手く魔石を穿り出せなかった。その上、べらんべらんと意外に早く逃げていく。


「まて!」追いかけていくけど、待ってはくれないよね。森の下草の中に潜って消えた。


「失敗しました」がっかりするナシウスに、サミュエルが笑いかける。


「皆、子どもの時に何回も逃げられているさ。見つけたら、ズボッと枝を刺して、魔石を思いっきり抉り取るのがコツだ!」


 ナシウスとヘンリーのスライム狩りの指導は、サミュエルに任せよう。


「ペイシェンスもやってみますか?」

 パーシバルと一緒にスライムを枝で突いて、魔石を取り出す。


「ペイシェンス、上手ですね!」

 パーシバルに感心されたよ。これ、思いっきりが大切だね。


 透明なスライムは、背景に同化しているけど、核があるから、発見しやすい。


「なるほど! 子どものお小遣い稼ぎになるのもわかるわ!」


 簡単だし、楽しい、それにお金になるのだ。ただ、森にはスライムだけがいるのではない。


「ビッグボアです!」

 弟達が楽しくスライム狩りをしているのに、領兵がビッグボアを見つけたみたい。


「ナシウス、ヘンリー、サミュエルはこちらにいらっしゃい」

 三人を呼び寄せて、私は討伐されるまで待機しようと思っていた。


 ヘンリーは、ぴょんぴょん跳ねながら私の側に来て、手のひらの魔石を見せる。

「お姉様、この魔石は私が取ったのですよ!」

「ヘンリー、偉いね!」


 今日はナシウスはついていない日みたい。

 スライムには逃げられるし、森の奥からビッグボアが何を思ったのか、私たちの側に来ようとしているナシウス目掛けて突進して来る。


「私の可愛い弟のスライム狩りの邪魔はさせないわ! 首チョッパー!」


 ビッグボアの首がポンと飛んで行った。


「お姉様、すごい!」ヘンリーははしゃいでる。


「ペイシェンス、凄いぞ!」

 サミュエルにも褒めて貰ったよ。


「子爵様、素晴らしいです!」

 ローラン卿の獲物を横取りしたのかも?


「いえ、ナシウスに向かってきたから」

 パーシバルが横で呆れているよ。


「まだナシウスには遠かったでしょう。でも、やはりペイシェンスの魔法の腕は確かですね」


 えっ、そんなに遠かったかな? 


「子爵様は、すげーな」

「あんなに遠くのビッグボアを一撃だ!」

 騒いでいる領兵をローラン卿が指揮して、解体させる。


「さっさと解体して、館に運ぶのだ!」

 領兵達がビッグボアを解体し始めたので、少し離れた場所でスライム狩りをする。


「おっ、ナシウス! やったな!」

 枝を思いっきり突き刺すのがスライム狩りのポイントだね。


「でも、あのように魔物が現れるなら、子どもだけでは危険だわ」


 冒険者なら、何とかできそうだけど、子どもには無理じゃない?


「森には子どもは来ませんよ。家の周りの水場や、木陰で見つけるのでしょう。今回は、スライムがいっぱいいそうな森に来ただけです」


「そうなのですね」と答えたのに、パーシバルに噴き出された。


「ペイシェンスは、冬の討伐でゲイツ様の影響を凄く受けたのですね。遠くの魔物を一撃で倒す。これができるのは、一流の狩人ですよ」


「パーシー様の意地悪! 私がゲイツ様に似ていると言われるのが嫌なのをご存知なのに。今夜は、ビッグボアカレーにしようかと思いましたが、芋とシチューにしようかしら?」


 領兵達が『カレー』と耳をそば立てている。エバがいるから、よく似たメニューが兵舎でも出るんだ。ただし、少しだけ材料のグレードダウンがあるけどね。量はマシマシだよ。

 

 それでも、兵舎の食事は、これまで食べた事がないほど美味しいと、ハープシャーやグレンジャーで噂になっているみたい。


 領兵の濃紺の制服、かっちりしているのに動きやすい。それに、ジッパーで開け閉めできるから、着るのも早い。

 ボタンも付いていて、デザイン性も良い。早く、この見た目に似合う腕前になって欲しい。

 

 領民の女の子にモテモテだと噂があるけど、これからローラン卿達が厳しく鍛えるから、デートする暇が無いかもね。


「あのう、私は何も知らないからお聞きするのですが、騎士の制服を作らなくてはいけないのかしら?」

 今は、ローラン卿、ジェラルディン卿は、バーンズ公爵家の制服に革や金属の軽量鎧を着ている。

 エルビス卿は、ノースコート伯爵家の明るい青の制服だ。


「ああ、そうですね! 鎧や胸当ては、各自で好きな物を選びますが、制服、礼服は必要でしょう。それと、ペイシェンスのブーツは支給してあげた方が良いですよ」


「領兵には支給したのに、騎士を忘れていましたわ」


 ジッパー付きのブーツ、皆に好評です。これまで、従者に引っ張ってもらって脱いでいたなんてね。大変だったよ。


 それに、履く時も楽なんだよね。



 



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― 新着の感想 ―
ブーツ用ジッパーはめっちゃ便利です。 脱げ難くさは編み上げですが、米軍でも使用しています。履き易い為に早く履けます。
[一言] 領兵にも、階級をいれて、 訓練生(礼儀作法、雑用、基礎訓練、読み書き計算、道具のメンテ) →領兵見習い(戦闘訓練) →下級領兵(戦場にでる) →上級領兵(戦闘の主役、指揮官) →指導員(訓練…
[一言] ジッパーって本来なら金属製の歯車ができないと作れない文明レベルの産物なんですけどね。(平歯車だけでなく、傘型など機械機構が作れるくらいの技術が必要。) 首チョンパが樋口カッター髭男爵の従者…
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