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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第一章 王立学園初等科
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毛布ゲット!

 部屋に帰って寒さに震えながら『初級生活魔法』『エステナ教について』という図書室にあった本の中でも薄い本を読んだ。

 専門書っぽいのもずらっと上の段にあったけど、難しそうで避けた。日本生まれで魔法なんか無かった。宗教もクリスマスパーティをしたかと思えば、大晦日には除夜の鐘を叩いて、新年には神社に初詣でしていたのだ。宗教なんか、倫理の時間にちょこっと聞き齧っただけだ。

「寒いからページも捲れないわ」

 ベッドに潜ったら少しでも暖かいのだろうけど、ペイシェンスのマナーチェックが入り諦めた。

「初級生活魔法では、ほぼペイシェンスの知識と同じしか分からないわね。まぁ、子ども向けだし、仕方ないかも。明日、生活魔法が使えると分かってからにしよう」

 なかなか便利そうな魔法だと分かった。これを使えば少しは生活改善できそうだ。特に、トイレとか。そう、今はオマルなんだよ。メアリーがまめにきれいにしてくれてるけど、オマルは無いよね。

 一応、記憶をググるとグレンジャー家にはトイレがあるんだよね。でも、それを使うには魔石が必要みたい。なんで、そんな事知ってるのかって! ペイシェンスになって数日、起きて屋敷を歩き回ったのは今日が初日だけど、お粥でも出る物は出る。恥ずかしい!

 初めは、身体が弱っているから部屋でオマルなのかなぁと思っていた時期もありました。だって本当に死にそうで、ベッドから降りるのもメアリーに助けて貰って……はぁ、恥も何も捨てたよ。でも、あの時は小だったからなんとか切り抜けた。

 で、昨日、ついに大。オマルにするにはちょっとねぇ。で、ベッドサイドのベルを鳴らして、忙しいだろうメアリーを呼んだのよ。

「メアリー、悪いけどトイレに連れて行って」

 そこで、家のトイレは使用できないと言われちゃったの。

 「魔石がありませんので……」と申し訳無さそうだけど、こちらの方が申し訳ない。メアリーしかメイドはいないのに、病人だけでなく、全て処理して貰ってるんだ。こんな主人ですみません。

 で、生活魔法には掃除ってのもあって、これを使えればトイレの洗浄もできそうなんだよね。目指せ、文化生活!!

 でも、ずっとトイレに付きっきりは無理。先ずは、私だけでもトイレを使いたいな。だって10歳だけど、花も恥じらう乙女だもん。

「あら、生活改善で思い出したわ。薄い布団をどうにかしなくては」

 ふと目を上げると、薄暗くなっている。どうやら緯度の高い所なのか冬は早くから日が暮れるみたい。勿論、貧乏なグレンジャー家にも蝋燭はあるけど、節約しなきゃいけないと、ペイシェンスの記憶が騒いでる。

 今夜も寒さで目が覚めるのはごめんだ。メアリーの所に薄い布団以外に何か無いか聞きに行こう。

「確か、メアリーは……台所と使用人の仕事部屋は半地下にあるはず」

 貴族の令嬢が行く場所でないのか、ペイシェンスの記憶もおぼろげだ。でも、何度かは行ったことがあるみたい。母親が生きていた頃、一度、二人でおやつを作った記憶に、お腹がグググッと鳴る。

「お茶って習慣は、節約されて無くなったのね」

 貴族といえば、着飾ってお茶会をしているじゃない! と腹を立てても仕方ない。現在のグレンジャー家ではお茶の時間はないのだ。お茶っ葉買うお金も無いのかも。

 ちなみに、使用人の寝る部屋は三階にあるよ。

 半地下には執事の仕事部屋、今はいないけど家政婦の部屋、そして台所と女中部屋がある。その女中部屋、広いよねぇ。メアリー一人しかいないのに。

「メアリー、毛布か何か無いかしら?」

 私の外出着を縫い直していたメアリーに問いかける。

「お嬢様、こんな所に……毛布は……」

 メアリーを困らすつもりは無かったの。きっと余分な夜具は売り払ったのだろう。

「そうですね。使用人の毛布なら……でも、それはお嬢様に相応しくないですわ」

 なんだって! あるの!

「寒いよりマシですわ。私は肺炎で死ぬところでしたのよ」

 何本もの鍵がついた大きな鉄の輪を持ったメアリーの後をついて、リネン室に行く。

「こんな無粋な物を……」

 子爵家の令嬢らしくないとメアリーは渋ったが、私は灰色の毛布を手に入れてウハウハだ。

 「弟達にも……」と言ったけど、子どもは寒いのは駄目だろうし、男の子だから無粋な物でも良いだろうとのメアリーの判断で、もう毛布を使っていたみたい。

 生活能力の無さそうな父親にも出して貰う。こんな貧乏でも、どうにか暮らしていっているのは、父親の親戚からの援助らしいからね。それに、孤児になったら弟達エンジェルが可哀想じゃない。

「子爵様に……そうですね。寒くて眠れないようですから」

 そう、そう! 格好ばかり気にしてては駄目なんだよ。

 今夜はぐっすり眠れそうだ。


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