歴史研究クラブとロマノ大学の学生
騎士達やアダムとメーガンの部屋が用意できたので、応接室から出て行った。
「そう言えば、メーガン様はグレンジャー館で良いのかしら?」
歴史研究クラブやロマノ大学の助手や男子学生が滞在しているのだ。
「ベリンダ様がいらっしゃるし、兄のアダム様がいるのだから、大丈夫ですよ」
まぁ、そうだよね。それにバーンズ公爵家の騎士達とも知り合いだから、変な真似など誰もしないと思う。
なんて事を話していたら、ナシウスが急いでシャワーを浴びて降りて来た。
「お姉様、パーシバル様! ヘンリーとサミュエルも来たんだね」
ヘンリーは、ナシウスに抱きついている。私は、我慢するよ!
「元気そうで、ホッとしたわ。毎日、暑いから心配していたのよ」
少し日焼けしたナシウス、また背が高くなった気がするよ。
「ナシウス、歴史研究クラブの合宿は今日までなんだろう? 一緒にハープシャー館に帰るか?」
サミュエル、やっぱりナシウスが居ないのは寂しかったんだね。
「いえ、明日の朝、皆様を見送ってから帰ります。本当は一度ぐらいは海水浴をしても良いかなと思っていたのですが、ずっと遺跡調査ばかりでしたね」
一応、大体の大きさで水着やフロートやボディボードも用意してあるんだけどね。
「クラブの合宿だから、そんな物だろう」とサミュエルは笑う。
そうこうするうちにフィリップス達もシャワーを浴びて、降りてきた。
「皆様、遺跡調査、お疲れ様でした」
ゲイツ家から派遣されたエイムズが気を利かせて、お茶と茶菓子を運んで来てくれた。
「一日中、暑い遺跡で大変でしたでしょう」
労うけど、全員が首を横に振る。
「グレンジャー館に滞在させて頂き、本当にありがとうございました。一応、全ての建物の位置を調査できました」
それは、壁に貼ってある調査表でわかるよ。計測しながら、カザリア帝国の遺跡の建物を全て書き記したのだ。
フィリップスとユーリとフランシスは、もっと調査したいって顔をしているけど、全力でスルーすると決めている。
ペイシェンスのマナーが「良いの?」と騒いでいるけど、ヘンリーやサミュエルの為にも頑張るよ!
「おお、ペイシェンス様が来られているのか!」
そろそろ各教授達のチームもフィールドワークを終えて帰ってくる時間になった。
「今日から、仮採用期間の騎士達と護衛と管理人見習い二人が、グレンジャー館に滞在します。今は、部屋で休んで頂いていますが、夕食の前に顔合わせをしましょう」
ここからは、教授達と話し合う。あら? 歴史研究クラブの調査表をロマノ大学の学生や助手達も一緒に見ながら、わいわいと話している。
「カザリア帝国の遺跡、一度見学に行かれたらどうでしょう?」
教授達も興味がありそう。
「折角、近くに来たのだから、フィールドワークの合間に見に行っても良いだろう」
リンネル教授は、自分が行きたいのかもね。
「ライトマン教授のお陰で、水田と水路ができました。これから、カルディナ帝国の稲作の書物で読んだ直播き方式と苗を植える遣り方を試してみようと思っています。それと、長粒種も栽培する予定です」
これ、夏休み中には終わりそうにないね。
「リンネル教授、グレンジャー館は好きにお使い下さい」
とは言うものの、夏休み中は、ゲイツ様の使用人が派遣されているけど、その間に領地で雇った下男と下女を教育しないとね。
「ラドリー様は、いつ頃来られるのですか?」
ライトマン教授の目が期待に溢れている。
ラドリー様は良いんだけど、一緒にゲイツ様も来られるんだよね。それまでに、領地改革を少しでも進めておきたい。
「予定では、一週間後だとお聞きしていますわ」
ライトマン教授の助手達から「やったぁ!」と歓声が上がる。
そうだ、皆に意見を聞きたい。
「グレンジャー館に会議室を作りたいと考えているのですが、大きさはどの位が宜しいでしょうか? 応接室では、資料を広げたり、作業がしにくいのでは無いかと思うのです」
リンネル教授、ライトマン教授の目が光る。
「それは有り難いです。今は、私の部屋か応接室で話していますが、資料を広げたままにできたら、作業工程がわかりやすくなります」
つまり、歴史研究クラブは私の弟のナシウスがいるから、やりたい放題だったけど、他の教授達は遠慮していたみたい。
「おお、ペイシェンス様! いらしていたのですね。あの、雲丹漁のザルは凄いです。漁師達も、箱で海底を見ながら、モリで突くより簡単だと言っています」
「それで、雲丹を取り尽くしたりしないかしら」
「そこは、これから調査しないといけませんが、これまでは雲丹の捕獲量はしれていました。あまり、漁民達は雲丹は食べないようです。美味しいのに何故でしょう?」
見た目が悪いからかな? でも、売ったりはしていたんだよね? まぁ、キース王子も嫌いだったな。
それにしても、海洋生物学科のベッカム教授と学生達、日焼けしたね。少し磯臭い。
「シャワーを浴びて来られたら?」
パーシバルが私の代わりに言ってくれたよ。綺麗になれ! と掛けても良いけどさ。
他の教授達も、そうだったと笑って自分達の部屋に行く。
ふぅ、今まで簡単に『綺麗になれ!』を使っていたけど、それは私の身の回りにいる人達だったから。これからは、少し注意する必要があるのかも。
でも、ライトマン教授や助手達には、何回か使ったような? まっ、良いか! これから注意しよう。
騎士達もシャワーかお風呂に入り、鎧や胸当てを脱ぎ、夕食の格好で降りてきた。
「素早いですよね?」パーシバルにコソッと聞いたら、騎士は素早く身支度するのも必須だと笑う。
確かに、アダムとメーガンは降りて来ていない。
「メーガン様は、侍女が居なくても大丈夫なのでしょうか?」
騎士達は、従者がついている。
「多分、王立学園では寮生活をされていたのでしょうから、自分の事はできるのでは?」
そうだね! バーンズ公爵領は遠いし、王都に屋敷がない学生は寮に入る。
少し待っていると、教授や学生達、そしてアダムとメーガンも降りて来たので、私が紹介する。
皆、大人なので和やかに挨拶しあっている。ああ、美貌のベリンダが人妻だと知って、何人かガックリしていたけどね。
でも、メーガンのクールビューティに夢中になり、すぐに立ち直っていた。
「私達は、ここで失礼致します。歴史研究クラブの方々、明日の見送りはできませんが、オルゴール体操のご褒美を渡しておきますね」
メアリーがオルゴール体操の台紙を見ながら、チョコレートバーを配っていく。
教授達や、助手や学生達も五個集めていたので、喜んでいる。
さて、帰ったらパーシバルに盾を見せなきゃいけない。呆れられるかも?




