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異世界に来たけど、生活魔法しか使えません  作者: 梨香
第七章 中等科二年の夏休み

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グレンジャー館は本当に素敵!

 馬組と分かれるかな? と思っていたけど、彼等は騎士だ。子爵家に仕官しようとしている。

 馬の走るペースを落として、馬車の護衛に徹している。馬の王(メアラス)は、爆走しているけど、それは仕方ないね。


「お兄様も明日にはハープシャー館に戻られますね」

 嬉しそうなヘンリーだけど、横に座っているサミュエルは、難しい顔だ。


「フィリップス様は遺跡愛が激しい方だから、一週間で満足されるだろうか?」

 うっ、それを言われると不安になるよ。


「でも、他の方は一週間と言われたのです。だから、きっと大丈夫ですよ」

 これは、自分に言い聞かせていたのだ。エステナ神に祈る程の事では無いけど、自己暗示は大切だよね。

 フィリップスが「もう少し滞在したい」と顔に出されても、気づかない振りをして、全力でスルーしよう。


「グレンジャー館が素晴らしい館に改築されたと、父上が羨ましがっていた。確か、王宮建築士のラドリー様が手がけられたのだろう。ペイシェンスは、王宮魔法師のゲイツ様とも親しいし、どうやっているのか聞きたいぐらいだ」


 ああ、それは……。私が望んだ事ではないが、マーガレット王女の側仕えになったのが切っ掛けかもね。


「サミュエルは、サミュエルなりに人脈を広げれば良いのよ。それに、私の従兄弟として、ゲイツ様ともよく会っているでしょう。後、少ししたらラドリー様もゲイツ様もハープシャーにいらっしゃるから、より親しくなれるわ」


「そうだな! ペイシェンスのお陰で、カエサル様、アーサー様、ベンジャミン様、フィリップス様達とも親しくなれた。ここからは、私も頑張って人脈を広げよう」


 これって、ノースコート伯爵がサミュエルに日常的に言い聞かせているのだ。うちの弟達、父親はこの方面は役に立たないから、私が頑張らなきゃ!


「ペイシェンス、ナシウスなら心配はない。私と一緒に行動するからな。それに、ヘンリーはパーシバル様、サリエス卿、ユージーヌ卿、それに新たに雇った騎士達がいる。王立学園でも騎士クラブで人脈は広がるだろう」


 そうなんだよね! ヘンリーは人に嫌われるタイプじゃないから、大丈夫だと思う。


「私は、今回の騎士登用を横から見ていただけだが、考える事が多かった。ノースコート伯爵領には、代々仕えてくれる騎士がいる有難味も理解できた。それに、騎士クラブや騎士コースの縦の繋がりの強さもな。中等科から騎士クラブに入るのは、楽をすると考えられるのは嫌だから、秋学期から入部する」


「えっ、乗馬クラブは?」

 驚く私とヘンリーに、サミュエルが笑う。


「騎士クラブと乗馬クラブは、被るから辞める。だが、音楽クラブは辞めないぞ! あれも、人脈作りに役に立っていると母上は認めてくださっているからな!」


 ふふふ、音楽を愛しているのは、わかっているよ。大人ぶって、人脈つくりなんて言わなくてもね。


「私は、王立学園に入学したら、騎士クラブに入りたいです。錬金術クラブにも興味はあるのですが、できるかどうか……」


 ヘンリーは、私とナシウスが錬金術クラブだから、興味があるのだろう。


「錬金術を教えてあげます。でも、それが本当に楽しいか、ヘンリーが決めなくてはいけませんよ」

 

 まだ理解できていないのか「はい?」と疑問形だよ。


「ああ、それとパーシバル様に内緒にしておかなきゃいけないのに盾について話してしまいました。御免なさい!」


 ふぅ、あれは私の失敗だ。秘密を背負わせてはいけなかったのだ。


「ヘンリー、それは気にしなくても良いわ。パーシー様の誕生日は九月なのです。でも、夏休み中に誕生日パーティを開くつもりなの。それに、盾の使い方をマスターして頂くのに、サリエス卿やユージーヌ卿がいらした方が良いから、早めにお渡しするつもりでしたから」


 こちらの世界では、誕生日に拘る人はあまりいない。ゲイツ様だけだね。


「ペイシェンス、あれは他の人に見せるべき盾では無いと思う。私は口にしないが、魔法クラブ、騎士クラブのメンバーにも口止めをもっとしておくべきだ」


 サミュエルに叱られた。これ、パーシバルにも叱られそう。ああ、ゲイツ様にも怒鳴られそうな予感!


「ペイシェンスの錬金術は、ローレンス王国一だ。そこは、誇ったら良いと思う。ただ、機密にするべき事を、簡単に広めるのを注意しなくてはいけない」

 

 ああ、竜の飛来の件もだね!


「竜の件は、いずれはあの者達にも知らされるだろう。それが合宿の目的なのだからな」


 サミュエル、凄くしっかりしてきたね。来年には中等科になるからかな? まぁ、テストで合格しないと無理なんだけどさ。


 馬車であれこれ話しているうちにグレンジャー館に着いた。因みに、メアリーは一緒だったけど、弟とサミュエルが同じ馬車だから、見張る必要がないので、少しうとうとしていた。

 騎士が来るからと、朝からちょっとテンションが高かったからね。


 馬車がグレンジャー館に着いた。止まった衝撃でメアリーは目を開けて、うとうとしていたのを謝る。


「良いのよ! 私も馬車に乗ると眠たくなるから」


 三時のお茶をしてから、馬車で一時間。丁度、眠たくなる時間だよね。


「あっ、お兄様の(シャドー)がいます。遺跡から帰っていらしたのだ!」


 ヘンリーが馬車から飛び降りる。馬車の階段を馬丁のグレアムが降ろす前だよ。


「ヘンリー、ナシウスはシャワーを浴びているかもしれませんよ」

 あの暑い遺跡で、一日過ごしたのだ。汗だくだと思う。生活魔法が使えるとはいえ、シャワーを浴びたいだろう。


「ペイシェンス、お疲れ様」

 パーシバルは、馬の王(メアラス)に乗っていたから、先着している。でも、素早く馬車から降りるのをエスコートしてくれるんだ。嬉しいな!


「ナシウス達は、シャワータイムよね?」

 コソッと聞いたら、笑顔で頷く。

「私が着いたので、すぐにペイシェンスが来るのを知っています。さっぱりしたら、応接室に降りてきますよ」


「本当なら、夕食までゆっくりと身体を休めたいだろうに、悪かったかしら?」

 

 パーシバルが私の弟愛を笑う。

「ナシウス達なら平気ですよ。遺跡から帰ったら、シャワーを浴びて、遺跡調査の紙に書き込むのが日課みたいですから」


 それは、応接室に入ったら分かったよ。他の騎士達やアダムとメーガンも笑っている。


 応接室の壁一面に大きな遺跡の紙が貼ってあったのだ。

「ナシウス、頑張ったのね!」

 横で、パーシバルが耐えきれずにプッと噴き出した。


「こんな素敵なグレンジャー館に相応しく無い調査表を貼られても、ペイシェンスは怒らないのですね」


 まぁ、応接室の壁に貼らなくても良いとは思うけど、ここが話し合うのに良い場所なんだろう。


「そうですわね! 会議室を作っても良いのかも? 応接室に夜遅くまでいると、使用人達も休めません。会議室に、沸くポットとクッキーなどを置いて、各自、勝手にして頂いた方が良いのかも」


 私とパーシバルの会話を、アダムとメーガンが呆気に取られて聞いている。


「こんなに素敵なグレンジャー館に、無粋な遺跡の研究発表の紙を貼っても宜しいのですか?」


「ええ、私の愛する弟がする事ですもの。でも、他の教授達が真似をしたら嫌です。だから、会議室を作ろうと考えています。もう少ししたら、ラドリー様がいらっしゃるから、相談してみますわ」


 約二人、頭を抱えている。

「ラドリー様とは、王宮建築士の方だよな」

「こんなに素敵なグレンジャー館なのに、学生の合宿所? 良いのかしら?」


 ははは、二人には早く慣れて欲しい。



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― 新着の感想 ―
[良い点] サミュエルの成長が著しい氣がしました (^o^) [一言] ペイシェンスの錬金術はローレンツ王国一! \(^o^)/
[一言] ペイシェンスの気質はもうクリエイティブな人間としてはある程度は仕方ないと割り切って、気配りとマネジメント、及び機密管理の出来る人間で早急に周りを固めるべきかな。 正に今回、周囲がそう考えての…
[一言] 会議室とか、中世にあるのかな? 馬車や荷馬車でいけない所があると考えると、乗馬技術は必須かな
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